愛人デスノート編-8
自宅の周りに週刊誌の記者が彷徨いているのを見つけた。
さっそく智香が死んだニュースを聞きつけ、夫に関係あるかどうか探っているのだろう。
その日、事件に進展がなくイライラとしていた文花は記者をとっ捕まえて問い詰めた。
「あなた、週刊誌の記者ね? 何の用?」
近所のゴミ捨て場の前で問い詰めたが、運良く近所の人間はいなかった。もう文花と夫の悪い噂は近所で広がっているので、今更気にしても仕方がないのだが。
週刊誌の記者は、細身で茶髪。貧相な顔つきで小さな目が印象的だった。存在感もなく、この様子ではターゲットを尾行する事などは向いているかもしれない。歳は40歳ぐらいだったが威厳のようなものは全く無いひ弱そうな男だった。
記者は文花に問い詰められても動じなかった。それどころかここがチャンスとばかりに質問もしてきた。
「奥さんさ、あのノートに書き込まれた愛人はみんな死ぬって本当か?」
「どこからそんな噂聞いたのよ」
ため息が出そうになる。
「あの占い師ですよ。佐々木数也。涼子を調べてたら、数也にあたり、数也からはあなたの名前が出る。これは面白い…」
記者は本当に面白そうにニヤニヤしていた。
「数也はあなたを霊視したそうだが、相当な念が強い女だってさ。もうノートに名前を書くだけで呪えるレベルなんだと」
「馬鹿馬鹿しい。ちっとも科学的じゃ無いわね…。そうだ、あなたの名前教えて? ノートに書いてあげるわ!」
そう笑っていうと、記者は一目散に逃げて行った。
文花はウンザリした気持ちになりながら自宅に帰った
そんな念があるなら、とっくにかけてる。例えそんなものがあるとそても結果的に夫は全く不倫をやめていないのだから、意味がない。せっかく一度はミステリを書き始め不倫もやめていたのに、こんな事になっている。
つくづく愛人探偵の打ち切りが嘆かわしい。念とやらが使えるになら、愛人探偵を打ち切った昼出版にかけているだろう。ところが担当編集者の常盤も文芸部署の編集長の紅尾も呑気そうにヘラヘラしている。
他の昼出版の連中も文花の事をメンヘラ地雷女だとヒソヒソ噂する始末。この事実だけでも念とやらはないはずだ。向井までも念がどうこう言っていたが、やっぱりそう言ったものは文花は信じられなかった。
「やっぱり智香を殺した犯人を捕まえて話題を作るわよ!」
改めて決意を固め、疑わしい人物のSNSを再び漁り始めた。
やっぱり呪いなんてないし、愛人ノートはデスノートじゃない。




