鈴蘭の君と白銀の君
「なろう」には鈴蘭がなかったので、作者の自己満足で書いてみた
オイラにゃ表現できる能力がなかったよ……(バタッ
ど う し て こ う な っ た
私立来栖学園―――
この学園では容姿が非常に優れていたり、何か偉大な結果を残したりすると二つ名が付くことがある。
これまでには、学園入学と同時にモデルデビューして、今では一流モデルになった〝ガーベラの君〟や、単純な知識量なら日本で一番と自負し、クイズ大会で全国優勝し続ける〝知識人〟、その強靭な肉体を傷つけるものはなしと謳われ、超一流のSPとして働く〝守護の楯〟など、学園を卒業した後も各業界の一線で活躍している人たちが多く選出されてきた。
そんな毎年男女問わず数人は選ばれ、今では人数が4桁を超えた「二つ名」の中でも、歴代最高の知名度を誇る人がいる。
その人は学業優秀、スポーツ万能で名家の箱入り、噂ではその才能を見込まれ、もうすでに何社かの企業を経営しているのだとか。それでいて同級生には男女の区別なく気さくで、上級生には礼儀正しく、一つ一つの所作すら気品に満ち溢れる。嘘か誠か、入学してから半年もたたずに男女問わずの告白回数が3桁を超えたという、老若男女に支持されるその名は―――
「見て、『鈴蘭の君』よ!」
「ほんとだ!今日もきれいだな~」
「今日は『騎士』が告白するって言ってたけど……やっぱりだめだったか」
「当たり前でしょ!あの方は誰とも付き合ったりしない孤高にして高貴なお方なのよ!ああ、あのおみ足に踏まれながら蔑まれたいわ……」
「ちょ、おま、え?そんなキャラだっけ?」
『鈴蘭の君』
艶やかな黒髪にぱっちりおめめ。
磨きぬいた玉のような肌にぷっくらとして真っ赤な唇。
わーかわいい(棒)
学業成績は常に主席で全国模試でも一桁だという。
運動のほうもたいていのスポーツで即戦力の実力があるらしい。
わーすっごーい!(獣並感)
旧華族を起源に持つ世界的大企業の子供でこの年になるまで存在がほとんど漏れなかった箱入り。
にもかかわらず、その優れた能力からすでに経営指南をしているんだとか。
一企業の運営がそんなに簡単にできてたまるかっ(#^ω^)
そんな完璧美少女がオレンジ色に染まり歩いている。
時間帯としては放課後であろうか。夕陽が後光のように差し込み、神々しさを増している。
なんでそんなに投げやりなのかって?
その完璧超人の「鈴蘭の君」が自分で、あまつさえ―――
「はぁ、『鈴蘭の君』はいつ見ても綺麗だわ」
「ホントにねぇ~。どうやったらあんなに綺麗な『女性』になれるんだか」
『女』だって誤解されてるからだよ!
