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51話 スファレ輝石の採取!


エルダーティーを飲み終える頃には、マウロさんの体調は万全に近い状態まで戻り、濡れてしまった服も焚き木の効果ですっかり乾いていた。


そうなればここは、長居するような場所じゃない。たまたま遭遇していなかったが、魔物が出ることもあるかもしれないのだ。

それに、あんまり遅いとカーミラさんに心配をかけることにもなる。


私とリカルドさんはそそくさと後片付けをするのだけれど、マウロさんの動きだけが緩慢だ。


「もしかして、なにか言いたいことがあります?」


すかさず、こう尋ねる。

今までなら、その微妙な機微には気づけなかったが、さっき話をしたばかりだ。


彼の様子に意識を払っていたから、声をかけることができた。


「なんでもいいんですよ、別に。なにを言っても怒りませんから。ここで寝泊まりしていこう、って言ったらさすがに断りますけどねー」


出来る限り、砕けた調子で尋ねる。

それが功を奏したのかはまったく定かじゃないけれど、


「スファレ輝石が、まだ足りないのです」


彼は返事をしてくれた。

小さな声だったとはいえ、意見を聞けただけ大きな進歩だと言えよう。


「俺が採取できた分は、さきほどお見せしたほんの少量でございます。この急流をわたって、反対の岩地で採取作業をしていたのですが、その途中で足を滑らせて川に落ちてしまいました。まだ、これではまったく足りません」

「なるほど……。じゃあもう少しだけ採取してから戻りましょうか?」


私がリカルドさんの方を見ながらそういえば、彼は二つ返事で応じる。


「うん、それがいいね。またここまで戻ってくるのもけっこうに大変そうだからね。……あの崖を降りてこないといけないし。それで、採取できる場所はどこなんだい?」


リカルドさんの問いに、マウロさんが指さすのはこことは対岸。


ごつごつと拳以上のサイズの大きな石や、さらに大きな岩が転がる地点だ。


「あの大ぶりな石や岩の中に一部含まれております。光に当てると、赤茶色に透けるものがそれでございます」


たしかに採取が困難そうな場所であった。

足場はごつごつとして起伏が激しく不安定だし、もし川に少しでも足がかかろうものなら、早い流れに身体ごと持っていかれてしまいそうだ。


「そもそも渡るときに失敗しそうですね、これ。飛び石はありますけど、踏み外せば滝に一直線ですし」


……なんて、不安に思ったのはほんの束の間だった。


『マーガレットさん、それなら心配ないよ』

『あぁ、わたしたちに任せておくといい』


ミニちゃんたちは器用に互いの枝葉を編みこみはじめると、その距離をどんどんと伸ばして、対岸まで到達させる。


そうして出来上がったのは、即席の橋だ。

ご丁寧なことに、欄干までついているから、落ちる心配はまったくなくなっていた。


「本当に優秀すぎるよ、二匹とも……!」


私は感嘆して、手放しでトレント2匹をほめちぎる。


「……こんなことまでさせられるのですか」

「させているんじゃないよ。トレントの方からマーガレットくんに協力をしているんだ。なんにしても、驚くのはよく分かるよ、マウロ君。彼女もトレントも規格外だからね」


後ろでマウロさんとリカルドさんがこんな会話を交わしているのが聞こえたのは、少し恥ずかしかった。

だから、私はそそくさとそのトレント橋を渡り、対岸へと先に渡った。


続いて、二人も渡り終えると、トレント達は落下しないよう今度は柵代わりになってくれる。



そうして安全を確保したら、いよいよ採取だ。

マウロさんにハンマーとたがねを借りて、こんこんと石を叩いていく。


たがねとは、先の尖った鉄製の棒だ。その頭を叩くことで、ピンポイントで力を加えることができるらしい。


「できるだけ顔を離して、たがねを石にあてがったら、ハンマーで頭を打つイメージでございます」


まずはマウロさんの説明を受けながら、石の一つを叩いていく。

これが意外と、というか、結構に楽しい。


そもそも石自体にはよく触れてきたから馴染みはある。だが、自分で割ったことはなかったから、新しい楽しさだ。


私はスキルで石に目星をつけて、ひたすらに割るのを繰り返していく。

こうした複数の材料から成る石は『石英岩、スファレ輝石、長石』などと、一度に表示されていた。


「お、結構含まれてそうですよ、この石!」

「マーガレットくん。よくそんなに見つけられるね。それもスキルかい?」

「そうですよ。石や岩は、庭にも使いますからね。元からなんとなく分かってましたけど」

「相変わらず、スキルも知識もとんでもないな……。それなら、君が石を見繕ってくれないかな。そうすれば、効率も上がるだろう?」


たしかに、リカルドさんの言う通りだ。

つい熱中してしまって、全体の効率を考えることが頭から抜け落ちていた。

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