31話 育てた野菜は、超絶品!?
屋敷まで帰ったわけは、なにか甘いものを作ってもらえるよう、リカルドさんに頼み事をするためであった。
どうせなら、カーミラさんのわがままを全て叶えてしまえないかと考えてのことだ。
たしかに彼女の言っていること、それ自体はめちゃくちゃである。志願して島に来ておいて、普通は言わないようなことばかりだ。
が、逆に考えればその願いを叶えられるように変化していけば、島での暮らしはより快適なものになる。
そう、前向きに捉えることにしたのだ。
だから、まずはリカルドさんにそれを理解してもらえるよう、説得を行うつもりだったのだが――
「あれ、もう作ってる……!?」
館内の中、彼を探して歩き回れば、見つけたのはいつもの調理場。
彼はそこで、切ったかぼちゃを小鍋で茹でていた。その横では牛乳や砂糖も用意されている。
「はは、見つかってしまったか。うん、今日採れたばかりのかぼちゃがあっただろう? それを使って、なにか甘いものを作れないかと思ってね」
「もしかして、カーミラさんのわがままを叶えるためですか?」
「うーん、少し違うかな。彼女のためじゃない。生活に甘いものがあったほうが、君も僕も。みんなも幸せになるだろう? それだけのことだよ」
思考がシンクロしているんじゃ!? と、勘違いしそうになるくらい、その考え方は私と一致していた。
それに驚いていると、
「そうだ、マーガレット君。もう茹で終えた分がここにあるんだ。少し食べてみてくれないかな」
リカルドさんは、カットかぼちゃを小皿に乗せて私に勧めてくる。
綺麗なオレンジ色をしていた。
そのうえ、ほくほくと上がる湯気も食欲をそそる。
島に来てから自ら育てた作物を調理して食べるのは、ハーブを除いてはまだない。
少し感慨深い気持ちになりながら口にすると……
幸せになった。
比喩ではなく本当に。
「なに、これ。甘い、とっても甘いです……!! 味付けしてないんですか、これ」
「うん。砂糖のひとつも使っていない。それでこの甘さなんだよ。ただ茹でただけで、一流貴族たちの食卓に並んでもおかしくないくらい、完成された味になってるんだ。
生育が早いだけじゃなく、味もいい。あの畑はすごいよ。君の努力と工夫のたまものだね」
リカルドさんに褒められるのに反応できないくらいの、美味しさだった。
噛めば噛むほど、ほろほろと身が崩れて舌の上には優しい甘さが広がっていく。
外皮の苦みも、いいアクセントだ。
たしかに、こんなかぼちゃ、少なくとも私は口にしたことがない。
「スイーツを作りたくなるわけも分かるだろう?これなら、砂糖の量が限られている島生活でも、甘味を作れるかもしれない。そう思ったんだ」
「なるほど……! それに、ミノトーロ達を飼いだしたおかげで、牛乳も手に入りますしね」
「うん。それも大きいね。そうだ、どうせなら一緒に調理していくかい? プディングを作ろうと思っているんだ」
「はい、やらせてください!」
いつもは庭作業ばかりしているから、たまにはこういうのも息抜きになる。
……といって、リカルドさん指導の下だったし、そもそも工程の少ないスイーツだった。
かぼちゃの裏ごしをして、牛乳、片栗粉と混ぜ合わせたら、とろみがつくまで火にかける。
そうしてできた半液状のものをあとは、容器に入れて冷やし固めるだけだ。
ガラス容器に入れ、井戸水で容器を冷やす。途中何度か水を入れ替えたら、もう完成だ。
私が固まったプディングを持って厨房へと戻れば――
「いつのまにこれを!?」
いつのまにか、彼はクッキーを焼きあげていた。
綺麗なオレンジ色をしていて、いい香りが漂う。しかも、綺麗なマーブル模様まで施されていた。
「クッキーが添えてあったら、よりスイーツらしくなるだろう? お、そっちもできたみたいだね」
当たり前のように振る舞うリカルドさんの横、私はその手際のよさに驚かされるのであった。
みじかくなってしまったので、夜も投稿するかもです。
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