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74話 完成、風送り器!


ご無沙汰しております。

遅くなりましたが、本年もよろしくお願いいたします。


今後は定期的に更新していきます……!

(本当は1月からのつもりだったのですが、体調を崩しておりました)


恋バナをさせられるというよもやの出来事はありながらも、カーミラさんとマウロさんが協力して作った魔道具は、思っていたより早く、約二日後には完成を見ていた。


「どうよ、結構いい感じじゃない? 名付けて『風送り器』よ!」

「……俺も、これならば十分に役立つものになったかと」


二人の自信が示す通り、その出来は抜群と言える域だ。


「今回は使いやすいように、手のひらの上に載せられるくらいのサイズで作ってみたの。クルクル草の葉で怪我をしないように周りを木製の円形カバーで覆って、自立するように台座をつけてみた。もちろん、首から提げることもできるわ」


まずはデザイン面。


基本構造は、台形の台座とその上に横倒しにされた丸い円柱だ。

そして、その円柱の中には、くりぬかれた空洞の中にクルクル草が葉の表面をこちらへ向けて収まっている。


一見見慣れない形だが、クルクル草がこちらを向いていることで、効率よくこちらへ風が送られてくる仕様になっていた。


そして、魔石を使った動力はといえば……


「飛んでいかないように、葉と茎の間をホールドして、根は清水石を利用して作った花止めに挟んでいます。クルクル草はそこから水を吸い上げます。得た水量で、回転速度が変わりますから、後ろに設けたボタンでそれを調節して、風の強さを変更できます」


うん、なんて高等技術!


やっぱり、希少スキル【構築】を持っているだけあって、さすがだ。

人間関係のごたごたさえなければ、たぶん今も建築界でその才能を活かしていたに違いない。


「これなら、十分に暑さ対策になりそうだね」

「ですね、やっぱり二人に任せてよかったです」


私とリカルドさんが感心していると、


「でも、これ、クルクル草が成長しちゃったら、スペース足りないのよね……」

「そこは課題ですね」


カーミラさん、マウロさんが軽く唸る。

が、それならば、私の専門分野だ。


「ちょっと借りてもいいですか?」


送風器を渡してもらうと、私はその後ろに突いていた蓋を取る。

すると現れたのは、清水石で作られた花止めと根だ。


私は一度花止めを外して、根の数本を抜き去る。


「今ので、なにか変わるのかい?」

「はい。クルクル草は、真ん中の根で水を吸って回転するんです。反対に、脇根は成長に使う栄養を吸うみたいなので、その本数を間引きました。これで、少しは成長を遅らせられますよ」


むろん、知識の源はスキル【開墾】だ。

こうした植物ごとの特徴まで知ることができるのは、やはり便利である。


私は元の状態へと戻してから、慎重に蓋を閉じる。

そうしてボタンを押してみれば、ちゃんと回転し始めたので、ほっと一息ついた。


「これで完成だね。なんだか、僕だけなにもできなかったな」


リカルドさんが前髪を風になびかせながら、少し寂しげにつぶやく。

それに対して、カーミラさんが首を横に振った。


「いいえ、十分助けになりました」

「そうかい、話し相手くらいにしかならなかっただろ?」

「それがよかったんです。マーガレットとの興味深い話が聞けたし♪」


にやにやとした視線が私へと注がれる。


これはしばらく、こねくり回されそうだ。

ぼやかした部分があったとはいえ、リカルドさんが本土へ帰らないことを決めたところまでは、根掘り葉掘り聞かれていた。


それらすべてを聞いた結果、カーミラさんは私に「なんで付き合ってないの」と囁いてきたのだから恐ろしい。


身分的に考えても、ありえないことだと否定したのだけれど、たぶん彼女のことだ。

聞き入れてくれてはいないのだろう。


「と、とりあえず、これをノルドさんのところに持って行きましょう!」


私は話を逸らすため、勢いよく席を立ちあがる。


「そうね、そのために作ったんだし」


カーミラさんはにやにやとしつつも、一応は引き下がってくれた。


四人連れ立って、廊下へと出る。

ノルドさんの籠る部屋の前まで歩いている途中で、カーミラさんが口を開いた。


「……ってか。これ、四人で行く必要なくない?」


それではたと私は足を止める。

たしかに、なんだか仰々しくなってしまうかもしれない。


「うん、それはそうかもしれないね。じゃあ僕は遠慮しようかな。とくになにもしてないし」

「それじゃあ私も、そうします」


リカルドさんが言い出したのに、私は乗る。

作った二人で行ったほうが、説明もしやすい。そう思ったのだけれど、


「なら、あたしもパス。あとよろしく~」


カーミラさんはそう言って、踵を返す。

そのまま、さっさと引き返していくではないか。


送風器を持っていたマウロさんは逆に、「では俺が」とノルドさんの部屋へと向かっていく。

私とリカルドさんが、その間に取り残される形になった。


「えっと、どうしましょう」

「……このままじゃまた仲違いになりかねないな。一人一人、追うしかないかな。君はカーミラくんの方を頼むよ」


私はそれに頷き、小走りでカーミラさんを追いかける。

名前を呼びかければ彼女はこちらを向かないまま、足を止めた。


「なによ、マーガレット」

「なにって、どうして急に行くのをやめたのかなと思って」

「……別に。大したことじゃないわよ」

「と言うと?」

「……そのままの意味よ。あたしが行くより、マウロが行ったほうがいいじゃん、普通に。そもそも、あいつが原因な部分もあるわけだし。これからの引継ぎを考えても、そのほうがうまく行くでしょ」


彼女はそう言うと、再びかつかつと歩き出す。

今度は、ポニーテールが揺れるくらいの早足であった。私はまたしても、ぽつんと廊下に取り残される。


が、これで分かった。

もしかしなくても彼女は、マウロさんのためにあんなことを言ったのだ。

そのほうが、ノルドさんとの関係修復もうまくいくだろう、と。


それがこんな形になるあたり、やっぱり素直ではない。

でも、その心根にはちゃんと思いやりの心も持っている。


私はそこで、カーミラさんを追うのをやめる。

元の場所まで引き返すと、そこにはリカルドさんがいた。


「どうだった?」


と聞かれたので、私はそのままを伝える。

それを受けてリカルドさんは、ふっと軽く笑った。


「そうか……。うん、マウロ君もそう受け取ったみたいだよ。今度、「なにかで返します」ってさ」


マウロさん側も、分かってあのような行動に出ていたらしい。

要するに、言葉にせずとも通じ合っていたわけだ。


「そうなんですか。なんだ、意外と二人って……」

「喧嘩するほど仲がいい。って、それはちょっと違うけど。まぁ少なくとも、僕らが心配するような話でもないのかもしれないね」


そもそも仲よくさせようとしていたことが、とんだお節介だったのかもしれない。



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焼き捨てられた元王妃は、隣国王子に拾われて、幸せ薬師ライフを送る〜母国が崩壊? どうぞご勝手に。〜

― 新着の感想 ―
[良い点] なんだかんだで仲良しな二人! まさしく扇風機が完成! [一言] 無理せずに更新頑張ってください。
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