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43話 行方不明のマウロさん?

それから数日は、畑作業と並行して、砂利道の整備をする日々が続いた。

毎日同じようなことの繰り返しとはいえ、充実感は変わらない。


その日は、収穫を完全に終えたかぼちゃ畑から茎や葉を処分しようとしていた。


「収穫を終えたあとの野菜はしっかりと処分してあげないと、害虫被害だったり、土の栄養が偏ったり、いろんな問題が起きます。なので今日は、すべて刈り取って、燃やしちゃいましょう」


と、私は畑を歩きながらカーミラさんに説明する。


「あと、燃やすときは土も一緒に――」


さらにこう続けようとするのだけれど、そこでカーミラさんが畑の奥へと目をやっていることに気がついた。

ただのよそ見という感じでもない。


「ごめん、続けて?」


彼女は私が言葉を止めると、こちらを振り向いて言う。けれどこのままでは、私の方が気になって先に進めない。


「カーミラさん、どうかしました? 森の方になにか?」

「そこじゃないわ。単に今日マウロの姿を見ていない気がして」

「言われてみれば、たしかにそうかもですね」


そういえば朝食の席にも、今日は来なかったっけ。

が、そんなことは別に珍しいことじゃない。


彼は、やると決められた仕事は忠実すぎるくらい淡々とこなすが、基本的に人付き合いなどは最低限しかしない。

基本的には一人を好んでおり、最近では朝食も別で済ませることが多かった。


ただ、いつもならこの午前中の時間は、煉瓦の組み立て作業に没頭していたはずだ。

畑作業をしながらいつも、その影は目の端にちらついていた、たぶんきっとおそらく。



自信がないのは、マウロさんの行動がほとんど一人によるものばかりだからだ。

どこでなにをしているのかまでは正直、細かく把握してないのよね……。


「どこかに行ってるだけかもしれないわね。ごめん、ちょっと気になっただけだから」


カーミラさんは、とくに大事とは捉えていないようだった。


あっさりと切り替えて、腰巻に指していたメモとペンを手に取る。

が、私の方はといえば、なんとなく落ち着かなかった。一度気になったら、確かめてみなければ落ち着かない質なのだ。


「やっぱり、一応確かめてみましょう?」

「心配性ね、マーガレットは。あいつならどこかで仕事してるだけでしょ。あたしたちの声が煩わしかったんじゃないの」

「そうだといいんですけど……」


念には念を、だ。

私はカーミラさんを説得して、屋敷の敷地内を探して回ることにする。


が、姿はどこにも見当たらない。

牛舎にも裏手の井戸にもいないし、リカルドさんの部下の方々が小舟の補強をしてくれていた岸辺にもその姿はない。


屋敷内にいたリカルドさんに尋ねてみても、


「いいや、僕も見ていないな。朝ごはんも用意して置いておいたんだが、食べていないようだ」


とのこと。

いよいよ、不安が的中しようとしているらしかった。


「彼が行くような場所か……うーん、なにか必要な建材があるとすれば、森に行ったのかな」


とは、リカルドさん。

あまり考えたいことではなかったが、たしかにありそうな話ではある。


マウロさんが、建築のこととなると一心不乱に一つの物事しかできなくなるのは、少ないやり取りの中でも理解はしていた。危険をかえりみずに、一人で行ってしまった可能性もある。


となれば、聞き込み先は一つだ。

リカルドさんも加わって、三人で向かったのは、トレちゃん達のもとだ。


「マウロさん、どこに行ったか知ってる? 森に入ったところとか見たりしてないかな?」


と、こう聞けば彼らは口々に言う。


『知らないよ。そういえば今日、姿を見ていないような気もするな。少なくとも今は、目の届く範囲にはいないよ』

『いいや、待つんだ諸君。わたしたちが朝起きるより早くにここを出発している可能性もある。最近はマーガレット嬢との体操を合図に起きていたからなぁ』

『おれは、日の出を見届けるまでなら起きてたけどねー』

『おいおい強がるなよ、お前、もっと早くに寝ていたぞ』


なんか推論テストみたいになってない!? 嘘が混じっている辺りなんかとくに。

これじゃあまるで王城の役人が受けるという入職試験みたいだ。


ちゃんと考えたら難しい話なのかもしれないけれど、まぁ要するに、まとめるならばこうだ。


「とにかく、今この辺りにはいないみたいです。なので山に行ったとしたなら、日の出すぐくらいの朝方ってことになりますね」


私が言うのに、リカルドさんがため息をついて頭を抱える。

「だとしたら、もう数刻は経過しているぞ……。しかもトレントたちが認識できないような距離って結構に離れている可能性があるよね」

「はい……。捜索しなきゃいけない範囲は結構広いかと思います」


でも、こうなったらやらないわけにはいかない。

森は豊かな自然にも恵まれているが、その分脅威も多いのだ。いくら危険に晒されているのが可能性の話とはいえ、それを無視することはできない。


すぐにでも出発したいところだったが、そこでカーミラさんが手をあげる。


「あー、じゃああたしここに残る。まぁあたしが探しに行っても、あいつも癪に障るだろうし、畑作業もある。それに誰もいないわけにはいかないでしょう」


冷静な意見であった。

単にマウロさんに対して恨みつらみがあって協力したくないだけの可能性もあるけれど、この場合においてはお留守番も大事だ。


先にマウロさんが帰ってきて、私たちがいつまでも探し続ける羽目になるのは避けたいしね。



そうして私とリカルドさんの二人が捜索隊となり、森へと出発することになった。

トレント達に乗せてもらって。



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