9話 魔ネズミ退治ののち……?
果報は寝て待て。
まさにその言葉通り、ぐっすり眠って迎えた翌日。
私とリカルドさんが、昨夜仕掛けた罠を確認しにいけば……
まぁ、ひどい有様だった。
お手製毒だんごはその効力を存分に発揮しており、かごの中ではたくさんの魔ネズミが倒れている。
「うん、効果はしっかり出たみたいです!」
私はほっとして、リカルドさんのほうを見るが、彼はあさっての方向に目を背けている。
……あー、そうだった。
超がつくほど几帳面で、綺麗好きなのだった、彼は。
そもそもネズミが無理だろうに、その死骸ともなれば、なおさらかもしれない。
一方の私はといえば、もはや見慣れてしまっていた。
女官の仕事は、裏方仕事である。
外から見れば、華やかで栄華の象徴みたいに映る王城でも、この手の問題はまぁまぁな頻度で起きていたしね。
階級が高い人って、誰かが片付けてくれると思って、その辺に平気でゴミ捨てたりするし。
常に清潔が保たれていたわけじゃない。
「そ、それで、全部退治できたのかい?」
「いえ、全部というわけではないですよ。でも、魔ネズミはかしこいですから。一度、こうやって罠餌に引っかかるとその場所からはいなくなるんです。
だから、もうここから先に来ることはないかと」
「そうか、それはよかった。……本当によかったよ」
リカルドさんは心底安堵したように、深い溜息をついていた。
その後、彼に魔ネズミの死骸の入った箱をそれごと燃やしてもらう。
超入念に燃やしていたから、そこに残ったのは骨とその鋭い前歯だけだ。
私はそそくさと、それを回収する。
進化した【開墾】スキルが勝手に発動し、使い道をふわっと頭に示してくれたのだ。
「それがなにかに使えるのかい?」
「はい。結構鋭いので、なにかに穴をあけるときは結構便利ですよ。あといくつか集めて、木の棒の先にくくりつければ、いい銛にもなりそうです」
「そう言われればたしかにそうかもしれない……。さっそくスキル効果かい?」
「はい。直接庭に関係のないことは、前は分かりませんでしたから」
そうして、後始末が無事に完了する。
私たちはそれを、トレントの元まで報告しに行ったのだけれど、
「寝てますね、まだ。それもぐっすり」
「昨日のレリーフハーブの水が効きすぎたのかもしれないね」
気持ちよさそうに風に葉を揺らしながら眠っているようだった。
回復するためにも、このまま寝かせてあげた方がよさそうだ。私たちはこそこそと去ろうとするのだが――、そこを呼び止められていた。
『本当に助かったよ。……ネズミを退治してくれたのだろう?』
はるか頭上から、その声は降ってくる。
「あれ、どうして知ってるの?」
『わたしの仲間が、そう教えてくれたのだ。昨日、二人が罠を仕掛けるところを見ていたらしい。それにより、はびこっていた魔ネズミの姿が急に消えた、と。
……ありがとう、娘よ。礼を言っても言い尽くせない』
「気にしないでいいって。私は自分の意思でやっただけだしね」
別に恩着せがましく、なにかを要求したりするつもりはない。
これで穏やかな森が帰ってくるなら、それで十分だ。
「これからは静かに暮らせることを祈ってるね。また会うことがあったら、お喋りしてくれる?」
私は別れの挨拶のつもりで、そう投げかける。
しかし、いざ去っていこうとすると、目の前にいくつも絡まり合った枝が降りてきて、私たちの行く道に大きな壁を作り出す。
『なにか恩を返す方法はないか、娘よ』
……どうやら、このトレントはなんとしても礼をしたいらしい。
夜も投稿します!
応援ありがとうございます。日間3位まで上がれました!
【恐れ入りますが、下記をお願いします】
・面白かった、楽しかった
・続きが気になる
などと少しでも思ってくださった方は、画面下部の☆☆☆☆☆を★★★★★にして応援して下さると嬉しいです。
ブックマークも歓迎です!(╹◡╹)
よろしくお願いします!