過去からの副産物(サプライズ)
宛ても無くフラフラと彷徨う様に歩く人影、項垂れた上体の呼吸は浅く短く息が切れたようで生気を感じない
気のせいでもなければ明らかに真っ当なモノでもない、悪天候で強風が灰を巻き上げ辺り一帯を濃霧の様に包み全体的に視界が悪いお蔭でこのゴミ山の裏に逃げ込み無事で済んでいる
クソが…今日に限って随分静かだなぁとか思えば、クソッタレな感染者共が此処に彷徨いていやがったのかよ!
かつて大企業連合と政府に、互いの戦禍を止めるよう活動していた派閥が現れた
如何に自分達が崇高な平和主義の活動家かをご高説ほざきながら、無関係な人々にその答えと素晴らしさを都市丸ごと巻き込んで見せ付けたのだった
これで分かっただろうが、アイツ等はそのクソ共が宣った正しい人類の在り方というワケだ
バラ撒かれた《ソレ》はあらゆる生命や環境をおぞましい混沌に作り直され、今やこの【造魔】というジョークネームもシャレにならなくなってしまった
さて、一時的な現実逃避による心と頭の整理と状況の再確認を済ませて足音だけでも2~30体はいそうな〖彷屍[ゲーラ]〗共をどう凌ぐかを考えるか
連中は五感が以前より若干向上し特に動体視力は抜きん出て高い、嗅覚で獲物を探すことだって可能だ
動き自体はノロマもいいとこだが、脳のリミッターが外れた身体で襲われればひとたまりもない
力無く唸り声を上げユラリユラリとゆっくり進む奴等は突然立ち止まり周囲を見回して鼻息を荒くする、最悪だ…オレの臭いに気付きやがった!
逃げる際に捨て置いた台車を嗅ぎ回りその周囲を巡回する様に動き出す〖彷屍[ゲーラ]〗共、……ああなってしまえば諦めるしかない
畜生…今日は厄日だ、台車を失い大赤字かよ
※〖彷屍[ゲーラ]〗
●とある自称平和主義を騙る活動家達(現在"代表"も含め全員が指名手配)が、都市の一つを壊滅させる事件の発生にて確認された【造魔】の一種
ベースは第一次感染(浴びる・吸引等)や第二次感染(襲われる・体液接触等)により、汚染を受け変異したヒュアロイド系人種(地球人種に近いものを指す)である
地球の映画やゲームでよくあるウイルス感染系のゾンビと変わらないが、その通りに特異個体も現れる為発見次第火急的速やかに通報し排除要請と指示の下で入念な"除染"を受ける義務が発生する