何時も何処でも隣にいる
住処にしている残骸の穴から頭を覗かせ周辺に目を見張る、ゾンビ擬きも無法者もいない事を確認して残骸の腕のようなモノをゆっくり下りる
…だがしかしそれでも物騒な事から避けられるワケじゃない、懐にセーフティーを外した拳銃をしまい左右のポケットに弾倉を幾つか仕込む
後は背負ったモノ…金属箱とベルトで作った手製の篭に取引の為の弾丸を全て入れて出発する、…何か空がゴロゴロ鳴ってないか?
思い立ったが吉日とは云えど、なら天気のご機嫌良い日くらいあってもバチは当たらないんじゃねぇかと思うのだった…
「…畜生が、判ってはいたんだがよ。」
前日になるかならないか判らないが【傭兵】共が〖彷屍[ゲーラ]〗の駆除に出ていたんだ、オレの集めたガラクタが台車ごと無くなってやがる…絶対持って行っただろアイツら
本当に大赤字だ…絡まれるわタカられるわでツイてないぞ、今まで生きてて酷ぇ事は色々あったが今回のは五指に入るギリギリのヤツだ__
…思わず肩と頭をガックリ落とした瞬間に後頭部の髪がザリッと削り取られ、首筋に生暖かい感覚と脳天から背中の半ばまでが急激に凍り付く感覚を感じた
同時に右側のゴミ山から金属をブチ抜く二発の着弾音が大音量で響く、考える迄もなく…オレは今狩られている
直ぐに走り小さなゴミ山の大きなガラクタに隠れて更に逃げる、オレは今までの人生で喧嘩なんかで勝った事は一度も無いしそもそも懐に入れた拳銃すらマトモに使った試しもない
当たり前だ、こんな生活してるヤツが銃の扱いなんてものを俄にしか知ってる程度でしかないのだから
必死に逃げつつ後ろを向けば、背中の一部を機械化させ特異な形状をした機銃を生やすトカゲと虫の混種
ふざけんな、あんなの此処いらじゃ見かけねぇぞ!?
※【混種】
●合成獣型とも称される【造魔】の一種、少なくとも二種…或いはそれ以上の生物体の外的特徴を確認できるモノを指す
「旧世代」に存在した"超高度技術"によって創られた何らかの生産プラントの暴走によるバグで、この様な【造魔】が今も製造されていると傭兵達や賞金稼ぎ達の間で噂となっている
今回クレフトが遭遇し襲撃された個体は【スパニッシュ・ラーカー】、通称『ロードガンナー』と呼ばれ"ファッキン糞虫トカゲ"の愛称で親しまれている