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今までも、そしてこれからもずっと

最終話更新前に作品の前半を整理しました。ページ数も1ページ減らしたので、混乱させてしまったら申し訳ありません。物語の内容に変更はありません。


 数日後の昼下がり。

 王城の図書室に、年若い男女の姿があった。


 今、図書室の利用者はこの二人以外いないようだ。

 管理人である老人も、この時間は別の仕事で出払っている。

 

 親密そうな空気を醸し出す二人は、何やら囁き合いながら歩を進め、慣れたようにこの図書室の一番奥の席で向かい合って座った。


 窓から差し込む光が二人の横顔を柔らかく照らし、二人は穏やかに笑い合う。


「本当に懐かしいわ。また来られて嬉しい」

「ルルが最初のデートにここを選ぶとは思わなかった」


 男女の一人、テオフィルが頬杖をつきながら言った。

 するとその相手、ルイーズがいたずらっぽく答える。


「あら、結局この間の街歩きはデートではなかったの?」

「……デートだよ。俺の中では」

「私にとってもデートだったわ」


 少し頬を染め、ふてくされたように答えるテオフィルを見てルイーズはくすくすと笑う。

 ルイーズの言葉に機嫌を直したテオフィルは、話を切り替えた。


「それより、ずっと気になっていたんだけど、あの日謁見の間の前には見張りがいただろ?ルルはどうやって入ってきたんだ?」

「……怒らないでくれる?」


 上目遣いで頼むルイーズに、テオフィルは首をかしげながら頷く。

 ルイーズはほっとしたような顔をして説明した。


「あの日の見張りが、たまたまいつも会う門番さんだったの。ご友人のシフトを代わってあげていたらしくて。事情を説明したら「見なかったことにします」って言って入れてくれたわ」

「ああ、なるほど……」

「彼を罰したりしない?」

「しないよ。むしろ感謝しなきゃ。階級を上げてあげようかな」

「逆に恐縮してしまうわ」


 冗談を言うテオフィルに笑っていたルイーズだったが、ふと悲しそうな顔になって言った。


「でも、あの抜け道はふさがれてしまったわね。私のせいでごめんなさい」

「仕方ないよ。むしろ、よく役に立ってくれた」


 ルイーズが城に忍び込んだことに関しては、本来だったら相応の罰が与えられるべきだったが、ルイーズが昔王城に自由に出入りできていた人間であることと、騙されて妃選考に参加できなくなったこと、そしてローレン家の普段の国へ対する貢献度の高さから特別に罰を免除された。

 

 しかしルイーズは罰を与えられない代わりに、どうやって誰にもばれずに王城に入ったのか洗いざらい吐くこととなったため、当然抜け道の存在も知られてしまったのだ。


 テオフィルと二人だけの秘密だったのに、とこっそり落ち込むルイーズの頭を、テオフィルがわしわしとなでた。


「ちょっと、ぼさぼさになるわ」

「ぼさぼさにしてるんだよ」

「もう」


 テオフィルになでられたことで元気が出てきた様子のルイーズを見ながら、テオフィルは尚いたずらっこのような顔で言う。


「それにしても、ルルのお仕着せ姿、よく似合っていた」


 テオフィルの言葉を受けてルイーズは真っ赤になり、手で顔を覆った。


「あのときは必死だったから……!なんとかしないと、二度とテオに会えなくなっちゃうと思って」


 この言葉に不意打ちできゅんとさせられ、ルイーズに負けないくらい真っ赤になったテオフィルだったが、顔を隠しているルイーズは気付かない。


「でも、よく考えたらお父様もあの場に来るなら、お父様と一緒に行けばあんな大冒険しなくても入れたのよね。本当に冷静じゃなかったわ」

「いや、ルルはあれで正解だった」


 テオフィルの言葉に、ルイーズはきょとんとして顔を覆った手を下ろした。

 テオフィルは赤くなった顔を逸らしながら続ける。


「あそこで入ってきてくれなかったら、俺はきっとキャシーの名前を発表していた。一度こう決めた、と発表したものを、あとから覆すことはできなかったと思う」

「そうなの……それならよかったわ」


 ルイーズは、自分が行かなかったら誰か他の人……具体的にはカサンドラがテオフィルの妃に選ばれていたかもしれなかったことを想像して、改めてほっと安堵の息をついた。

 そしてふと疑問に思ったことを口にする。


「そういえば、どうしてあの場にロロお姉様もタイミングよく来てくださったのかしら」

「ああ、ロアンヌにはアランを捕縛して連れてくるよう、もともと俺が頼んでおいたんだ。ルルがあの場に来てくれなくても、ブリジット嬢の行なった不正については追及するつもりだったから。ローレン卿と一緒に入ってきたのには驚いたけれど」

「きっとそれは本当にタイミングがよかったのね」

「そうだな。しかし、あんなにあっさりブリジットとアランの関与を証明できたのはルルのおかげだ。まさかあんな嘘を吹き込んでいたとは。“秘密のはなし”ってあのことだったんだな」


 テオフィルの言葉にルイーズはうなずく。


「ええ。ドレスのことがあったから、もし私に不自然に接触してくる人間がいたらブリジットさんの差し金かもしれないと思って一応仕込んでおいたのよ。違ったら違ったで冗談です、で済む程度の話かなと思って。でも、アランが騙されてくれるかは賭けだったの。それにアランが石をちゃんと拾ってブリジットさんに渡すかもわからなかったから、運がよかったわ」