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高校受験を控えたとある日、九条院家が長男である僕、九条院凪は父である九条院家当主、九条院海里に呼び出された。おそらく高校選びについてだろうと予想して父の執務室に入ると、そこには父だけでなく母の瑠璃までそろってゲ○ドウポーズをしていた。
「よく来たな、凪」
「父さん、話って何?」
「うむ、ほかでもないお前の進路についてだが……私立来栖学園に『女性』として通え」
「よかったわね凪ちゃん。特待生として入学が決定してるから試験なんてないわよ」
時間が止まった気がした。
「―――は?今なんとおっしゃいました?」
「なに、聞き取れなかったの?」
「もう一度だけ言うぞ、凪。私立来栖学園に『女』として通え。これは九条院家当主としての命令だ」
―――意味が分からない。
それが初めに浮かんだ感情だった。
「なぜ受験校が勝手に、それも親の一存で決められているのですか?そもそも、なぜ『男』であるはずの僕が『女装』をしなければならないのですか?」
「何を言っている?『女装』ではない。『女』として通えと言っているのだ」
「そうよ、凪ちゃん。その男っぽいしゃべり方もちゃんと女性のものにしないと」
「(絶句)」
父と母が頑固なのはこの15年で嫌というほど理解している私はここにきて悟った。
―――やべぇ、こいつらガチでやらせる気だ。
こうなるとテコでも動かないのが私の父と母である。
「あ、安心していいわよ。来栖の理事は全部コッチ側だし法律とかも何とかなるように手配しているから」
「だから安心して逝ってこい」
「行ってこいの字が違うような気がしますが……仕方ない。こうなったら抵抗は無意味なので、本当に仕方なくその条件で通いましょう。ただ一つだけ教えてもらっても?」
「よかろう。と言っても大体予想はつく。なぜ『女』なのか、だろう」
「そうです。そこが父さんと母さんの母校であることは知っていますが、なぜ私が『女装』を?」
「だから『女』になれ、と言っておるだろうに……まあいい。お前を『女』にする理由は……」
「理由は……」
「これが家訓だからだ!」
「嘘つけぇ!なんだその家訓は、絶対今作っただろ!」
「うん♪」
「凪ちゃんには女性用の服のほうが似合うのよ!だから大人になるまでは、女物を着せるって決めていたのに……学ランなんて着るからいけないのよ!」
「だからお前に強制的に女物の服を着せるために、この計画を立てたのだ」
「ふざけんなぁ!今すぐやめさせろぉ!」
「駄目よ。この計画には少なくないお金と、多くの人が関わっているんだから」
「さて、黒服さんたち、凪をマンションに運んでください」
「絶対嫌だぁ!うわっ、何をするっ、やめろっ。てめえら絶対ゆるさねえからなぁ!」
「体調に気を付けろよ~」
「毎日電話するのよ~」
そんなこんなでひと悶着ありつつも、学園近くの専用寮に投げ込まれ、僕は私立来栖学園に通うこととなったのである。
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「はぁ、なんで僕がこんなことをしなきゃいけないんだ……」
「仕方ないですよ。御当主様の命令なのですから。それよりも、今日もきちんと『女性』であったんですか?如月凪さん?」
ドキドキハラハラ波乱万丈だった一日を終え、寮(三十階建て)の自室(最上階)にて私は、選別として親二人につけられたメイド(監視ともいう)の月見里朝顔に紅茶を入れてもらっていた。
「そうだよ、きちんと『女』になってきたよ。なるべく『男』だとばれる危険性があるようなことは避けてるし、告白してきた『騎士』とかいう奴だってちゃんとフッてきた。あと、偽名の『如月』って呼ぶな」
「それはよかった。ただなぜ『騎士』さんと付き合わなかったのですか?」
「誰が好き好んで男と付き合うか!こんなナリしてても僕は男だ!」
「凪様、その発言は性差別につながる危険性がございます。撤回してください」
そう言うと朝顔は能面のような表情のない顔で迫ってきた。
