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処刑された賢者はリッチに転生して侵略戦争を始める  作者: 結城 からく
第七章

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第216話 賢者は技術発展を懸念する

 ユゥラの活躍は、砦内を着実に強化していく。

 一見すると分からないが、時間経過と共に効果を発揮し始めていた。

 魔王軍の兵士は動きが各段に良くなり、展開された防御魔術は精度が向上している。

 結果、より堅牢な守りが構築された。

 外壁も蔦によって補強されており、下手な魔術では破壊が困難だった。


 こういった要素も相まって、砦の奪還を目指す現地の軍は苦戦している。

 後方の部隊に至っては、既に撤退に近い動きを見せていた。

 アンデッドと化した仲間を倒しながら下がっている。


 そのせいで取り残された最前列の兵士達は悲惨だ。

 背後にアンデッドが控えており、進むべき外壁の前にもアンデッドが溢れている。

 見事に挟まれた状態だった。


 彼らは半狂乱になって侵攻していく。

 徐々に数を減らしながらも、強引に前方のアンデッドを討伐していた。

 魔術による火炎で焼き払いながら前進する。


 その時、銃声が鳴り響いた。

 最前列の兵士が、血を飛ばしながら倒れる。


 見れば外壁の上に魔王軍が居座っていた。

 配下達の大半が鉄砲を構えている。

 中央で弓を構えるのはヘンリーだ。


「よく来たな! 歓迎してやるよォ!」


 ヘンリーが嬉々として矢を放つ。

 杖を構えた魔術師が、首を射抜かれて即死した。


 続けざまに魔王軍は一斉攻撃を開始する。

 銃声が連続し、そのたびに兵士達が撃ち殺された。

 純白の雪原に赤い染みが四散していく。


 配下達の使う武器は、この一年で開発された新型の鉄砲だった。

 ジョン・ドゥの記憶を参考に製造している。

 彼の故郷では、突撃銃や自動小銃と呼ばれていたらしい。


 弾を目にも留まらぬ速さで発射するため、既存の鉄砲とは比べ物にならない殲滅力を秘めている。

 多量の補給が必要な点を解決すれば、無類の強さを誇るだろう。


 これがルシアナの言っていた新兵器である。

 性能自体は既に知っており、研究所で試用も済ませた。

 しかし、こうして実戦に投入される様を見ていると印象が変わってくる。


 相手の軍からの反撃は、魔王軍の魔術師が防御していた。

 隣のユゥラが、砦の外の魔力濃度を操作して、魔術行使が困難な状態に陥れる。

 仲間が円滑に戦うための妨害工作だった。

 ユゥラはそういった精密操作を要する術に長けているようだ。


 魔王軍は散発的に一斉射撃を浴びせる。

 孤立した軍は、瞬く間に壊滅していった。

 残る兵士達もアンデッドの餌食となっていく。


(戦争の形が変わってしまうな……)


 現状、魔王領が技術を独占しているので心配はない。

 しかしいずれ模倣する国が出てくるだろう。

 長い年月の中で、類似兵器を独自に開発する勢力もあるに違いない。


 過度な技術発展は害悪になりかねなかった。

 ジョン・ドゥとの戦いで学んだことである。


 魔王軍で採用する兵器についても取捨選択をすべきかもしれない。

 あまりに強力な兵器は、一般の兵士の手に渡らないように工夫してもらう。

 基本的には研究所に隔離して、いざという場面に絞って使用すれば無駄がない。


 思考が逸れた間に、孤立した前線の兵士は全滅していた。

 後方に残った軍は本格的に撤退を開始している。

 彼らは牽制の魔術を砦に飛ばしながら逃亡を試みていた。


 魔王軍は追撃せず、小さくなる彼らを見守る。

 皆殺しが目的ではないからだ。

 ほどほどに被害を出して、魔王軍に敵意を集束させればそれでいい。

 今回、強力無比な兵器も披露できた。

 彼らはその恐ろしさを身を以て体験した。

 すぐに言い広めてくれるに違いない。


 魔王軍は歓声を上げる。

 理想的な勝利だった。

 他の大陸でも、魔王軍の活動は順調に進んでいた。

 このまま侵略の基盤を固めつつ、各国の反応を見ながら勢力を強めていく。


 ただし、決して世界そのものは滅ぼさない。

 かと言って、安心もさせない。

 これまで通りに戦争を続けていく。

 歪んだ平和を拡散するのだ。

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