1話 突然の島流し
短編版のご愛読を頂いた方、ありがとうございます。
連載版はじめました……! 短編版から展開等も追加しております。お楽しみいただけたら幸いです。
よろしくお願いいたします。
たかた
「え、島流しですか私」
それは、唐突に下った重すぎる刑罰であった。
勤務中、珍しく王城の執務室エリアに呼び出されたと思えば、これだ。
わけがわからなくて、私はしばし固まる。
思い当たることなど、何一つないのだ。せいぜい、勤務中にお菓子を食べたくらいだが、そんなことで島流しになるわけもない。
せいぜい反省文程度の話だろう。
その役人は、腕組みをして続けた。
「マーガレット・モーア。お前には、国を裏から操ろうとした嫌疑がかけられている。理由は分かるな?」
「いえ、全くわかりません。というか、なにをしたにしても重すぎません? 私ただの女官ですけど? 権力闘争とか全く関わってませんよ」
貴族の身分を持つとはいえ、私は男爵家出身の女官にすぎない。
島流しなんて、もっと重罪を犯した上の身分の方々にのみ課される刑だろう。
「しらばっくれても無駄だ。
お前は固有スキルにより王女様に取り入り、傀儡しようとした疑惑がある」
えぇ……。全然違うんですけど?
貴族ならば、魔力の獲得と同時になにかしらのスキルを得られる。
中には【治癒】や【身体強化】、【読心】など、一般的には当たりとされるスキルを得るものもいるが……私のスキルは、【庭いじり】。
名前のとおり、草木の世話に関するもので、水やり程度の水属性魔法ができたり、根っこから草をむしったり、植物の状態を確認したりできる。
ただ、それだけのものだ。
貰った時には、みんなから馬鹿にされたことをよく記憶している。
それでもどうにか活かす方法を考えた末、ようやく庭仕事にありついたのだ。
つまり、そもそも悪用できるほど大層なものでもない。
「仕事としてお任せいただいた庭の整備に利用していただけで、取り入ろうとなんてしてません」
私はきっぱりと主張するのだが、その役人はあくまで通達を告げるためだけによこされたのだろう。
聞く耳をもってはくれない。
「マーガレット、残念だがこれは決定事項だ。残念だが、もう言質はとれているのだ」
「それは、ヴィオラ王女からですか」
「誰からとは言えぬが、王女様ではない。王女様はむしろ、お前の無罪を望まれた。だからお前の刑は減刑されているのだ」
「減じられて島流しですか!?」
「流刑地は、未開拓地だ。その地の開拓を、お前と同じく罪が疑われて流刑になった侯爵に任せている。その者の屋敷で、使用人として働くのだ。
これ以上、言う事はない。とにかく然るべき身分の方から、お前を王女様から遠ざけるように話があった。それだけのことだ」
その役人はそう残すと、部屋の外に控えさせていた衛兵を呼びつける。
そのあとは、そのまま拘束されて、王城の外へと連れていかれることとなった。
……どうやら、私は陰謀にはめられてしまったらしい。
ただの女官なのに。
首謀者のあたりは、大方ついていた。
公爵令嬢である、ベリンダ・ステラだ。
女官たちは、各権力者たちの名のもとで王城に勤務していることが多い。
そのため、なかば派閥と化しており、その争いは日々こまごまと繰り広げられている。服の色まで異なるのだ。
そんななか、私はどこにも属していなかった。
理由は単純。女同士の争いだとか嫌がらせだとかが、はっきり言って面倒くさかったためだ。
「庭いじりだけが取り柄の草女のくせに生意気な」
「早くクビになればいいのに」
なんて言われても、気にしない。
誰かに媚びることもなく、ただ目の前の仕事をこなしていたのだけれど……
「あなたは誰に対しても変わらなくて、いいわね」
それを王女様に気に入られて、ひいきされるようになった。
最近では、一緒に庭いじりをすることも多く、お茶に誘ってもらうこともあった。
たぶんベリンダ令嬢は、それをよく思わなかったのだろう。
公爵令嬢と、女官兼男爵令嬢。
うん、私が今更なにを言っても、もうダメだねこれ。
マーガレット・モーア、25歳の春にして、島流しが確定してしまったらしい。
【お知らせ】
二巻が2月末に発売となります!
よろしくお願いいたします。また、タイミングがきましたら、書影などを公開させていただきます。
また、下記作品の新連載を始めました。
よろしければ見ていってくださいませ!
↓↓↓
『元王妃は隣国に流れて憧れだった薬師となる~妹と不倫に走った旦那に裏切られ国を追われましたが、隣国王子に請われて、やっと自由と幸せを掴む~』
https://ncode.syosetu.com/n8880kb/
(広告下にリンクもございます!)
よろしくお願い申し上げます。