この朝顔というメイド、容姿端麗で家事万能という万能スペックであるにも関わらず、ものすごく怖い時があるのだ。たいていの場合は私が間違っている時なので、すぐに謝るのが正解であることをここ半年で私は学んだ。そうしなきゃコイツは家事を一切しなくなるから……。
「そっ、そうだな。今のは僕が悪かった。謝罪しよう」
「まったく。せっかくスズ×ナイ本が売れるかと思ったのに……弁償してくださいね!」
「てめぇ、それが本音か?」
「この学園内のみですが、純愛凌辱百合にその他とエトセトラ、占めて17作品。ここひと月での売り上げでも平均年収を超えそうなのですよ?お分かりですか?」
確かに最近、クラスの中でも婦女子と呼ばれている人たちから、やたらと視線を向けられるとは思っていたが……まさかこいつの同人誌が原因だったとは……
「なんで勝手に同人誌作ってやがる!それにしても売り上げ多いなオイ」
「私の夢はこの同人誌のみの売り上げで生活することですから。もっとネタ集めに奔走しなければ……」
「はぁ……いったいいつまでこんなことを続けなければいけないんだ……」
「卒業するまでですよ。卒業したら自由に行動できるんですから」
「せめて自分だけの時間が欲しい」
「もしかしてですが、思春期の妄想こじらせてます?まぁ、凪様も健全な男子。年頃の男児特有のパッションを発散したいと?」
「ちげぇよ……気を抜ける場所と時間が欲しいってことだよ」
そりゃあ僕も思春期男子ですし?そういうことに興味がないわけではないけれども?この生活に疲れ切った今は、落ち着いてゆっくり過ごせるようになりたいよ……
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そんなこんな過ごしていた数日後、朝のHRにて―――
「え~今日は私にとってめんどくさいお知らせがある。」
なんて発言をしたのは我らがクラス担任である咲良八重先生である。
この人は本校OGで、在学当時は〝桜の君〟なんて呼ばれていたらしい。確かに艶やかな黒髪をポニーテールに結んでいて、いつもクールに振る舞う様子はいかにも武士の娘といった感じで納得できるけれども、このヒトが成し遂げた記録は可憐な容姿からは考えられないほど荒々しいものであり、性格だって桜なんかに比喩できるものではない。まぁここで話すことでもないんだけど……
重要なのはこのヒトが親戚であるということ。つまりは私の秘密も知っているということである。
そんな人が「めんどくさい」って言うんだから多分私がらみのことなんだろう。なんかやらかしたっけ?なんて思っていると、
「今日からこのクラスに転校生がやってくることになった」
「せんせ~なんでそれがめんどくさいんですか~?」
クラスの中のお調子者ポジションである男子が発言した。
先生は心底面倒な顔をして、
「お前らにとってはクラスメイトが増えるだけかもしれんが、私にとっては手続きやら何やかんやで大変なの。そのせいで今日は寝不足なの。わかった?それじゃあさっさとこんな茶番は終わらせたいから入ってきて」
「はい」
転校生の紹介を茶番って……それにしてもか細い声がしたな。こんな時期に転校してくるなんて、何か事情があったのかな?
―――その少女は天使でなければ悪魔であろう。
そう思えるほどに、その子は美しかった。
白銀の髪に深紅の瞳、触れれば折れてしまいそうな身体つき。やや低めの伸長に、この世のものとは思えないほど整った顔立ちとも相まって、造形の神が渾身の力で作り出した人形かと思ってしまう。
「巫霞と申します。昔から身体が弱く、今まで入院していました。できれば仲良くしてくださると幸いです」
「えー、用意とかがあるから一限は自習な。霞ちゃんへの質問でもするか?霞ちゃんはそれでいい?」
「ええ、私も早くクラスメイトの皆さんと仲良くなりたいですから」
「巫は日光がダメみたいだから……廊下側だな。ちょうどいいや、如月。机を取りに行くの手伝え」
「なんで私なんですか……」
「いいからいいから。それにおまえにも関係ある話をしようと思ってな。
なんでか知らないけど先生に指名された。しかも「関係ある話」だって?一体何の話だろう?
