18話 王女様のはからい。
王城に庭で起こった様々な問題。
その対処には、かなり苦労しているらしい。
この間は、街で評判の庭師を呼んできて世話をさせたそうだが……彼らでさえ「私には到底無理です!」とさじを投げたのだとか。
結果、対応に行き詰まった王室管理所では、その対処のために私を呼び戻そうとする声が大きくなっているようだ。
さっき役人が意味ありげに私を見ていたのは、これが理由だったらしい。
……正直もう戻りたくはなかった。
島での生活はとても快適で、変なしがらみに縛られることもなければ、よく働き、よく食べて、よく眠る最高の日々を送れている。
こんなに最高の居場所はそう見つからないだろう。
王都に帰って高い給金をいただけるとしても、それよりも、ここにとどまりたい。
が、しかし。
王女様の命ともなれば、それは元女官程度の身分の私にどうにかできるものではない。
それにヴィオラ王女には、女官らの中で孤立する私に、とても温かく接してくれた。王城の中で唯一と言っていいくらいの恩人だ。
彼女のためならば、しょうがない。
そう考えて読み進めていたら話の方向性が変わった。
『親愛なるマーガレット。
あなたのことだから、エスト島のことが気に入っているのでしょう? あなたのことは、友人だと思っておりましたから、そのあたりはよく分かっています。
だからあえて、緑豊かなその島での奉公を命じたのです。ですから、希望するのなら戻ってくる必要はありませんよ。
ただ、植物魔、害虫の対処法を返事にしたためて、私にお送りくださればそれで結構です。後は、こちらでうまくやっておきます ヴィオラより』
……あぁ、なんてありがたい人なんだろう、王女様は。
じーんと、胸の奥が熱くなってくる。
相手は、一国の王女だ。私のことをよく理解したうえでそこまで配慮してくれるなんて、普通じゃありえない。
彼女は国の事情を差し置いて、ただ一人の女官でしかなかった私に配慮してくれたのだ。
手紙にも書いていたように、友人の一人として。
わっと、心の底からわき起こってくる気持ちに突き動かされるように私はペンを取る。
彼女に思いを馳せながら、手紙をしたためはじめた。
一度暴走したオルテンシアは、なかなか収まらない。彼らは怖がりな性格であることが多いためだ。が、ゆっくりと近づいてやれば、襲ってきたりはしない。そのうえで辛抱強くレリーフ草の粉を溶かした水をやり続け、伸びてくるツルは都度、適切に剪定をしてやれば元に戻ること。
害虫である羽虫・ヘルは、魔素を食べて増殖する。その性質を利用して、魔法で作った水とスゲ草の粉をこねて小さな顆粒を作って撒けば、毒があっても食いついて、すぐに退治できること。
そんな対処法ももちろん記したが、ほとんどが感謝の思いをつづる文章になってしまった。
私は入念に封をして、役人の元へと向かう。
まず渡したのは、二つの大瓶だ。
「マーガレットさん、えっと、これは……?」
「王女様にお渡しください。それを使ったうえで適切に世話をすればオルテンシアも害虫も、なんとかなりますから」
レリーフ草を挽いた粉と、炙ったスゲ草をすりつぶした粉が中には入っている。
この間使ったものを流用した形だ。
王城の庭が広いことを考えても、これだけあれば十分な量だろう。
「どうぞ、よろしくお伝えください……!」
私は役人に頭を下げて、手紙を託す。
王女様であり、大切な友人でもあるヴィオラ王女の幸運を祈りながら。
みなさまのおかげで、また盛り返して一位キープしております!
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