表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
処刑された賢者はリッチに転生して侵略戦争を始める  作者: 結城 からく
第六章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

201/288

第201話 賢者は偽りの神のもとへ赴く

 転移先は、連合軍の本拠地である大陸だった。

 海岸に設立された基地の上空にて、私は眼下の光景を見下ろす。


 連合軍の兵士は、右往左往していた。

 あちこちで剣戟の交わる音と、魔術の炸裂音が鳴り響いている。

 彼らが戦っているのは魔王軍だ。

 先行していたルシアナの部隊である。


 ルシアナの部隊は、戦場を見事に攪乱していた。

 連合軍の戦線が崩れて、指揮系統が機能していない。

 本来は追加戦力の投入と物資支援を任された基地が、完全に麻痺している。

 役割を果たせないどころか、次々と捕縛或いは殺害される一方であった。


 こちらにも外世界の獣が人型で潜伏しているようだが、魔王軍は適切に対処している。

 私が伝授した術で効率よく倒していた。

 危険な状況では、アンデッドの部隊を最前線に送り込んで、生者が犠牲にならない立ち回りを意識している。

 日頃からの訓練が役に立っているようだった。


(上出来だな。あとは仕上げといったところか)


 私は彼らの後押しをするため、禁呪を行使する。

 海と岸を隔てるように巨大な障壁を生み出すと、彼方まで構築していった。

 これで基地から海上の連合軍に援護が向かえないようになった。

 反対に海上の連合軍が、大陸に戻ることもできない。

 ここは手筈通りである。


 海の戦場にはヘンリー、ドルダ、ディエラの三名がいる。

 彼らなら進退窮まった連合軍を易々と撃破できるだろう。

 獣が紛れていようと関係ない。

 そのまま海上の守備に徹してもらうことができる。


 続けて私は別の禁呪を発動した。

 虚空から幾本もの光の矢が投射される。

 それぞれが招かれるように飛ぶと、地上にいた獣達を貫いた。


 矢の刺さった獣は私に反撃を試みるも、動けない。

 体内の瘴気が高速分解されて、機能不全に陥っているのだ。

 そこにアンデッドが群がっていく。

 衝動のままに獣達を押し倒すと、食欲のままに喰い殺した。

 特殊能力を受けて数体が破壊されていたが、微々たる被害だろう。


 私はあちこちに散乱する連合軍の死体に権能を作用させる。

 死体はアンデッドとして起き上がり、かつての仲間に襲いかかっていった。

 そこから被害が拡大して、さらに配下が増えていく。


 この基地は、そう時間もかからずに無力化できるだろう。

 既に大部分が魔王軍の手に落ちている。

 もはや手出しするまでもない。


 私はここからさらに侵攻するつもりだ。

 途中の地点を飛ばして、偽りの神へと一気に迫る。

 魔王領から相当離れることになるが、不安はなかった。


 魔王領及び大陸の防衛は、グロム、ローガン、ユゥラの三名に命じてある。

 忍び込んだ獣の駆除や各地の混乱の鎮圧も頼んでいた。

 彼らならば、難なくこなせるはずだ。


 ただし、ローガンのみ城に残って司令塔になってもらっている。

 これも大切な役割だ。

 油断すると暴走しがちなグロムとユゥラだが、ローガンなら上手く手綱を握ってくれるだろう。

 いざという時は大精霊もいるため、私が不在でも問題ない。

 彼らがいるからこそ、心置きなく行動できるのだ。


「ルシアナ、聞こえるか」


『はーい、何か用?』


 念話で話しかけると、地上のルシアナが手を振ってきた。

 遠目にも喜んでいるのが分かる。


「このまま基地を占拠してくれ。連合軍は奪還を試みるだろうが、なんとか封殺してほしい。難しければ撤退しても構わない」


『大丈夫よ、任せて。楽勝よ』


 ルシアナは不敵に応じた。

 なんとも頼もしい反応である。

 彼女は、根拠なく断言する性格ではない。

 この場を支配できると確信したからこその返答だった。


(そろそろ決戦の時だ)


 私が偽りの神を屠れば、魔王の悪名はいよいよ全世界に広まるだろう。

 まだ遠い先の予定だったが、こればかりはどうしようもない。

 偽りの神を始めとする獣の陣営が、すべての罪を私に押し付けたのが原因である。

 ここまで来た以上、それを利用するまでだ。

 ちょうどいい機会なので、存分に知らしめようと思う。


 私は感知魔術を使うと、偽りの神の正確な居場所を暴く。

 反応が秘匿されていたが、念入りに探ればすぐに特定できた。

 どうやら連合軍に加入する一国の領土にいるらしい。

 ちょうどそこは、首都にあたる場所だった。


『魔王サマ、気を付けてね』


「分かっている。すぐに戻る」


『いってらっしゃい。吉報を待ってるわ』


 ルシアナに別れを告げて、私は偽りの神のもとへ向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