命有っての物種
キュンッという銃声が灰が掛かったゴミ山の静寂にこだまして響き、役目も故すらも何だったか知れぬガラクタが悲鳴の様に破砕音をけたたましく高らかに上げて沈黙を文字通り撃ち破る
その元凶はチロチロと二股に別れた三本の青い舌を絡めながら出し入れしつつ、頭のアリに似た触角の先を黄色く光らせて六本三対の足で追いかけて来る
今まだ命が有るのは、ヤツ自身の装備が本来はその場を動かずに掃射する為の機銃だからだ
普通ならばそのまま止まって撃てば簡単に終わるのだが、やはり生きてる以上は獲物を欲して狩りを行っているようだ
ある程度しか武器を扱えない上に獣の本能に抗えないようでは兵器としては失敗作以外の何物でもないな、…まぁだから助かっているんだがな
泣けるぜ…
さてどうする、あのアスファルトみてぇなツヤの無い黒に雑多な色の粒が混雑してる鱗にこの拳銃は効果無さそうだし目や口を狙える技能も作戦も準備も無い
考えろ…考えろ考えろ考えろ、考えないと今日中にトカゲの餌になるぞ
少しでも生存率を上げるべく大型機械の廃品が多く棄てられているゴミ山へ逃げ込み遮蔽物にしながら必死に足を動かし射線をズラしている内に耳が音を拾った
それは微かにだが確実にトカゲのものではない銃声がここから遠くの空け地の方向から聞こえていた、恐らく【傭兵】か賞金稼ぎ共がソコにいるのだろう
仕事か探し物か、或いは新装備のお披露目と試し撃ちだか知らないが…今【傭兵】から譲って貰った財布が二つ有る
ここは一つソコへ向かい頼み込んで後ろのトカゲを討伐して貰うか、ダメなら…まぁ運が悪かったとして連中に擦り付けしてさよならとしよう
そうと決まれば話は早い…直ぐに方向を変えて現場へ向かう、鬼が出るか蛇が出るかというか今トカゲに出くわして追われてるがな
※【旧式】と【旧世代】の違い
●旧式とは"前世代型"とも呼ばれ大企業連合の各企業陣営側がかつて開発していた物の事である、現在第1~6世代が未だ生産されている物も含め旧式というカテゴリーに入っている
余談だが、最新式は第8世代型である
一方で旧世代…傭兵等いわく"当たり外れの激しい遺物"の事が当てられる、ただ単に第一世代型にすら遥かに劣る正にゴミもあれば常識外の尋常ならざる技術力で作られ朽ちること無く現存する物も存在する
歴史研究者によれば、かつてこの惑星が植民の為に開拓を行った際に自分達の先祖が必要に応じてもたらした痕跡が今で言う旧世代の遺物なのではないかとの考察がある