後編
『来たキタきた~』
惑星”エンド―ア”のはるか上空に位置する、”ボール・プレイング・キャット”の最高指令室である。
ネムリネコが、司令官用の椅子に座って眠そうにしている。
『えっ、入港の許可要請っ』
三艦のスタタターデストロイヤーからだ。
「当たり前だにゃっ」
「これは、ダーク帝国軍の宇宙要塞にゃ」
『くっ』
『ううう』
『……撃破命令……』
「えっ」
「こちら砲戦指揮所」
「もう一度命令を」
『破壊しなさいっ』
『スーパレーザー発射あああ』
着艦体制に入りつつあった、三艦が炎に包まれる。
「ギャアアアア」
「IFF(敵味方確認信号)確認頼む、 IFF確認頼む」
「どうしてだ。 最高司令室ううう」
惑星を破壊できる威力だ。
宇宙戦艦では、ひとたまりもなかった。
◆
「侵入者だニャ」
ネムリネコが眠そうに言った。
中央の熱核ジェネレーター制御室が、モニターに映る。
白い柔道着のようなものを着た金髪、青い目の青年と、全身真っ黒の黒騎士。
フードを目深に被った魔術師が見えた。
『私の宇宙要塞よっ。 どう使おうと私の勝手じゃないっ』
ブツブツとつぶやいている。
無抵抗の戦艦を沈めたダメージはでかそうだ。
モニターの中で金髪の青年は、青い雷を付与した剣を持っている。
パクパクパク
「音は出ないのかニャ?」
「残念ながら集音器の無いエリアです」
何かを話しているうちに、青年が怒りのあまり黒騎士に腕を斬った。
「過激だニャ~」
「剣を捨てたニャ~」
青年が剣を捨てた。
冷静になったようだ。
「ありゃニャ~」
魔術師が雷の魔法を、青年に浴びせている。
「ライト二ングボルトは貫通しませんっ」
(今必要な知識じゃないニャ)
「何してるか分かんないニャ」
黒騎士がいきなり、魔術師を熱核炉に叩き込んだ。
『熱核炉に変なものを投げこまないでよっ』
”ナビゲーター”が今気づいたらしい。
◆
いつの間にか、ダーク皇帝が倒されていた。
惑星”エンド―ア”の地上では、モヒカンのクマたちが、サバト、もとい宴会を開いていた。
ドンドコドンドコ
「ヒャッハー」
「ヒャッハー」
ネムリネコも帰ってきている。
『ひどいわ……』
『ここまでくると虐めよ……』
「何かあったのか?」
アレクたちが、ネムリネコに聞く。
「……色々ニャ……」
「えーと、よくわからないが、元気出せよ」
「何か調子がくるうじゃない」
『レべルは上がったの』
「よかったじゃねえか」
◆
「×字ウイングが、一機突っ込んできます」
「迎撃、迎撃だっ」
「タタイファイターを全機出せっ」
ダーク皇帝も召喚主もいない最高指令室は、ハチの巣をつついたようになった。
”ボール・プレイング・キャット”の表面の溝の中を、×字ウイングが猛スピードで飛んでいる。
金髪の青年が乗っていた。
「フォフォースをつかエー」
「!」
照準器をオフにする。
通気口に、プロトン魚雷を叩き込んだ。
「レッド、5任務成功っ」
惑星”エンド―ア”の青空に浮かんでいた、”ボール・プレイング・キャット”が突然、爆発四散する。
『何でええええ』
そりゃあ、ダーク帝国の象徴みたいなものだからな。
「だ、大丈夫ニャッ」
「アイテムボックスにしまう手間が省けたニャッ」
しゃがみ込んで泣き始めた”ナビゲーター”を、ネムリネコとアレクたちは必死に慰めた。