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本妻探偵〜愛人デスノート〜  作者: 地野千塩


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容疑者編-1

 夫の愛人である智香が死んでもちっとも嬉しくなかった。


 文花は病院のロビーでため息をつき、側にある自動販売機でコーヒーを買い、一口だけ飲んでため息をついた。


 また夫の愛人が死ぬなんて。死因はわからないが、人を脅すほどの神経が太い女だ。とてもじゃないが自殺に見えなかった。


 死体が発見した現場で、夫は泡を吹いて倒れた。愛人の死体を目撃するのは、初めてではないだろうに。若い女性だったらわかるが、いい歳した中年男がショックで倒れるとは。改めて夫が頭の悪い小心者だと実感した。


 夫の身体はなんともなかったが、ストレスが溜まっているだろうと医者に怒られた。だらしない体型なども注意され、「奥さん、食事はちゃんと用意していますか?」と怒られる始末。


 そこらの主婦より気を使ってますが?


 でも夫は意識高い和食だと馬鹿言って食べやしない。そう言ってやりたかったが、医者も医者でそこそこだらしない体型で、机の上には糖質オフだが添加物たっぷりの栄養ドリンクが置いてあり、ここで言い争っても無駄だと思った。奥歯を噛んで言い返すのは我慢した。


 病室で夫は眠りこんでいたが、「文花ちゃん、文花ちゃん」と唸っている。どうやら自分の悪夢を見ているらしい。この夫の世話をしるのも馬鹿馬鹿しくなり、「意識高い和食のような健康的食事を食べるようお医者様から注意されました。文花」と置き手紙だけ残してさっさと自宅に帰った。


 自宅に帰り、ネットをざっと調べてみたが智香の事はニュースになっていなかった。


 ただ智香のマンションの住民のSNSアカウントが見つかり、警察に事情を聞かれただの、言い争う声を聞いただの智香の事件についてコメントをあげていた。もともと自己物件があるマンションだったのに、智香の死体が見つかるなんて、マンションの住民や所有者には、同情しかない。


 橋本ちゃんや少女小説ファンのSNSや掲示板をみて回ったが、智香の事は明るみになっていないようだ。


 向井に電話をかけた。あの後、向井は警察に事情を聞かれたそうだが、文花は夫がみっともなく倒れてしまい、バタバタと救急車に乗り込む事になってしまった。向井は全く動揺していなかったのに、夫は泡を吹いて倒れている始末。全くとても情け無い。


「そっちの旦那は大丈夫か?」

「大丈夫だったんだじゃないの。もう馬鹿馬鹿しいから無視して病院に置いてきちゃった」

「あはは。なかなか文花さんは厳しいねぇ」


 向井は向井でこの件について全く動揺しておらず、呑気に笑っている。それはそれでどうなのだろうか。文花は頭の悪い小心者の態度の方が人間らしいのかよくわからなくなってくる。


「アレは殺し? 自殺には見えなかったけど」

「だろうな。俺ら、マンションの近くで不審な人物とぶつかったじゃん」

「そういえば」


 男か女か判断がつかない細身で茶髪の人物だ。


「あいつも怪しいな」

「それもそうね。智香が脅してたいたものの誰かが邪魔になって殺したのかしら?」


 となると、間接的とはいえ、あの愛人ノートが殺人の片棒を担いだことになる。智香が勝手にやった事とはいえ、憎い愛人が死んだとはいえ、文花の心にもさすがに罪悪感が宿る。


「警察に任せましょうね」


 あの浅山ミイの時のように事件に巻き込まれるのは懲り懲りだった。


 夫の不倫をされる事の方が辛いとはいえ、人の生死に関わる事は、やはりメンタルが消耗する。楽しい気分にはなれない。


「いや、我々でアイツを殺した犯人を見つけよう」


 向井は文花の気持ちを無視して耳を疑う様な事を言う。


「だって考えてみろよ? 我々の方が智香を殺したい動機を持つものを知っているし、怪しまれずに容疑者に接触もできる」

「そうだけどねぇ」

「智香は、不倫をちっとも反省せず死んだんだ。犯人の事ムカつくだろ」


 それは全くその通りだった。できれば生きて、人の夫を盗み取っている罪悪感を一瞬でも感じてほしかった。不倫女だからと言って闇雲に死んで嬉しいわけじゃない。


「文花さんが犯人をつかまえろ」


 さらに向井はけしかける。


 確かにあのノートで脅される理由があるものが一番怪しい。それにまた事件を解決して話題になれば、ミイの事件の時みたいにに話題になって『愛人探偵』が売れるかもしれない。


「ええ。ちょっとだけ調べてみるわ」


 文花は小さな声でそう言って、電話を切った。

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