闇市
此処での寝泊まりで何が素晴らしいか、身体を優しく包み込む様な柔らかい感触を全身で感じ取れるこのマットレスとシーツのお陰だろう
この店に来る事自体が片手で数える程しかないが、このクソッタレな世に生まれて一番幸せな気分を味わえるのは後にも先にもこの時だけだ
色も形も不揃いで…傷に錆に歪みや凹みが目立つやや長めの金属製の棒や大振りの欠片を溶接して作った窓の柵から、赤い朝日の日差しが入りオレを照らして眠気を取る
…いつも通り疎らに降る灰、赤褐色の曇り空もまた同じく変わりはしない
壁に刺さった鉄棒に掛けた寝る前に洗った服が運良く丁度乾いていた事に今日は珍しく吉日なのかと、気分良く思い出かけるのだった
__壁外部居住区の末端から少し半ばの場所に…闇市は存在する、此処では色んな物が手に入る
金さえ積めば少なくとも今日だけでなく明日も命を繁げれる食糧や水が買える、色々と使えるテープや酒に…オレが使ってる薬とかの他にもある
……中には金か薬一つで、相手をしてくれる無節操な手合いも居たりするがな
まぁ…何はともあれ此処に来た理由はアイツに作って貰う朝食の為の食材を買うんだ、他の所で時間を潰すのは勿体ないしアイツからも必要な部品があったら買ってくれと頼まれてるしな
用が終わり次第、軽く冷やかしでもして帰るとしようか
「…ん? オイオイ、クソガキお前まだ生きてたのかよ。
今面白れぇモンがたまたま手に入ってなぁ、もし直してくれて気に入ったんなら特別価格で売ってやんぜぇ?」
「マジか、後で見に行くわ。」
……何やってんだって? これも商売だ、文句言うなし