廉価なる等価交換
深い眠りから覚め…今日も命があった事に安堵しつつ起きたオレは、金属棚の横にある大きな発電機の起動用の紐を何度か引っ張り稼働させる
仕事の帰りに見付けて回収してくっ付けた燃料タンクのメモリを見て残りの液体燃料はまだ持つが、先に本体の修繕か部品を探して交換するのが早いかと思いつつコードを繋げた
コードの先にある棚の上には稼業の生命線でありオレの仕事の伴侶ともなっている、"第6世代型旧式3Dプリンター"の液晶画面が起動し作業を始める
先ず材料となる鉛や鉄に銅等の金属が溶け合って混ざった塊や其処ら辺から集めたガラクタやら、便所に使っている大型のバケツをプリンターの上部にある幾何学的な文様のある台に乗せる
開始と画面に触れればそれらは一瞬の青白い発光と同時に煙の様になって分子へと分解されプリンター内に回収される、次に複製する物を拳銃から弾倉を取り出し本体と弾倉に弾丸を先程の台に置きデータを読み込ませる
「HKY/Saヘキーナ…リコー型15㎜口径弾…、ギリギリマシって程度のじゃねぇかよ。
確かに〖彷屍[ゲーラ]〗や人は殺せるが、怪物型の【造魔】とかだったら〖劣忌[フェヤー]〗位しか無理だぞ。」
解析結果で多目的対人用の拳銃だと分かり気を落とすが、使えなくはない為弾倉と弾丸の複製を開始する
3Dプリンターの左側から上に伸びて前へ直角に曲がったパーツが迫り出し右側へと向く、先端の部品が展開し緑色の光線の幾重にも降り注がせる
暫くして台の上には徐々に下から実体化する様に、几帳面に並べ立てた弾入りの弾倉が20と左側に弾丸が50発という商品が出来上がった
言ってしまえば密造品で完全にアウトなのだが命は金で養うモノ、命を取る武器でソレとは何とも皮肉が効いている
※【HKY/Saヘキーナ】
●GANDOカンパニーの手掛ける警邏用に開発された拳銃の一つ、使用されるリコー型15㎜口径弾はサブマシンガン等にも使われており主に暴動鎮圧や〖彷屍[ゲーラ]〗の駆逐に採用・大量製産される
この世代においては光学兵器が主流であり実弾兵器の開発製産は消極的になり廃れる筈だったが、一部の有人特殊機動兵器(〇ーマード・コ〇的な)の台頭に伴い有用化が見込まれ再起続投された希有な歴史を持つ
※〖劣忌[フェヤー]〗
●10万分の一の確率で誕生する"母体個体"を頂点とする【造魔】の一種、母体が生体インキュベーターを生み出す"生体プラント"を産出する事で繁殖を行う
柿の色をしたゴブリンをベースにカエルと半魚人を掛け合わせた外見で顔は絡まった木の根の隙間から蛇の紫の眼球が大小複数くっ付き口は犬に近い、背中は赤黒い毛針が疎らに密集しサメの背びれに似た甲板がある
筋肉は青紫だが血液は翠緑であり、性質は残酷非情でサディストなサイコキラーな事から発見次第確実に処理殲滅と決定されている