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最愛なる猛毒、致死量の慈愛。  作者: 悦司ぎぐ
【幕間】  月の子
32/92

31  『月灯』




 ────……みなぐちくん、




 真夜中だと思った。

 空気が澄んで、静寂に息が詰まる。瞼をあけても、まだ暗い。

 あらゆる要因が夜を告げる。でも、夢か現実かが定かでない。



「みなぐちくん、」


 仲村が、座って見おろしていた。

 顔がよく見えない。常夜灯を点けていたはずなのに、真っ暗だ。

 やっぱり夢だろうか。こいつだって、布団で寝ていたはずなのに。



「きみは、ほんとうに皆口(みなぐち)くん、なのかな、」



 人影だけの仲村が、ゆっくりと言った。



「産まれたときから、ずっと、みなぐち あさひ、なの?」



 静けさのなか、蚊の鳴くような声がよく響く。表情が確認できないぶん、耳が敏感になっているのかもしれない。



 ……仲村(なかむら)? 曖昧に彼を呼んだ。


「セージ、」

 声が返ってくる。



星史(セージ)、だよ。」

 カーテンの隙間から光が射して、模様をつける。弱い、光だ。



「おれが、産まれたときから、変わらない、なまえ。」



 おもむろにカーテンを開いた。窓いっぱいに光が射し込む。光は青白く、か弱く、おぼろげに彼を照らした。




「きみもそうでしょう? …………(あさひ)くん、」




 ………月あかりだ。






 夜が、声が、彼が、

 夢か現実かが定かで、ない ────────

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