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第199話 賢者は先代魔王を見守る

 連合軍の船は、次々と海に落下していく。

 そして水飛沫を上げて転覆した。

 或いは別の船と衝突して被害を拡大する。


 一瞬でかなりの被害が出たが、連合軍の戦力は膨大だ。

 全体の割合で考えると、微々たるものに過ぎない。

 残る船はディエラに向けて砲撃を開始する。


「クハハ、吾に抗ってみせよ!」


 空中にいるディエラは、高笑いと共に武器を構える。

 持参したと思しき見覚えのない槍だ。

 それで振るって迫る砲弾を次々と切断していく。


 ディエラは何の術も使っていない。

 純粋な技量による防御だった。

 色々と常軌を逸した光景である。


 自らの能力で鎧を生成したディエラは、流星のような速度で海面に突撃し、一隻の船に着弾した。

 何もかもを突き破るような衝撃音が轟く。

 不運な船は真っ二つに割れて沈没した。


 ディエラは、そこから光の鎖を別の船に突き刺して立体的に移動する。

 途中で何本かの鎖が空中に伸びて、飛行船を穿って墜落させた。

 兵士達の悲鳴を響かせながら、あえなく海面で爆発する。

 その頃には、別の船でディエラによる犠牲者が出ていた。


(凄まじい戦いぶりだな……)


 私は素直に感心する。

 やはり先代魔王の名は伊達ではない。

 連合軍の中には人型の獣が潜伏しており、さりげなくディエラを倒そうとしていた。

 しかし、一般の兵士と同じような扱いで殺害されている。

 デイェラの強さに対抗できていないのだ。


 ディエラの使う光の鎖は、聖女の世界の意思から与えられた神聖魔術だ。

 通常の聖魔術より強力無比で、私を殺すために発現された能力である。

 すなわちアンデッド及び瘴気を滅する力を内包していた。


 瘴気を生きる糧とする外世界の獣にとって、これはあまりにも致命的だろう。

 光の鎖が直撃すれば即死する。

 そもそも回避が困難で、下手な防御は通用しない。


 仮に躱せたとしても、今度は槍の刺突が待っていた。

 ディエラは槍の達人だ。

 あの人の剣技と正面から打ち合えるほどの技量を有している。

 つまり接近戦においても無敵ということだ。


 対抗手段を持たない獣達は、次々と討伐されていった。

 私は彼らの死骸を密かに回収しては、死者の谷へと転送していく。


 やることがなくなってしまった魔王軍は、離れた地点から静観していた。

 機を見て追撃してもらうが、今はディエラの独壇場だ。

 好きにさせておくのが一番だろう。


 そうして観戦すること暫し。

 やがて彼女から念話越しに声が届いた。


『のう、ドワイトよ』


「何だ」


『今からとっておきを使う。魔王軍の防衛は任せたぞ』


「それは一体どういう――」


 私が詳しいことを訊く前に、ディエラは動き出した。

 彼女は高々と跳び上がると、無事な飛行船に張り付く。

 その上部で槍を掲げた。


 槍が奇妙な魔力の動きを見せる。

 何らかの規則性を以て、光が明滅し始めた。

 すると、槍から数百本にも及ぶ半透明の管が伸び上がる。

 管は蠢きながら、ディエラの周囲へと展開して何かを形成した。


 それは山のような大きさの人体骨格だ。

 半透明の人体骨格は、ディエラを包み込んだ状態で落下し、腰まで海面に浸かる形で着水する。

 荒れ狂う波が生まれて、連合軍の船が呑まれて沈んだ。

 魔王軍に迫る分は、魔術で防御しておく。


 人体骨格は飛行船を鷲掴みにする。

 浴びせられる砲撃をものともせずに振りかぶると、それを近場の船に向かって叩き付けた。

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