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純粋

作者: 八本指




 やあ。私の名前は横井紫音。ちゃんと自己紹介をしたことがなかったかな。今日も22時に会社から帰宅したが、幸い明日は半月ぶりの休みなのだ。仕事で目が冴えちゃって眠れないし、ここには君がいる。どうだろう、私の悩みを聞いてはくれないか。皆も一回は悩んだことがあるだろうよくある悩みだ。私は純粋で、ありのままでいたい。しかし、本当に純粋なままでいいのだろうか、ということだ。



 私は動物が好きだ。自宅では金魚を飼育し、たまにある休みの日には必ず近所の猫カフェか動物園か水族館のどれかに行く。彼らは間違いなく私に癒しを与えてくれる。本当ならもっと動物を飼育してみたいが、当時社会人3年目の私にそれが可能な程の経済的余裕はない。しかし、動物を飼育したい欲求は日に日に増していくばかりだ。



 そんな私を宥める重要なツールがある。それはYouTubeだ。最近では飽和状態にすらなってきている、動物系YouTuberの動画を見ることにより、私はこの欲求を抑えている。猫の動画を始め、一般的なペットとなる動物から南米の方に生息する虫の動画まで、ありとあらゆる動物の動画を視聴している。



 ある日、いつも通り動物の動画を見ている最中で、ハムスターの動画に出会ってしまった。ハムスターといえば、最もポピュラーなペットの一種であり、初期費用や本体の価格も控えめなので、1人暮らしの寂しさから飼い始めることも多いだろう。最初は警戒心剥き出しのハムスターが、次第に心を開き手の上に乗ってくれたら嬉しいことこの上ないはずだ。私の経済事情を鑑みても手の届く範囲であると考え、私はハムスターの飼育を始めた。



 だが、私はハムスターを飼育したことにより、ハムスターの真なる魅力に気づいてしまったのだ。








 ハムスターを飼育し、徐々に生活に慣れ、私の手の上に乗り餌を食べているところまできて、僕は思わず興奮し勃起して叫んでしまった。どうして君はこんなにも愛くるしいのだろうかと。



 まずはそのつぶらな瞳が魅力的だ。ありとあらゆる生物を魅了できると確信しているかのような瞳。たとえ全世界の生物が滅びることになっても、自分だけは例外になるであろうと疑わない、自信に満ち溢れた瞳。そしてそれを一際引き立てているのが、そのサイズである。なにより小さい。手のひらに乗れるくらいに。そのサイズは圧倒的弱者。しかも決して力強く生きていこうとする者の瞳ではない。なのにどうして君は、僕を前にして余裕でいられるの?



 ハムちゃんハムちゃん

 その愛くるしい見た目通りのか弱さ

 どうしてそんなに可愛くこっちに来れるの?

 ただ落ちてるご飯を拾ってるだけなのに

 なんで仰向けになって腹を撫でられているの?

 まさにハートを射抜かれる寸前だというのに

 なぜ落ち着いて手乗りができるの?

 君の全てが私の手の中にあるというのに

 僕はいつでも君に夢中

 君はいつでもペレットに夢中

 そんな君を眺めるのも悪くないけど

 ちゃんと僕にも夢中になってくれないとダメだよ?

 こんなに純粋な愛を捧げているのだから

 


 理性ではわかっているんだ。けど、君が僕の手のひらに乗ってくれるとき、僕は動悸が激しくなり震えが止まらなくなる。この手を握りしめたらどうなっちゃうのかな。少し握りしめてお腹を撫でてみる。その姿が愛くるしい。僕の僕も最高到達点。嗚呼、この手を力一杯握りしめたら、君はどうなっちゃうのかな。僕の純粋なこの想いを、君は受け止めてくれるかい?













 

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