そんな疑問を抱えつつも僕は先生についていくのだった。
「あれが凪様なんですね……これからが楽しみです♪」
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「で、なんですか話って」
日の当たる廊下にて、机を運びながら、隣にいる先生に尋ねる。
「まぁ、アイツ―――巫はだいぶ厄介だ。近づかないほうがいい。おまえよりもヤバいモン抱えてやがる。下手をすればおまえの社会的地位がなくなる位にな」
やけに深刻そうな顔で言ってくる先生。
そんなヤバいのならば使いたくない手だけど―――
「実家の力を使っても?」
「そんな状況になったらご当主様はおまえを見捨てる……いいや、嬉々として相手側につくだろうな」
さらっととんでもないことをいう先生。
「それは脅しですか?」
「いーや、純粋な忠告だよ。かわいい弟分がいなくなるのは寂しいからな。」
「またそうやって誤魔化す」
「いいから教室戻れ!」
そう言うと先生は職員室の方へと歩いて行ってしまった。
あの桜の君がそこまで警戒する巫の秘密っていったい何だろう?近づかないように言われたけれども気になるし……
そんなことを考えながら僕は教室に戻ったのだった。
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「じゃあ霞ちゃんは好きなタイプってどんな人なの?」
「ん~、優しくて誠実な人ですかね」
「あ、あのっ、好きな食べ物とか教えていただけませんか?」
「食べ物の好み……ですか。食べられるだけでもありがたいですので、いただけるだけでも感謝します」
机だけでなく次の授業で使うものなんかを押し付けられて、教室に帰るともう一限も終わっていた。
そして案の定、巫がクラスメイトに囲まれていた。
「なんというか壮観だねぇ。こうしていると入学初日を思い出すよ」
「おまえにとってはそうかもしれないけど、同じ経験をした僕にとっては同情の気持ちが大きいよ」
「同情ねぇ……下手な同情は身を滅ぼすぜ」
そう言ってニヤついているのが一応友人である月丘湊。こいつに関しては、腐れ縁の幼馴染であり、幼少期からお互いのことを知っているため当然僕の秘密を知っている。事あるごとにそれをネタにして煽ってくる割に、秘密や約束は守るっていうよくわからない奴だ。
ちなみにコイツはいいところのご令嬢であるくせに、なぜか乱暴な言葉遣いをするし、男よりも女にモテるイケメンである。なのになぜ『お姉さま』と呼ばれないのか?僕は同学年ならまだしも上級生の女子生徒にまで呼ばれるのに。
「でも、あんな風に囲まれたら、抜け出すのは本当に大変なんだよ」
「そんなにグダグダしてるんだったら早く助けに行けばいいのに」
「先生に近づくなって忠告された。なんかとてつもなくヤバいんだってさ」
「なにそれ。曖昧だねぇ」
「本当だよ。僕だってよく分からないまま追い返されたんだから」
なんて軽口をたたきあっていると、
キーンコーンカーンコーン とチャイムの音が響いた。
「なんだ~もう休み時間終わりかよ~」
「もっと霞ちゃんと話していたいのに~」
「でも次の授業あの鈴木だぜ?早く席に就けよ」
「ほう……〝あの〟とはどの鈴木だね?」
「げっ、その声は!」
「少し君とはOHANASHIが必要なようですね」
「鈴木先生!勘弁してくださいよ……」
そんなやり取りを経て現れたのは鈴木先生。通称『鬼の鈴木』。チャイムが鳴り始まるまでに着席していないと遅刻扱いをするとても厳しい数学教師だ。ただその代わり、授業自体はわかりやすいので僕はそんなに嫌いじゃない。
「君は放課後数学準備室に来るように。では授業を始めましょう。日直さん、号令を」
「はい。起立、礼、着席」
「「「「「「お願いします」」」」」
「はい、今日は教科書の148ページから進めます」
―――ジーーー。
そんな風に授業が始まると、こっちを見つめる視線に気が付いた。
いったい誰だろう?そんな風に思い視線のもとをたどると、ニコッと笑みを浮かべる巫にたどり着いた。
―――いったい何なんだ……やりづらい……
そんな風に思いつつも時間は過ぎて行くのだった。
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「ふ~、今日も終わった終わった」
「今日は部活?」
「ごめんね~。約束してたけど急な用事が入っちゃって」
(ふぅ、今日も無事に乗り切ったぞ……にしてもあの視線は何だったんだろう?)
