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5話 ひたすら草むしってたら、植物魔の声が聞えるようになっちゃった!?



ひたすらに雑草をむしる日々が続いて、約一週間ほど。


屋敷の周囲を囲うように根を張りまくっていたスゲ草は、気づけばもう、ほとんどその姿を消していた。


いつのまに、こんなにむしったのだろう。

見わたしてみれば、綺麗な土が一面に広がっている。


「……数か月間、掘り返しては雑草で埋まっていたのが嘘みたいだよ」


とは、リカルドさん。


今日は、彼にも作業を手伝ってもらうことになっていた。

作業用の動きやすいシャツ姿で、プランターを抱えている。


その中で小さな白い花をつけているのは、レリーフ草。

薬草の一種であり、湯で煮だすことで、甘い香りとすっとした飲み口が特徴のハーブティーになる。


元は森の中で自生していたものだ。


ほかにも、育てやすく、またこの土や環境に適したものを厳選したものをいくつか採取してきた。


それにしても、だ。

リカルドさんは、どんな格好でも似あうらしい。


作業着という格好は私と同じなのに、オーラというか、全体的になにかが違う。



なんとなくだが、涼しげなのだ。

その少し長い髪が風にたなびく様も、にこにことした微笑も、清涼感に満ちている。


「それで、苗はこのあたりに植え付けていけばいいかな」


その爽やかな空気感に浸っていて、少し返事が遅れた。


「あ、はい! お願いします。それと、手伝ってくれてありがとうございます」

「いいんだよ。ちょうど手が空いていたし、君のおかげでここまで一気に土地が耕せたんだ。呼んでくれたら、なにでもするさ。それに、レリーフハーブは僕も好物だからね」


「あ、一緒です。寝る前に飲むと、ちょうどいいんですよねぇ。気持ちが落ち着くといいますか」

「そうだね。牛乳にもよく合うんだ。今度、淹れてみようか……って、牛乳がないんだったね」


和やかに会話を交わしながら、植え付けを行う。

等間隔に植えたところで私がもってきたのは、薄い木の板だ。荷物を運んで来た時の箱を解体して、作り出した。


「このレリーフハーブは、肥料などがなくとも育てやすい代わりに、かなりの繁殖力を持つんです。だからこうして、広がらないように対策をしておくことが大事なんですよ」

「なるほど。前のスゲ草みたく大繁殖されたら困るから、それがいいね」

「はい。毎日飲んでも、この広さじゃ使いきれませんし」


二人で協力して、板を土に埋め、区切りを設けていく。


そんな作業の終わりが見え出した、その時のことだ。


「う、うわぁっ!!!??」


叫び声が、山側にある森の方から聞こえてくる。

その声には聞き覚えがあった。リカルドさんの部下のものだ。


「な、なんでしょう」

「なにかあったのかもしれないね」


不安を覚えながら待っていると、森の奥から彼らが姿を現す。

こちらまで息を切らしながら走り寄ってきた一人が言うには、


「植物魔が突然に暴れ出したんです……! まさか、あんな場所に大きなトレントがいるなんて……」


とのこと。


植物魔・トレント。


普段は木に擬態してまったく動かないし、温和な性格をしているが……、一度暴れ出すとその幹を次々と伸ばして攻撃を加えてきたり、爆発する実を落としたりもできる、強力な魔物だ。

もちろん、動くこともできる。


「トレントか。魔物がこの屋敷に近いところまできたことはあまりなかったと記憶しているんだけど」

「この間まではいなかったんです。私にも、なぜあんな化け物がこんなところにいるんだか、さっぱりで……!」

「少し落ち着くといい。出てきたものはしょうがない。倒してくるよ。幸い、火属性は相性がいいしね」


リカルドさんは、屋敷の壁に立てかけて置いていた剣を手にすると、トレントがいるという方角に向かおうとする。


私はどうしたものかと思っていたら、そのしゃがれた声は唐突に森の方から響いてきた。


『たす……けてくれ。たすけてくれ』


一体なんなんだと、私は固まる。


どうやら、他の人には聞こえていないらしかった。幻聴を疑って自分の頬をはたいてみるが、そうではないらしい。

じゃあなんだと言われたら、


『このままでは。このままでは、一族みな枯れてしまう』


……言いぶりからして、たぶんトレントの声だ。

どういうわけか、植物魔の声がきこえるようになっているらしい。




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