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二人きりの面会(4)


 二人はお土産にまたたくさんのギコラの実の飴を持たされたあと、果物を使ったスイーツのお店を出た。


 にこにこしながら「また来てくださいね」と言って店の外まで見送りに来てくれたおかみさんに頭を下げ、歩き始める。


 しばらく目的もなくぶらぶら歩いていたが、ふと小物が売られている露店の前で二人は足を止めた。


 その露店では、ペン立てやポーチなどの実用的なものからアクセサリー類まで様々なものが売られており、どの商品も高価ではないものの、デザインが凝っていて目を引くものばかりだった。


 普段高級品にばかり囲まれている二人には、リーズナブルな値段で洗練されているものの方が珍しく、ついつい見入ってしまう。


「テオ、見てこのペン。持つ部分の装飾がとても素敵」

「へえ、細かいデザインだな……」

「それに、持ってみると装飾が滑り止めになってすごく持ちやすいの」

「面白い。実用的でもあるんだな」


 端から順番に商品を眺めていった二人だったが、ルイーズはふと紐で編まれた栞に目を止めた。


 その栞は赤と薄い黄色の紐で編まれていて、先端には小さな花の形の飾りもついている。二本の紐で織りなされた模様は非常に精巧でかわいらしかった。


「わあ、かわいい」


 はずんだ声をあげるルイーズを見て、テオフィルが一瞬何かを考えたあとその栞を手に取る。そしてそれを手早く購入すると、ルイーズに差し出した。


「どうぞ」

「えっ?」


 戸惑いながらも栞を受け取ったルイーズに、テオフィルは優しく笑う。


「今日の思い出に貰ってほしい。形に残るものをルルにあげたことがなかったから」

「ありがとう……」


 嬉しいことを言われているはずなのに、なぜかルイーズは切なさから泣きそうになった。

 それはもしかしたら、そのときのテオフィルの笑顔のせいかもしれなかった。


******


 飲食店が並ぶ通りを抜け、衣料品店が並ぶ通りに差し掛かかると、一気に人通りが増えてきた。

 すれ違う女の人が、テオフィルの顔を見て頬を染める。


 ルイーズはそのことに気付いて改めてテオフィルの顔がとても整っていることを実感したが、当の本人は見られていることに気付いているだろうに、全く意に介していない様子だった。


 ルイーズがなんだかもやもやしながら、また人通りの少ない通りに行こうかしら……と考えていたそのとき、突然後ろから肩を叩かれる。


「やあ、ルル。元気?」


 驚いて振り返ると、そこには騎士団服を着たロアンヌがにこにこ笑って立っていた。

 ロアンヌはルイーズからテオフィルの方に視線をずらし、笑顔はそのままにテオフィルに向かって敬礼する。


「こんにちは、テオフィル殿下。妹がお世話になっております」

「久しぶりだな、ロアンヌ。元気そうで何よりだ。騎士団でもよくやっているようだな」

「勿体なきお言葉、ありがとうございます」


 にこやかに言葉を交わす二人の横から、ルイーズが問いかけた。


「お姉様はお仕事ですか?」

「そう。見回り中。もうすぐ次の担当と交代だけど」

「お疲れ様です」


 この国の騎士団の仕事には町の治安維持も含まれているため、騎士団はこうしてシフトを組んで定期的に町を見回り、何か問題が起これば迅速に対処できるようにしているのだという。


 ねぎらいの言葉を向けてきたルイーズに、ロアンヌは若干にやにやしながら言った。


「ルルの方は?デート?」


 今回の外出はあくまで妃選考という行事の一環であって、デートなんて甘い響きのものではないと考えていたルイーズは、一気に真っ赤になった。


「ち、違います!テオにも失礼でしょう」

「えー、そうなの?失礼でしたか?」


 わざとテオフィルに水を向ける姉は意地悪だ、とルイーズは頬を染めたまま思う。

 しかしテオフィルは何でもないことのように飄々と答えた。


「デートだと思わせないように連れ出したデートだな」

「ちょっと、テオ!」


 テオフィルが姉に乗っかったことでルイーズは二人にからかわれていると感じ、さすがに怒ってみせた。

 ロアンヌはそんな妹を見て、苦笑しながら手をパタパタと振り、言った。


「このへんでやめとこう。うちの妹は堅物だからな」


ロアンヌの言い草に納得がいかなかったが、これ以上からかわれたくないルイーズは反論せずに押し黙る。


ロアンヌはそれをみてさらに笑みを深めた後、突然ばっと視線を後ろに向けた。


「お姉様?どうしました?」


 腰に佩いた剣に手を添え、急に緊迫感を漂わせる姉に、ルイーズはおそるおそる問いかける。

 しばらく鋭い視線であたりを見回していたロアンヌだったが、やがて肩の力を抜いて笑顔を見せた。


「いや、なんでもない。……殿下、少しよろしいですか?」

「ああ」


 ロアンヌはテオフィルを連れ、ルイーズから少し離れる。

 それから二人で何やら小声で話した後、ルイーズのもとに戻ってきた。


「ルルごめん、お待たせ。それじゃあ私はそろそろ行くよ。テオフィル殿下、妹をよろしくお願いします」

「ああ。こっちこそよろしく頼む」

「はっ」


 ロアンヌはテオフィルに敬礼すると、ルイーズににこっと笑いかけてから足早に去って行った。


 ルイーズはテオフィルに今のことを聞いてみようとして口を開きかけ、やめる。

 わざわざルイーズから離れて話をしたということは、おそらく答えてくれないし聞かせたくないことだっただろうからだ。


 何があったのか少し気になるが、いつかわかるだろうと考え気にしないことにし、再びテオフィルと並んで歩き始めた。


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