放課後になり、クラスメイトと同じく帰り支度を始めた凪のもとに、厄介な人物がやってきた。
「如月さん、ちょっといい?」
巫霞である。
朝見た時に感じたたおやかさとは打って変わって、凪に話しかけている今は餓えた肉食獣のような眼光である。
「ひゃ、ひゃい!何でしょうか?」
対する凪は返事からわかるようにテンパりまくっていた。朝、八重先生に脅しのような忠告をされ、授業中も休み時間もずっと見つめられていた相手だ。動揺するのも仕方ないことである。
「ひゃいだなんて、可愛い。今から時間ある?お互いにとって大事な話があるの」
「お互いにとって……ですか?」
「うん、とっても大事な話。聞いてくれる?」
この時の凪の心情はまさに蛇に睨まれた蛙。冷や汗ダラダラ心臓バクバクである。
(どうする……相手はあの先生が〝ヤバい〟と表現した相手。そんなのに逆らってもいい事なんて無いだろうし……もし秘密がばれたとしたらどういう対応をするべき?あーもうわかんないよ。どうにでもなれ~)
「はい……」
「そう。じゃあカフェでお話ししましょう?ついてきて」
そう言うと巫は僕の手を取りどんどん進んでゆく。
(先生……忠告は無駄になったようです……)
僕はは諦めの境地でそれについていった。
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巫に連れられた僕は、カフェ(チェーン店じゃなく、おしゃれで雰囲気のあるお店だ)で飲み物を待ちながら、巫の顔色を窺っていた。
(うぅっ、何を話されるんだろう……胃が痛くなってきた……)
そうこうしているうちに飲み物が来たのでこれをきっかけにして、巫にこんなところまで連れてきた真意を聞くことにした。
「それで……話って何ですか?」
「そうね……単刀直入にいうと、一目惚れしたの」
「はぁ、誰にですか?」
「凪さん、あなたよ」
「え”っ」
「巫霞はあなた如月凪に一目惚れしました。なので付き合ってください!」
「えぇっ!?」
予想外に普通の用事だったことに驚きつつ凪は安堵した。
(よかった!ばれてなかった!でもそうするといつもどうり断ることになるな……うぅ、毎度のことだけど罪悪感がぁ)
「巫さん……悪いんだけどその話はお受けすることはできないんです……今はまだ誰ともお付き合いするだとかそういうことは全然考えていなくて……」
「そう……ですよね……であった初日にこんなこと言われても迷惑ですよね……」
「巫さん、友達から始めない?」
「始める?ということはまだチャンスがあると?」
「うーん、そういうことじゃないんだけど……せっかく声をかけてもらったんだからこの縁を大切にしようと思っての提案なんだけど、どう?」
「ぜひ!ぜひお友達にならせてください!」
「じゃあお互いに名前で呼びあおうか、霞」
「はい!凪さん!」
こうして僕には新しく巫霞という友人ができた。秘密がばれるかと思ったけどばれなかったから結果オーライだね!
そのあとしばらくおしゃべりをしていたらいつの間にか結構な時間になっていた。
「もういい時間だし、そろそろ帰ろうか」
「そうですね!凪さんも気を付けて!」
「うん。霞もね」
そうやって別れたけれど、僕は大事なことを忘れていたんだ。
あいつはヤバいってことに……
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「ふふっ、今日の凪様はとっても良かったなぁ。動揺したり、カッコつけたり、安堵したり……」
凪様と別れたあと、まっすぐ家に帰ったボクは自室で今日の喜びを噛み締めていた。
「嗚呼、どんな凪様も素敵だけど、今日の凪様は今までで一番素敵だったなぁ。」
「っと、幸せの余韻に浸ってる場合じゃないや。はやく凪様のお声を聴かなくちゃ」
「はやくボクのものにならないかなぁ」
そう言って巫霞という名の少女に見える少年は写真だらけの部屋を出て行った……
別名:薔薇で作った百合の造花
数日後に大幅改稿やキャラ紹介などを載せる可能性があります