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45話 かくれんぼも本気で!

「すべてお見通しだよ。でも、なかなかいい隠れっぷりだったと思うけどね」

『……わお。お姉さん、変わってるね。トレントさんに乗ってる時点でおかしいと思ってたけど、もしかしてボクの声が聞こえるの?』

「うん。そういうスキルを持ってるの。あなたの正体を見抜けたのも、それが理由!」


私がそう言えば、ボキランは私の頭上を飛び回り始める。


『へぇ、聞いたことがないよ。やっぱり人間は面白いな。ねぇ、じゃあもう一回隠れるから、ボクを見つけてよ。今度はもっと本気出すから!』

「えっと、ちょっと急いでるんだけど……」


私の主張はしかし、ボキランには届かなかった。

彼はまた擬態をはじめてしまって、景色に溶け込む。


『どうするの、マーガレットさん』

「んー……こうなったら、満足するまで遊ぶしかなさそうかも」


たしかにマウロさんを探すためには時間のロスだが、結局それが一番近道な気がする。


ここで遊びに付き合わなかったら、この先延々と、擬態によって実際とは違う景色を見せられることになりそうだし。

そうなったらリカルドさんとの合流すらできなくなってしまう。


ここは、子どもとのかくれんぼだと思えばいい。


と言って、手を抜くつもりはないんだけどね。どうせ遊ぶなら、本気でやるほうがなんでも楽しいし!


「さーて、ミニちゃんも一緒に探そっか、ボキラン!」

『うん、マーガレットさんがそう言うなら手伝うよ』


それから私は、本気でボキランを見つけにかかる。


どうやらさっきまでの擬態はまだ序の口だったらしい。

目につきにくい岩陰に隠れたり、いつのまにかミニちゃんの背後に潜んでいたりと、ボキランは巧妙に隠れる。


私はそれに苦労しながらも、絶対にあきらめず、毎度彼を見つけ続けた。


『あはは、あはは! お姉さんとかくれんぼ、すごい楽しいや!』


それを繰り返すこと約一刻近く、ボキランはやっと満足したらしい。

擬態を解いた状態で、私の肩の上に乗る。


全然重みを感じないから、見た目通りかなり軽い体をしているらしい。

ふわふわともしていて、思わずなごみかけるが、そうじゃない。


リカルドさんと合流して、マウロさん探しに戻らなければならないのだ。


「ねぇボキラン。マウロさん……体格のいい男の人を、このあたりで見かけたりしてない? 朝方くらいなんだけど」

『あ、それなら一人いたような気がするよ。まだ眠かったから、惑わせてはないけど』


「ほんと!? どっちに行ったか分かる? もし分かるなら案内してほしいんだけど」

『いいよ~、あ、じゃあついでに連れの人とも合流する?』

「うん、そうしたい。ありがと!」


ボキランが私たちを先導して、ふわふわと漂っていく。

すると思いがけないほどすぐ近くに、リカルドさんはいた。

彼はトレントに乗った状態で、きょろきょろとあたりを振り見ている。


どうしたのかと思えば、


『ボクの仲間が遊んでるみたい』


とのこと。

彼が呼びかければ、その子たちは擬態をやめる。みんな同じような形をしていたが、葉の跳ね方やうねり方には個性があった。


見た目は愛らしいけれど……もし【開墾】スキルがなかったらと思うと、ぞっとする。

もっと長い時間、リカルドさんと合流できていなかった可能性もあったようだ。

捜索のために森へと出て、こっちが遭難する事態になりかけていたらしかった。


「リカルドさん」


私は、背後からこう声をかける。


「マーガレットくん! 探したよ」


彼はトレントの上、すぐに振り向き、一度は笑顔を見せて大きく息をつくのだけれど、その顔は再び固くなる。


「…………一応聞くけど、本物だよね?」


どうやらボキランに弄ばれすぎて、疑心暗鬼になっているらしかった。

彼がうろんな目でこちらを見るから、


「本物ですよ、まぎれもなく! じゃなきゃ、ミニちゃんに乗ってません。この子達のいたずらだったんですよ」


私はボキランを身体の前で抱えて、彼らのいたずらだった旨を説明する。

まだ疑っている様子だったから、私はボキランに頼んで、その場で実際にスゲ草へと変化をしてもらった。


それを目の当たりにして、彼はやっと納得してくれる。


「また、すごい技を持った植物魔だね……。こんな種類もいるなんて知らなかったよ」

「私も、本土では見たことがありません。気候が違うから、見慣れない種もいるのかもしれませんね。とっても多様な生態系です」

「だね。でもだからこそ、危険もある。本来は一人で探索するような森じゃないよ。

 全くどこに行ったんだ……」


この発言からして、リカルドさんもマウロさんに関しての手がかりは、見つけられていないらしい。

となれば今頼れるのは、ボキランだけだ。


『さ、揃ったね。二人ともこっちだよ~』


スゲ草への変化を解いた彼は空気中を綿毛のように漂って、私たちの前を移動しはじめた。

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