5話 公安長
闘気師への…道!
2425年 八月三日、東京都内の医療課にて
「お世話になりました。美優羅先生」
「いや〜秀樹くんともうおさらばか〜可愛い子だから手放したくないな〜」
あの日から三日の時が過ぎ、俺は医療課を無事退院することができた。俺の怪我を治してくれた美優羅先生がめちゃくちゃ俺のことを気に入ってくれたようで、この様子である。
「また会いに来ますよ先生。きっと」
「絶対!ね?」
「は、はい!」
"絶対"と念を押されたが、美優羅先生と話すのは楽しいしむしろ来たいくらいだ。近々また来よう。さてと…
「あの男の人…病院前で待ってるって言ってたけど…どこだろう?」
三日前、看護師さんから男の人から伝言があり、三日後に病院前で待ってると言われたのだが…。いないな…。
その時、目の前の道路に一台の車が停まった。見た目からして高そうな車である。
「お…あれかな?」
俺はその車に走り寄った。だが…中から降りてきたのはあの男の人ではなく違う男の人だった。
あ…違うか…あの人だって思い込んで走ってきちゃった。
俺はその場を引き返そうとするが…。
「君が…飯島秀樹君…?」
後ろから名前を呼ばれたので咄嗟に俺は振り向く。
なんで俺の名前を知ってるんだ…?
呼びかけた男は俺に近づいてきた。大柄なのでちょっと怖い…。
「あ、あの…あの人…は?」
「辰爾のことだろう…アイツは昨日死んだ」
「え…?」
急な告発を俺は理解ができなかった。あの人が…死んだ?
「俺と同じ任務をしていた。だが敵の邪気術を直接喰らってしまった」
「そ、そんな…」
「奴が死ぬ前に…医療課にいる君を闘気師公安本部へ連れて行けと託された。だからここに来た」
事の道筋はわかった。でも…でも……あの人の死が受け入れれない。あんな強い人が…。
そう秀樹が想いを膨らませていると…。
「俺たち闘気師はいつ死ぬかわからない。今日死ぬかもしれないし、明日死ぬかもしれない。それでも君は闘気師になりたいか?」
そう言われた瞬間。秀樹は大柄な男と目を合わせた。そして…
「はい。僕は……僕は命を投げ打ってでも…邪物から人を護りたい。僕のような人が…これ以上増えないように…!」
男は深くため息をついた。と同時に眉間にシワをいくつも寄せた。
やばい…怒らせちゃったのかな…そんな甘い考えとか言われるよな…。あっ…目開いた。なんか言われる…!
「私は…正直君をみくびっていたよ。」
「え?」
男から出た言葉は、怒号ではなく、感心だった。身構えていた秀樹はきょとんとする。
「今の学生は…甘ったれている。素直に言うとそう思っていた。だが…君は…君の心は真っ直ぐだ。眼を見たら分かる。君の言葉は真実。そしてその言葉は素晴らしい」
秀樹は次々と並べられる褒めの言葉に照れを隠せなかった。
そこまで言ってくれるとは…照れる…。
「君の心はわかった。今から君を闘気師公安本部へと連れて行こう。君はそこで公安長に会ってもらう」
「こ、公安長?!」
「そう…公安長。そこで君は試される」
公安長って…あのニュースとかでよく見るあの…?!今から…?!というか試されるってなにを…。
「まあそう慌てるな。君の思いさえ伝われば公安長も頷くだろう」
「だといいですが…」
男は歩き出し、俺の肩を掴んだ。
「俺は信じている…」
そういうと男は車の方へ進み、運転席へと腰を下ろす。車の窓を開け、俺に車に乗るよう合図した。すぐさま俺は車の助手席に駆けつけ、男の人と並んだ。男の人はこちらを向いて…。
「俺の名前は大門亜久里。好きに呼んでくれ秀樹くん」
「は、はい!大門さん!」
「ふっ」
大門さんは微笑し、車を走り出させた。
十五分後。
「着いたぞ秀樹君」
車のエンジンを止め、俺と大門さんは車を降りる。
「でっかいな〜いつ見ても」
東京の真ん中に佇む公安本部は、いつ見てもその大きさに圧倒される。
「さあ行くぞ」
「ああ待ってください!」
自動ドアをくぐると、中には物凄い綺麗な空間が広がっていた。壁から流れる水だったり、壁に飾っている絵画。何を見てもひきつけられる。
気づくと大門さんはエレベーターに乗っていた。こちらに手招きしている。俺は急いで大門さんの元へ行き、エレベーターで上に上がる。
「うわぁ…三十二階まであるんですね…」
「でかいよな。公安長は最上階で待っている」
「なるほど」
三十二階までの道のりはあっという間だった。外の景色を見ていると、一瞬のように思えた。エレベーターの扉が開くと…一枚の扉がそこにはあった。
「ここから先は君一人で行け。秀樹くん」
「え、僕一人ですか?」
「公安長の部屋には招かれた者しか入室できない。健闘を祈る」
大門さんはそう言って、エレベーターで下に降りてしまった。
「う、嘘でしょ…大門さぁん…」
俺は扉に目を向ける。そこには異様なオーラが漂う。居合わせるだけで逃げ出したくなるような。
「いや…逃げるな俺。闘気師になるって…決めただろ」
そうして俺はドアノブに手をかける。わずかな力を腕を伝って手に巡らせ、ドアを押した。その先からは眩しい光が差し込んできた。
眩しい…なんも見えない…。
眩し過ぎて瞼を閉じ、足の感覚だけで前に進む。すると…。
「待っていたよ。飯島くん」
ニュースでよく聞く、落ち着いていて、優しい…女神のような声だ。
光に慣れた目は、そこに立っている一人の女性を映し出す。そして。
「こんにちは…飯島秀樹です」
「こんにちは。私は公安長こと成瀬真綾。」
一人の青年と闘気師公安長が、言葉を交わす。
公安長…成瀬真綾登場…!!