第3話 悪意の空気
「という事があったんだが・・・」
「はははっ!君はホントに不幸だよねぇ!静かを好むこの男が、嵐吹き荒れる夏の日差しに照らされちゃねぇ!ぷぷっ・・・待ってお腹痛い!!」
というのは清水澄子。
オタバレを恐れていた彼女を偶然コミケで遭遇するという事件以来、こういった話は彼女とする。
「そうはいっても俺はいい迷惑だよ・・・」
「んで誰だったの?」
「それが分からないからここに来てるんでしょ?」
ここは、休憩室。
プール備え付けで、自動販売機とタオル、イスが置いてあるだけの部屋。
普段は利用する人間がいないので私たちの溜まり場となっている。
今は授業の合間、二時限目と三時限目の間なので急がなければならない。
「とりあえず何かわかったら教えてほしい」
「わかったよ~、アタシだったらど~する?」
「どうもしない、それじゃ」
「即答かぁ~、手ごわいなぁ」
そんなことをつぶやいていたことを私が知ることは無い。
キラキラ光るぅ~、夜空の星よ~♪
いや小学生?いや違うんです、これが。
合法ロリを謳う変態ヴァイオリニスト、坂月紅葉だ。
小学生のようでヴァイオリンと共に歌う姿は目を魅かれる。
残念少女なのだが・・・・
「おう来たな!とうとう私を犯しに来たな童貞め」
「五月蠅いです、キモイです、てかなんで童貞って知ってるんです?」
「そりゃぁ、合法ロリの私は目をみれば、童貞かプレイボーイかくらいの区別は出来るぞ?」
「気色の悪い特技・・・」
「で?私に義理チョコをねだりに来たのか?残念だがチロルチョコしかないぞ?」
「あ、ください。・・・別にチョコをねだりに来たわけじゃないですよ?」
「それじゃ・・・・・ほー、そんなことがあったのか」
「エスパーですか、あなたは」
「ん、チョコが机に入ってて宛名もなく誰からかもわからない、ってとこだな」
「ドンピシャすぎる・・・・ストーカー?」
「いやちげぇよ」
とんでもないエスパーな一面もあるのだ。
収穫ゼロ。
恐ろしく気になるが残念なことに心当たりがない。
あぁぁぁぁ!
平和を望む。
そんなことを考えながら廊下を歩くとキャー!という女子特有と甲高い悲鳴が聞こえた。
「(モブ男1)なんだ~なんだぁ~?」
「(モブ男2)なんかやってるぞ?」
「(ギャル子1)あ!あれヤンキ~ヤローじゃん」
「(ギャル子2)やばそーだしあっち行こぉ」
(なにがあった?)
いやな予感がする。
それも多分今の悲鳴は・・・
(ドンピシャだ)
麻衣が上級生のヤンキーに絡まれている。
それもみな気色の悪い笑みを浮かべて・・・
「なぁ、麻衣ちゃん。いいことしない?気持ちいいよ?ね?金もあるよ?」
「「(放送事故の模範的下ネタ)」」
・・・吐き気がする。
麻衣は震えているが周りは誰も助けない。
まぁ、正確には助けられないだけなのだが。
「早くこい!じゃなきゃ乱暴にさせてもらうぜ」
・・・よし、許さん。
「おい、そこの下衆」
「んだよ?今いいところ・・・って、お前あれじゃん。麻衣ちゃんの幼馴染気取りの。なに?勇者様やっちゃうの?いやなら殴って来いよ」
「俺はどうでもいい、早くあっちに行け。」
「何凄んじゃって?怖かねぇんだよお前如き」
「ならそのザコをボコしてから麻衣を手に入れな、雑魚」
「おいおい、世の中にはなぁ!いちゃいけねぇことってもんがあるんだよぉ!てめぇ!死んで償え」
「勝手にしろ」
「それじゃぁそうさせてもらうぜ!」
顔面に向かった大振りのストレート。
顔を少し捩り、ダメージを最小限にする。
「・・・」
「あぁ?怖くてちびっちまったか?」
「遅いな」
「あぁ?」
殴られたら殴り返していいのは法律上可能だ。
「殴るってのはこうするんだよ」
「・・・!!」
瞬時に相手の懐に滑り込み、そのスピードを拳に乗せる。
拳は勢いを付け、スクリューのような回転も掛ける。
すると・・・・
ガッシャァァァァァン!!
となる。
「まだやるか?」
「っち、今日はこれぐらいにしてやる」
「俺はいつでもいいぞ。が、麻衣に手ぇ出したら、次は容赦しない」
これは生活指導案件だな、生徒会なのに・・・
更新速度が果てしなく遅いのはお気になさらないでください