かつての"あの時"のような
上を見る…そこには曇った様な白灰色に近く赤褐色が薄く残る空を写す"大穴"は珍しい事に今までと違ってあんな色になった空を見るのは初めてだ、灰が降るのもこの大穴の中も相変わらずだが…まさかよりにもよって古巣である【巨大崩落空洞】に出戻りする日が来るとは思わなかった…
また"恩師"に助けられるとは幸運だったが……撃たれた際の出血でここまで逃げてくるなんて冷静に行動しなかったオレもとんだ馬鹿だな、次からはもう少し考えて行動するよう心掛けていこう…この拳銃の取扱いと当たるよう撃つ練習とセットでな
__【巨大崩落空洞】…通称"無限奈落"なんて言われている此処は別名"過ぎた墓穴"もしくは"捨て穴"とも呼ばれるどうしようもない場所だ、……オレが【ゴミ捨て場】で暮らす前に生きてきた忌まわしい所でもある
あの頃は本当に最悪の毎日だったとことを覚えている…何故ならかつて此処は【大企業連合】と【政府軍】の戦場だったからだ、昼夜関係なく爆発音や怒号に光が闇に飛び交いこの"グリッド"が落ちてくるまで戦り合っていやがったんだ
"グリッド"が穴の崩落に巻き込まれる原因を作りやがったバカ共は下らない威信をかけて建造した【規格外巨大兵器】を此処に投入しやり過ぎた、元々その下に巨大空洞がありここら一帯の地盤は脆いのを無視した結果…自業自得の天罰に遭ったワケだ
今となっては静かな…いや最早死んだも同然な場所となっている、オレはあの時にこの身体に残る怪我を負い"グリッド"と共に崩落に巻き込まれた後に"恩師"に助けられて今も生きている…
__そうだ、あの時もこんな空だったな…
※【巨大崩落空洞】
●都市シェプルトの外れにあるゴミの廃棄処理場から更に40㎞南下した場所に存在する巨大な大空洞へ通じる大穴が広がる一帯を呼ぶ名称、グリッドの建材や残存する物資を目当てに盗掘者や【傭兵】が寄り付いて来る危険地帯
かつて大企業連合と政府軍の第一次大戦時代後期にて投入された【規格外巨大兵器】群による過剰な破壊力が地盤を揺るがし大陸規模の崩落事故へと発展してしまった、この時に建造されていた複数のグリッドが建造途中であった物まで巻き込まれ…その後を追う様に【規格外巨大兵器】も奈落へと落ちた
この時代では未だ幼かったクレフトは大穴から地上へやって来てその周辺に遺棄された搭乗兵器の残骸に入り込んで死体からまだ無事な保存食を漁って暮らしてた"死骸漁り(スカベンジャー)"だったが、その仕事中に大企業連合の爆撃機から爆撃を受け同時に政府軍の対地上兵器用の砲台の砲撃を食らった後にグリッドと共に大穴へとまるで地獄に行く様に落ちていったという…
※【規格外巨大兵器】
●大企業連合や政府軍が様々な威信をかけて建造した巨大兵器…通称"オーバード・フォート (O・F)"と呼ばれるもので、数百名の凡夫…或いは簡略化したソフトウェアによって制御され"強大な個"による戦力バランスの激しい落差を解決するべくして発案された「両軍の利害得失の一致」によって可決された暗黙の了解である
今現在では開発建造は消極的になっているものの、未だに投入されず現存するものを改修し戦線の現状打破の為の投入を予定されている