今を生きる者達
Side 傭兵
灰色のボロ布を重ね合わせ継ぎ接ぎした襤褸を纏う、薄汚れた気味の悪い小僧
ソイツが前金だと身なりに不相応な金額を財布からひっくり返した、今正に諸事情で少しばかし金が入り用だった事もあり…つい承諾と登録窓口にも通さずに受けちまった
同僚の冷めた目が冬場の落ちてきた氷柱の如く突き刺さる、マジでスマン…後で埋め合わせしとくから
で、受けた仕事ってのは此処らじゃそうそう見ない【スパニッシュ・ラーカー】1体の始末だそうだ
普通…稼ぎ場は有力者の連中に独占されていて、こっちの方にはロクなモノが残らない
こういった身体の一部を機械化して武装した【造魔】等は、上手くしとめられずとも体内の遺伝子データには相応の価値は付くしやりようによって完品に近ければ更に跳ね騰がる
武装が無事なら技術者に持ち込んで自分の武器にだってできるんだ、【造魔】の討伐は損得勘定が見合わない事なんてよくあるものだが…誰もが狙うのもこのご時世じゃ当然さ
__【スパニッシュ・ラーカー】…対【造魔】各交戦記録情報ではかなりの本体の戦闘力と武装の高い瞬間火力による危険性から、1体に60000Vcの懸賞金が掛けられている大物だ
先ず尻尾抜きでも4mは有るデカい図体を覆う硬質な鱗は粗末な拳銃器なんかでは傷も付けられずに弾かれる、四本ある後ろ足も見た目通りに屈強でバイクでも無けりゃ簡単に追い付かれる
目も厄介だ、あの縦に並んだゴーグル状の眼は一見複眼の様に見えるが実際は厚い角膜に被われている為ロクに物が見えず周囲の明暗しか判らないが、高熱なら白で低温なら黒に見えるつくりをしているそうだ
何より問題の武装だが、ラーカー4㎝口径β―type型は軽装装甲車の装甲をブチ抜くふざけた代物だ
対して俺達の装備は【オオウツギ・アーマメンツ】の製造するアサルトライフル【ハルサメ/D17号】、弾は【オーニン33】という文字通り33㎜口径HEAT弾だ…ヤツの鱗ごときじゃ防げない
このプロテクターも同社が販売する【アリサワ/O29番】であるが、アレには意味が無い
やっぱりヤバい案件だったが、折角の機会だ…頭捻じ切って玩具にしてやんぜ!