12話 島生活の幸せな日常
そして、その頃。
島流しにあい、追放された側のマーガレットはといえば…………
「よーし、じゃあ今日も頑張りましょう!」
むしろ、かなり生き生きとしていた。
太陽がさんさんと輝く青空の下、掘り起こした畝を前にこう意気込む。
離島へと流されて、約ひと月が経過しようとしていた。
はじめはリカルド・アレッシ侯爵の元で使用人として勤務する、という話であったが……、話し合いの末に今は私が開拓の中心人物になっている。
「うん、そうだね。教えて貰ってもいいかい?」
こう柔和な笑みを投げかけてくるリカルドさんは、その見た目の印象通り、元はバイオリン弾きの文化人であり、なんともまぁ開拓使向きではなかったためだ。
だが、かわりに家事は完璧にこなしてくれるし、今の様に手伝ってもくれる。
今日は、新たに作付けを行おうと考えていた。
正直、スキルを使って一人でやることもできそうだったが、彼が志願してくれたのだ。
ちなみにリカルドさんの部下の方々は、海に魚を捕獲しに出かけているから不在にしている。
そういえば、私が魔ネズミの牙から作った銛を片手に、かなり意気込んでいたっけ。あのぶんなら、戻りは遅そうであった。
「えっと、等間隔で埋めていけばいいんだね?」
「そうです。すでに穴は掘ってあるんで、そこに苗を植えて、最後に愛情をこめながら均してもらえれば!」
そのためリカルドさんと二人、作業をはじめていく。
今日植えるのは、ヘホかぼちゃだ。もともと島に野生の状態で生息しており、気候や土質との相性も問題ない。
そう、【開墾】スキルが教えてくれていた。
順調に作業は進む。
しかし、決めていた範囲である約家一つ分程度の範囲はそこそこの広さだ。
気付けば少しずつ天気が変わり、風が強くなってくる。
「このままじゃ苗が飛ばされるんじゃないか」
なんてリカルドさんは心配するが……それは無用だ。
「トレちゃん、風よけお願いしていいかな!」
『あぁ、わたしたちに任せておくといい』
【開墾】スキルに目覚めたことで、植物魔と会話ができるようになった私は、トレントたちを仲間に加えていた。
彼らは、自らの枝や葉を地面近くまで下ろしてきて、風から私たちを守ってくれる。
それどころか、ほどよい風が吹くことにより、快適な環境が出来上がっていた。
おかげで作業は無事に予定どおり進行する。
そうして夕方までに作業が終わったら――
「マーガレットくん。よく動いただろう? たんと食べるといい」
「リカルドさん、本当にありがとうございます……! 植え付けも手伝ってもらったのに」
「いいんだ。それに僕は君に教えてもらってばっかりでむしろ足を引っ張っていたとおもうよ。それに、この魚は部下が獲ってきたものだ」
リカルドさんによる、ハイクオリティなお料理で晩御飯だ。
今回は、前に植え付け育てていたハーブの数種類をブレンドしたものと、鯛の切り身を使った蒸し料理だった。
「どうかな、ちゃんと味が美味しいといいのだけれど」
「もう最高ですよ、リカルドさん! 食べてるだけで健康になりそうな味です」
「……それ、褒めてくれているのかい?」
「当たり前ですってば!」
その味は、毎日食べていても飽きないかなりの高水準だ。
「明日はどんな料理だろうって、うっかり寝る前から期待してしまうくらいです」
「はは、それは早すぎる気もするけどね」
なんて言いながら、リカルドさんは笑みを隠しきれていない。
口に軽く手を当てくすりと微笑む。
いつ見ても綺麗な顔だ。
最近は、太陽光がふりそそぐなか作業を手伝ってくれたこともあったのに、どういうわけかその肌は相変わらず、陶器みたいな白さをしている。
しかも、淀みのないエメラルドグリーンの瞳がそこに収まっているのだから、ついつい見とれてしまう。
眼福、かつ満腹だ。
正直、最高の職場環境だった。
人によっては身体がきついかもしれないが、もともと太陽のもとで動くのが好きな私には、ぴったりだと言える。
なにせこの離島には、面倒くさい派閥争いも、女同士の妙な争いもないのだ。
島流しにされると聞いた時はどうなることかと思ったが、ここまで幸せな生活ができるとは考えもしなかった。
控えめに言っても島流し、最高!
図らってくれて、ありがとう、ヴィオラ王女様……!
20時にも投稿予定! 頑張ります〜!!
引き続きよろしくお願いします。
たかた
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