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小説の書き方

【ポエムの使い方編】告白のタイミング

作者: 正城不落

ポエム1:唯識


瞼を閉じると宝石のように広がる星の景色

その星に生命はいない ただ輝くためにあるそれは ただ一つを照らし続ける

光の中には光があり 光を結んだ連なりは すべての光の中に同じように現れる

時間は存在を輝かせる そこにひときわ輝く星が生まれた時

ただ一つ照らされているはずのそれは 無数の星々に心を揺り動かされる

きっと世界はこのようにある すべてが一つのようにお互いを知っている






ポエム2:心流の舞、美とその熱量


熱い炎。

踊りだして、揺らめく飛沫。

擦れ合い、うねる水流の温度は、

獣がまぐわう、それによく似ている。


指で掬って、滴り落ちる。

腕の筋を通って、蕩けたように、ひたひたとへばりつく。

落ちた雫は波紋を広げ、心の深く耽溺する喜びを、

水面が波打ち、華奢な体が小刻みに震えるように隅々まで伝える。


心がざわめいていた。

表層では、波と波が衝突してびちゃびちゃと飛沫を飛ばし、

その喧騒は、もはや液体のように蕩けた密度を持った、心中深くから伝わっていた。


心流がうねる。

それは、激しく。

喜び。

心の脈動に呼応するように、体はがくがくと震える。


激しいだけでは終わらない。

心は形を求めて、その振動をどこまでも伝えようとする。

それは、より激しさが増すことの兆しだった。

狂ったように心が昂ぶる。

理性によって、より狂暴な姿へと。


形を持った煩悩は、美しさへと変わる。

美を追求するほど、心はさらに蕩け、より繊細な形へと移り変わろうとする。


その形に意味は無かった。

繊細に形を成そうとすることに意味があった。

一つ一つの機能。

それらは、ちりばめられた美の結晶。

心は、その一つ一つを関係付けることで、大きな構造物を作り上げていた。


それはまさしく天にも昇る気持ち。

煩悩の形、それが美の体現であった。




心は波打つ、心はうねって躍り狂う。

煩悩を体現しようと形を変える。


心は流動的だ。

時には雨のように、たくさんの粒々を落とすような、

一つ一つが分離した結晶を景色の中に映し出すかもしれない。

でも、それらは全て繋がっているのだ。

美を体現するための関係性によって。


繊細に配置されたそれは、一つの情景として、

まるで、喜びに舞う流体の、その熱を感じさせるだろう。






ポエム3:銀の音と、鈴の音色。金色に大地を照らした物語。喜び


吹きぶさむ時の音を聞いて。

丘の先へとやってきた。

銀の音は安らかに。

金の歌声は柔らかな大地に眠る。

峠を越えることができるのならば。

闇の精霊の導きに従うだろう。

奥へ、奥へと進んでいく。

遠い闇は未だ遠い。

まだ、それほどではないのだろう。

赤い導きは、もう何も求めてはいない。

暮れる太陽、空ける夜明け。

その色は混ざり合って、もうどちらが正しいのか分からない。

公園で彼女と出会ったんだ。

それは君の話でもある。

公園で君が泣いたんだ。

それが彼女の愛のきっかけでもあった。

臆するよりは、勇気を携えて。

見送られるのも悪くは無いさ。

もう僕には、君の歌声しか残っていない。

溶ける夜明け、明ける月の音。

銀の音はどこに行ったのだろうか。

あるはずの無い地平を目指して。

僕にはその意味が理解できなかった。

明ける夜明けに捧ぐ。

僕は君が大好きだ。















<答え合わせ>


※このあとがきは、ポエムの辞書的な意味を調べた上で書いています。


今回は恥を忍んでポエムを書いた。

これらのポエムが何を表現したのか理解できた人間は少ないと思われる。

ポエムは基本的に、作者と読者が感覚を共有するための装置が整備されていない、まるで、幻覚でも見せられているような人間の言葉の連なりなのである。つまり、「AだからB」だとして、なぜそうなのかを理解することが難しいのである。

逆に言えば、作者自身からすると、最も効率よく自分が言いたいことを表現したものがポエムだ。

なので、自分がそのポエムを見て何を考えているかをすぐに思い出せるなら、他人には意味が無くても、自分には意味がある小説と言える。


ここで物語の作者は自分の小説を見直してみて欲しい。

「AだからB」という論理を、相手がなぜそうなるのか理解できないような文章を書いていれば、それはどんなに普通の小説に見えても、その小説は理解できない人間からするとポエムなのである。


しかし、ポエムが面白い小説であるのは確かである。

しかし、それはその読み方が理解できる自分にとってだけ面白いので、他人に見せるのには不向きであることに注意して欲しい。


逆に、そう考えると、どんなに商業的に成功している作品でも、その内容を理解できない人にとってはポエムなので、他人から理解されないことをどこまで気にするかという、作者自身の気持ちの問題である。


最後に、

もしも、このようなポエムを自分の小説で使う場合は、一度意味が伝わる物語を書いて、その後に、その内容を端的に表したかのようなポエムを書くと、それを読んだ読者は、一度読んだ物語の感情をもう一度呼び覚ますことができるだろう。

アニメの曲の歌詞が、物語の世界を表したものになっていることが多いのは、アニメの曲の歌詞が、最初は意味が分からなくてもアニメを視聴し続けるにつれて意味が分かるようにできているからであり、つまり、その感動を何度も再体験できる優れた仕組みだからである。

だから、ポエムは使うタイミングが大事で、同じように、物語のキャラクターが愛の告白をする場面で

「愛してる」

と一言伝えるのも、これはポエムであり、告白される相手は、相手が自分に向ける愛をよく理解した上で、その重要な部分だけを再体験するように「愛してる」の言葉を聞くから感動するのである。


だから、告白したい相手に「愛してる」の言葉を理解して欲しいならば、その言葉を伝える前に、相手があなたに愛されて幸せだった瞬間をたくさん体験させてあげる必要がある。

告白は、それらの準備が終わった次である。

そうしないと、その告白は、自分だけが理解できるただのポエムである。






<小説の書き方シリーズ>


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