Ⅰ∶She
全15話で完結します。
久しぶりに再会した玲奈は雰囲気が変わっていた。
艶やかで綺麗だった黒く長い髪は明るいピンクブラウンになり、そのままでも十分かわいかった顔は、しっかり目のメイクが施されていた。
高校を卒業して、たった1年。
お互い大学生の立場であることは変わらないのに、玲奈は明らかに大人の女に変わっていた。
厚い雲間から、春を予感させる弱々しい日差しが射し込む3月――。
地元に残っている元同級生たちの近況などを聞きつつ、私と玲奈はランチやウインドウショッピングを楽しんだ。
私の胸の中で燻る、妙な違和感を抱きながら――。
夕方になり、玲奈が車で家まで送ってくれると言い出した。
まさか車で来ているとは思わなかったので驚いてしまった。
さっとキーを出し、慣れた動作で車に乗りこむ玲奈。
その姿を見つめながら、私は友人が知らない人になってしまったような寂しさを覚えた。
「玲奈……雰囲気変わったね。すごく……なんて言うか……大人っぽくなった」
懸命に言葉を探して、なんとか当たり障りのない感想を見つけ出した。
地元の大学に通っている玲奈と、都会の大学へ進学した自分。
おそらく高校時代の友人が私たちを見たら、どう考えても都会で洗練された女性は玲奈の方だと答えるだろう。
「えへへ。ありがとう」
そう言って照れて笑う玲奈の表情は、自分の知ってる高校の時の玲奈の笑顔だったので少しほっとした。
玲奈の運転する車に乗ってドライブする。
運転も慣れたものだった。
まだ仮免許の自分とは、スムーズさが違う。
「これ、玲奈の車? 買ったの?」
「ううん、お父さんの借りたの」
「そっか。なんか変な感じ。同級生の運転する車に乗るの。ドキドキする」
「えへへ。事故ったりしないから安心してよ。
由紀乃は? 教習所どこまでいった?」
「ん。来週には免許ゲットする予定」
「すぐにあっちに戻る?」
「そだね。家にいても暇だし……戻ってギターでも弾いてようかなって」
「由紀乃、大学でも軽音やってるんだ。
いいなあ、都会の大学って。かっこいい人いっぱいいそう。新しい彼氏とか、もうできた?」
高校時代につきあっていた彼と自然消滅したことは、すでに知っているらしい。
「うーん……サークルの方はモテたいオーラ全開のチャラいのばっかりだよ。あんまり私のタイプはいないかな。
玲奈は? っていうか絶対に彼氏いそう」
この流れは絶対にそっちへ話を持っていきたい玲奈の振りだろうと思っていた。
すぐにノロケが飛んでくると予想していたのに、不自然な間が開いた。
「……ねえ由紀乃……私さ……」
声のトーンで、深刻な話が出てくるという予感がした。
予感はしたけれど逃げ場はない。ここは車内という密室の中なのだから。
「不倫……してるんだよね」
ショック。
――と同時に、どこかで腑に落ちている自分がいた。
たった一年でこれだけ雰囲気が変わってしまった友人。
誰かに変えられてしまった友人。
その理由が不倫……。