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東海ミリタリー列伝  作者: 北方宗一
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第一回 新興勢力の強さ

東海地方におけるミリタリーショップの勢力図が塗り替わるかもしれない。

現在、東海地方では全国的なサバイバルゲームブームの中でフィールドが増えつつある。

そんな中一気に勢力を拡大したミリタリーショップがある。


フェローズ


余りに異色な始まりと、そのあまりの衝撃は今後この地域のミリタリーショップ勢力図に影響を与えていくのではなかろうか。


そもそも私がこの店の存在を知ったのは岐阜、美濃地方のミリタリーショップを開拓しようと岐阜市内にある「ビッグマン」という模型店に行った時だった。

この時ビッグマンの常連と思われる客と偶然話した際に「あそこを知らないのはモグリ」と言われ、ならば行ってみようと自転車をこいで行ってみたのである。

しかし、初見で面食らった。明らかに店構えがミリタリーショップとは似ても似つかないものだったのである。


皆さん、幹線道路を自動車で走っていたりすると店舗上の大きな屋上看板に「県下最大級」「売り場面積最大」という謳い文句や「本・DVD」という販売品目をド派手に印刷した『○○書店』という店を見かけることがあると思う。

この店舗はまさにそれだったのである。

こういう店舗の中身は、その実際として大抵、岩波文庫もワンピースもおいておらず、ヌード写真やポルノビデオを売っているアダルトグッズ店である。

ここなのか?疑ったものの、立地も店舗名もぴったりそのもの。

18禁の意味が違う。

だが、入らねばわからない。

(どうせ18歳以上なのだ。違ったらスク水モノかブルマモノのいかがわしいDVDを一本買って帰ろう。)

そう考えて自動ドアのある側に回ってみた。

「古いDVD回収します」というポストが鎮座し、こっびこびな水着巨乳美女のポスターとともに大手エアガンメーカー東京マルイの新製品ポスターが貼ってある。

(どういうことだ。これは本気度そこそこか?)

そう思い自動ドアをくぐるとあまりに異様な光景が広がっていた。

目の前にはガンケースの棚。右手にもガンケース。左手にBDUなど被服類。異様に種類がある。

中に入ってみるとアメリカの大手ホルスターメーカーであるブラックホークのSERPA CQCシリーズが所狭しと吊るされ、あふれんばかりのカスタムパーツがあり、整然とAR15向けハンドガードのレプリカが陳列され、国内外大手エアガンメーカーの銃が置かれている。

インターネットでは在庫が見当たらないものもある。

チェストリグがダッチワイフに着せられていたりというのはこの店の由来を強く感じさせる。

(恐ろしいところだ)

まさにそれは魔窟である。品ぞろえが『異様に』良い。そう。『異様』なのだ。名古屋の有名ミリタリーショップでもそう見かけないものがそこにある。ジャンルによっては東京近辺にあるミリタリーショップを超えるのではないだろうか。どこでこれだけのものを調達したのだろうか。

余りにも衝撃的であった。

今やどのミリタリーショップにもあるマルチフィットホルスター。これもなんとサファリランドの実物が売っているのである、まっとうな値段で。

あまりにも衝撃的であったが、気を取り直し、ホルスターを買った。


以降、この店に通うようになった。

後に知ったが、ショップの質・量ともにハイレベルな関東地方のミリタリーマニアがこの店に行った際、「東京にもこのレベルのは限られる」といったとか。


今やこのフェローズは名古屋郊外、尾張旭市にミリタリー専門店を一つ作り二店舗体制になっている。この名古屋店は各務原以上の床面積でラインナップもさらに強化され、「東海地方で最大級」とミリタリー系のネットメディアで取り上げられている。実際、他のショップを明らかに凌駕するのだ。


調べるとフェローズはもともと各務原で正にアダルトDVDの販売店として開店したようだ。

その後少なくとも2013年にはエアガンを取り扱い、徐々にエアガン関連商品を拡充。今や二階建て店舗のうち一階の8割以上をミリタリーコーナーとして運営している。

尾張旭にある名古屋店はアダルトDVD販売店の隣にあった自転車販売店が撤退したのを機に建物を手に入れミリタリーショップにしたようである。共同駐車場をはさんで同じ会社の違う業態が店を並べているのである。

実は各務原の店舗は航空自衛隊岐阜基地の目と鼻の先。官舎から自転車で悠々行ける。更に岐阜基地の隣には小規模な陸自部隊の分駐屯地も所在する。はじめはポルノを求める自衛官向けに最大限合理化した立地だったのだろうが、近場にサバイバルゲームフィールドもあるらしく、まさしくミリタリーショップになるべくしてなった立地といえる。

そもそもミリタリー商品は18禁のものも少なくない。ポルノ商品と顧客管理が同じにならざるを得ない点で考えれば合理的といえる。

そしてミリタリー商品は18禁に限らないし、ポルノに興味がない人間にはできれば別店舗のほうが嬉しい。そうすれば顧客を広く呼べるし、商品を拡充すれば子供にも来てもらえる。これが名古屋の独立店舗の登場した理由の一つであろう。売り場がそこまでないというのもあるのだろうが。

更に言えば近年、物理メディアのポルノはネットポルノの出現と普及で斜陽化しつつある。一宮のとんでもない立地(なんと市の中心にほど近いところにある大手GMSショッピングモールのすぐ隣!!)にある他社は今やトレーディングカード販売業に鞍替えしている。そういう中、フェローズは各務原で培ったノウハウでミリタリーショップの貧弱な東海地方でミリタリーショップとしての活路を見出したのであろう。ポルノグラフにおいて実態あるものはまず難しいが、ミリタリーなら実店舗の強みは大きいのだ。


さて、名古屋郊外に店を出した(というよりも『出せた』)理由のもう一つとして考えられるのが名古屋周辺のミリタリーショップがかなり分散してるということである。

名古屋の繁華街は分散しているが、ミリタリーショップは大須に所在するジョーシンのスーパーキッズランド四階以外繁華街にないのだ。しかもまるで距離をとりたがってるかの如くバラバラ。このような状況なら集約地を探さずに済むし、賃料や店舗規模で妥協せずに済む。物流も既存のモノを拡大すればいい。


そもそも、ミリタリーを扱う店舗で東海地方で複数の店舗を持つ企業はフェローズ以外には模型店チェーンであるタムタムくらいしかない。フェローズはもうすでに東海地方第二位のミリタリーショップになったのである。


フェローズ躍進と前後して東海地方ではミリタリー関連の商品ラインナップ増強の波が来ている。

要因として、フェローズ以外に、東海地方のGMS大手のユニーがドン・キホーテ運営法人のパン・パシフィック・インターナショナルホールディングスに買収され一部ユニー運営店舗(アピタ、ピアゴ)がドン・キホーテとのコラボ店舗であるMEGAドン・キホーテUNYに業態転換した結果、東京マルイとクラウンのエアガンと消耗品が住宅地に近いそれらの店舗で取り扱いを開始したのもあるだろう。店舗によっては既存のミリタリーショップより安く大型商品を売っている場合もある。

名古屋か岐阜に行くか、町の個人の玩具店の片隅にあるのを探すかだったエアガン流通が一気に変貌したのだ。


ミリタリーショップ生き残りに必要になるのはカスタムパーツやチェストリグ、ホルスターなどの装備品になっていくだろう。ワークマンのコーディネート提案もある中、業界の拡大がどこまで続くか。今後の動向に目が離せない。

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