6話 分かった、信じよう。
植物魔の声が聞えるなんて、はじめての体験だった。
これまではうめき声にしか聞こえていなかったのが、突然に言葉となって理解できている。
その状況に思わず、私は先を行こうとするリカルドさんの袖を引いていた。
「どうかしたか、マーガレットくん。もし怖いようなら、僕の部下といればいい。僕がどうにか退治してくるよ」
「……いえ、その。そうじゃなくて……」
魔物の声が聞こえるって、実はやばい? 危険視されたりしない?
はたとそう思うのだが、正直に言うほか彼を止めることはできない。そもそも隠し事は得意じゃないのだ。
「えっと、私、植物魔の声が聞えるようになったみたいなんです」
「え? こんなときになんの冗談だい?」
「冗談じゃなくて、本当に。あのトレント、かなり苦しんでるみたいです。なにか暴れ出した原因があるのかもしれません。なんとかしますから、私に行かせてください……!」
頭を下げて、そう頼み込む。
リカルドさんは、眉を落としてかなり戸惑ったような表情をしていた。
そこへ、彼の部下が口を挟む。
「マーガレットさん……。すいませんが、正直信じられません。危険ですし、やめておいた方がいいんじゃ」
もっともな意見だ。
冷静に考えれば、断られてもしょうがない。
私が偉い学者なら別だったかもしれないが、実際はただ草むしりが得意なだけの元女官であるから、信憑性に欠ける。
信じてもらえなくて当然だ。
こうしているうちにも、トレントは屋敷の方へと迫ってきているのだ。
――けれど。
「分かった、信じよう」
リカルドさんは私の目をまっすぐ見つめ返して、凛とした声で、こう返事をしてくれた。
部下の方々は「なんで……」と驚きを隠せない様子だった。一方の私も、自分から頼み事をしておいて、面食らう。
「ど、どうして……」
「君がこの島に来てから、僕らはもうずいぶんと君に救われた。マーガレットくんが来てやっと、事が前に進みだしたんだ。
出会ってからは短い期間だけど……、そんな恩人の言葉を信じないわけにはいかない。それに、同じ屋敷に住む身だ。君が嘘をつかないことはもう分かっているさ」
心に響く言葉であった。
そこまで評価してくれているとは思わなかったためだ。
まだなんにも解決していないのに、うっかり感極まりそうになる。
そんな私の手を、彼は微笑みとともにすくった。
「さぁ行こうか、マーガレットくん。もし失敗するようならトレントは戦って燃やすことになるけど、それは許してくれるかな?」
「……そもそも失敗しませんよ!」
「頼もしいな。僕も下手な荒事は避けたい」
日間ランキング5位入れました〜(T . T)
人生初、ハイファン表紙…………! ありがとうございます!!
展開の都合で短くなったので、夜も投稿しますね。
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