4話 二つの目覚め
戦いの後…秀樹は…?
目が覚めると、見知らぬ天井がそこにはあった。俺はベットに横たわっていて、ベットの感触が背中に伝わる。
ここはどこだ…?俺は…一体…。周りにもベットがあるし…病院…か?
推測を重ねていると、部屋のドアが空いた。
「目を覚ましたみたいだね。飯島くん」
「あ、あの時の!」
そこに立っていたのは秀樹の危機を救った中年の男。
「あれから十二時間経ったんだよ」
夢…であって欲しかったな。でもそれはさすがに無理か。体も痛いし…ってあれ?……痛くないぞ?折れてたはずの腕も全然動かせるし、足も…。
「君の怪我は医療課の闘気師が治した」
「え、ほんとですか…」
治せるのは知ってたけど…ここまでとは。人生で大怪我とかしたことないもんな。
秀樹が感心していると、男は目を細め、口を開けた。
「秀樹くん…今回はすまなかった。私がもう少し早くきていれば…こんなことには」
そうして男は深く頭を下げた。まるで、会社で上司に説教され頭を下げて謝罪する社員のように。深く。
「…頭を上げてください」
秀樹はそう言うと窓の方を見た。
「俺が悪いんです。全部…」
その言葉には、彼の心情が乗せられていた。家族を失った悲しみと、その場に居合わせてやらなかった自分の無力さへの怒り。
「いや…私の責任だ。私が…」
「……一つ…お願いを聞いてもらってもいいですか」
秀樹がそう言うと、男はようやく頭を上げた。
「なんでも言ってくれ、私にできることならなんでもする」
数秒の沈黙がその場に流れた。沈黙という一つの音かのように。
「俺を…闘気師にさせてください」
秀樹は男の方を見た。その眼は、覚悟を決めた人間の眼をしていた。輝き、そして同時に薄暗い。そんな眼を。
男は驚いた顔を浮かべたが、一瞬にして表情を変えた。微笑みという表情を。
「実は…最初から君に闘気師にならないか提案をしようと思っていた。もちろん…謝罪をおまけにね」
「じゃあ…」
秀樹は大きく目を見開き…。
「ああ…君を東京闘気師公安本部に闘気師として推薦する」
推薦…たしか、闘気師からの推薦って結構凄いんじゃなかったっけ…。一年で三人いれば良い方だった…はず。それを俺が…?
「三日後には医療課を出れる。その後、本部へ行こう」
「…はい!」
闘気師に…なる。なって…邪物を倒しまくってやる。俺のような人が増えないように。
「では…三日後にまた来る」
男はそう言うと歩き出し、ドアのところまで行くと秀樹の方を向いて礼をした。秀樹はそれに応えるように頭を下げ、男はドアを閉じた。
ぽろっ…と。なにかが落ちた。
「ん…?あれ…」
気がつくと俺は泣いていた。
「え…あれ…なんでだろう」
拭っても拭っても、涙はこぼれ落ちて行く。男がいることの緊張がとけ、昨日の出来事の重さがのしかかってきたのだ。
「う"ッ…う"ゔぅ…」
静寂な病室には秀樹の泣き声が響いていた。高校二年生の青年の…正直な感情を誇張するかのように。
十二時間後。とある山奥にて。
そこには年季の入った岩石があった。百人が束になっても砕くことができないほどの硬さの。大きな岩石が。
月が…雲に隠れた頃。光は消え、あたりは真っ暗になる。すると…"岩が砕ける"ような音が響き渡った。
音の原因は…岩から出た"右手"であった。ミシミシと…岩にひびが入っていく。そして…。
岩が砕け散った。
「んんぅ…久しぶりの空気だ」
一つ、声がする。
「ああ…久しぶりだ」
もう一つ、声がする。
「あれから何十年経ったのだ…ムーン」
「知るか…時の感覚など既にないぞサン」
岩が砕けた場所には…"二人の男"が立っていた。
「む…町…か?あれは」
「物凄い灯りだ。あれは町なのか?」
男らは疑問を浮かばせ、一人は頭を掻き、もう一人は欠伸をした。
「まあいい…岩を砕けたのだ。解放されたのだ。サン」
「そうだなムーン」
二人は不気味な笑みを浮かべた。
『闘気師は…まだいるのか?』
…と口を揃えるのだった。
謎の二人の男…。サンとムーン。コイツらは一体なんだ…?!