「いや、さすがだよ。しかし、ドレスに関しても妨害が行われていたことはもっと早く話してほしかった。そうしたらもっと早く調査に乗り出したのに」

「ごめんなさい。言われてみればその通りだわ」


 ルイーズがしゅんとなって頭を下げると、テオフィルは笑った。


「まあ、最終的に丸く収まったからいいけどな。ドレスショップもアランにローレン家からの注文を断るよう頼まれたことを認めたよ。ローレン家がターコイズブルーの布を不当に買い占めようとしていると嘘を吹き込まれたらしい。どのドレスショップの店員も、ルルたちに謝罪したいと言っていた」

「そんな、もういいのに。でもわざわざ調べてくれてありがとう」

「いえいえ。ルル、いろいろとよくがんばったな」


 頬杖をつき、そう言ってにこにこ笑ってくれるテオフィルを見て、ルイーズは顔を真っ赤にして目を逸らし、言う。


「……テオは、私の妃選考でのがんばりを見て私を好きになってくれたのかもしれないけど、私はきっと自分で気づいていないだけで、テオのこと昔からずっと好きだったんだと思うわ」


 しかし、そんなルイーズの言葉をテオフィルは慌てて遮った。


「ちょっと待て、俺も小さいころからだけど」


 そんな歴史の浅い想いだと勘違いされてはたまらない。

 憤慨するテオフィルに、ルイーズも少し眉を寄せた。


「嘘よ。じゃあなんで会ってくれなくなったの?」


 テオフィルはぐっと詰まった後、うなるように言った。


「それはお前が……世界を股にかけて仕事がしたいって言うから……。俺は国から出られないから、その夢を尊重してルルを諦めることにしたんだ」

「えっ……」


 思わぬテオフィルの言葉にルイーズは目を丸くする。テオフィルはそんなルイーズに恐る恐る聞いた。


「……あの夢は……もういいのか?」

「…………」


 不安そうなテオフィルを見ながら、ルイーズは当時のことを思い出していた。


―――――――――――

――――――――

――――


 あの日、テオフィルにかっこよく見られたい一心で、当時一番尊敬していてちょうど一時的に家に帰ってきていた姉を思い浮かべ、ほとんど何も考えずにテオフィルの質問に答えた。


 家に帰り、一緒に夕食を取っていた一番上の姉コラリーにその日のテオフィルとの会話を報告する。


「ココお姉様、私今日、テオに「将来どうなりたい?」って聞かれたから、ココお姉様みたいになりたいって答えたの!えらい?」

「ええと、私みたいにってどういうことかしら~?」


 のんびりした一番上の姉は、話し方ものんびりだ。目を細めて聞いてくるコラリーに、ルイーズは胸を張って説明する。


「世界を股にかけてお仕事するってことよ!」


 しかし、自信満々なルイーズの答えを聞いて、コラリーは笑いながら首を傾げた。


「ええ~?それだと、テオフィル殿下に会えなくなるわよ?いいの~?」


 コラリーの言葉に、ルイーズはやっと具体的に自分の語ったことを想像してみた。

 もしルイーズがコラリーのように世界中を飛び回って仕事をした場合……コラリーは一年の大半は国外におり、ここに帰ってくるのは1度か2度だ。

 つまり、国を離れられないテオフィルとも、1年に1、2回しか会えない計算になる。


 ルイーズの判断は早かった。


「……やっぱやめる」

「そうよねえ~」


 楽しそうに笑うコラリーに、唇を尖らせながらそうルイーズが返したことなど当時のテオフィルは知る由もない。



 まさか、自分の軽率な言葉が原因でテオフィルに会えなくなったとは思わなかったルイーズは、多大なショックを受けて机に突っ伏した。

 突然倒れ伏したルイーズを見て、テオフィルは慌てて立ち上がり、声をかける。


「ルル、どうした!?大丈夫か?」

「…………」


 ルイーズは腕の隙間から、そっとテオフィルを盗み見る。

 ルイーズの横に来て、跪いた状態でルイーズを心配するテオフィルは、今日も嫌味なくらい端正な顔立ちをしていて、それがまたなんだか悔しかった。


 ルイーズは伏せたまま、小さな声でテオフィルに言った。


「……テオ、私と、結婚してください」


 ルイーズの言葉に、テオフィルは一瞬目を見張ったあと優しく微笑んで答える。


「決まってるだろ。ルルが嫌だって言っても、絶対ルルを妃にする」


 ルイーズがゆっくり顔を上げると、優しく細められた夜空色の瞳と視線が交錯し、二人は引き寄せられるように唇を重ねた。



「……それで?俺の質問の答えは?」

「……恥ずかしいから、今は内緒。でもずっとテオのそばにいるわ」

「嬉しいよ。いつか聞けるのを楽しみにしている。まだまだ先は長いからな」




ここまでお読みいただき、ありがとうございました!

読んでくださる皆さまのおかげで書ききることができました。

感謝の気持ちでいっぱいです。


もともとの構想はここまでなのでお話は完結ですが、タイトルが「結婚したい」なのに結局結婚はまだできていないことに気付いたので(笑)、後日談として結婚までと、結婚してからも少し書きたいと思っております。


この作品でも、他に書いている作品でも、またご縁がありますことを願っています。

本当にありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[一言] 良く言えば優しい厳しい言い方すればヘタレなテオくんが原因か 終わりよければすべてよし、だけど
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