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002 戸惑いながらも

本日二話目


 勇者召喚。魔王退治に異世界の王国が行った非道な行いに巻き込まれた中年オヤジ。残念な事に巻き込まれた程度のオヤジに出来る事は少なかった。結果的に目的である魔王退治に参加する事とは成らず、巻き込まれたオヤジこと工藤英司は王国から支援金を貰い町へ下る事と成った。


「先ずは仕事探しと寝床の確保か……王都の暮らしは高そうだよな。何処か手頃な田舎暮らしでも探した方が便利かもね」


 人が多ければ仕事先も多い。伴って物価も高ければ治安も悪いのは古今東西時空を超えても同じである。工藤は城を出て真っ先に今夜の寝床を探す事んしたが、何処の宿屋も一泊70$の銅貨70枚だった。


「素泊まり・風呂無し・共同トイレそれで銅貨70枚は高くない!?食事は洋食オンリーだし。はぁ~何気に幸先不安に感じるよ」


 一本2$の串焼きを2本食べ歩きしながら工藤は部屋探しを続ける。散々歩き回って辿り着いたのは最初に値段を尋ねた宿だった。


「よぉ!お帰り」


 受付のオヤジが嫌味交じりにニヤリと笑う。苦虫紙潰した顔で『どうも』と返す工藤は三泊頼むと金を払うと部屋は二階の奥だと案内された。


「飯は一食5百円宿代は7千円。一日8500円か貰った金が1千万だから……何もしなくても3年は暮らせる計算だけど、あくまで何も買わなかったらの計算だから正味二年から二年半ってトコか。貴志君達が其れまでに魔王を倒せば問題ないケド流石に其れまで遊んで暮らすには不安は残るな……仕事を探さなきゃな」


 ハズレ召喚と言っても工藤にも時空旅行の恩恵は有った。彼がそれにまだ、気付いてないだけだ。魔物が存在するこの世界では、レベルとステータスと呼ばれる己の能力が数値化した物が存在する。戦闘を繰り返し経験しレベルを上げステータスの強化を獲る事に成るのだが、この育成が早い事と上げ幅が大きい事が召喚された者の強みの一つだ。


「愛子ちゃんが教えてくれたゲーム感覚で育成するのが先なのかな……」


 オヤジの工藤でもゲーム経験者だ。若い頃にはゲーセン通いに新作ゲームを買う為に深夜寒空の中人込みに混じって並んだ事も有る。電話回線で世界初家庭用ゲーム機でのオンラインゲームをした事も有った。それでも彼が躊躇するのはコレがゲームでは無く現実なんだと理解したからだ。


「やっぱ仕事より先に身体強化と魔法の取得だな!」


 そう言って彼は知らない世界での一日を不安を抱きながら過ごす事とした。



 魔法を得るには、弟子に付く。金払って『巻物』を買うの二つだ。前者は幼い頃に師と仰ぐ者の下で修業を重ね長い年月と経験を重ねる事で強い魔法を得るらし。欠点は属性と言うか方向性が狭い。後者は金に物を言わせた方法だが、即効性と幅広い魔法が得られるのだが、此方は威力が弱いらしく使い物に成るには長い経験が必要らしいく、どちらも一長一短。当然工藤に残された道は金に物を言わせる道しか無くその当てを探す他無かった。


 昨日と同じ屋台で朝飯代わりの串焼きを買いながら、店主に話を聞いた『巻物』それが探し求める店だ。割と何処にでも在るらしく簡単に知り得た事はご愛敬。


「御免下さい。此方で魔法の巻物を売ってると聞いたのですが」


 一軒の古びた店を訪れた。店先には落ちそうな小さな看板が、どうにかぶら下がってる感じがして心許無い。それでも工藤にとっては魔法は身を護る大事な道具として店を訪れ無い訳にも行かず、勇気を振り絞って店の中へと入って行ったのだ。


「御免下さ「あぁ~すまなかったね」良かったお留守かと思いましたよ」

「奥で作業中だったからね。それでご用件は?」

「巻物の購入をと思ってるんですが、何分初めてなモノで、先ずは種類と価格を聞かせて頂けませんか?」

「珍しい物言いだね。この辺の者じゃ誰でも知ってそうなものだけど……お前さん不思議な格好をしてらっしゃるね!?」


 店の奥から出て来たのは工藤より年配の女性である。所謂、婆ちゃんだ。路地の角でタバコ屋を営みながら猫と一緒に世間話をしてそうな感じの老婆である。


「そうですか?何処にでも売ってる服だと聞いたんですがね」


 工藤が着てる服は、麻生地のシャツに革製の長ズボンそれと革製のブーツだ。城を出る前に王宮からポロシャツとチノパンでは目立ちますからと支給されたものだ。


「嫌々、ワシが言ってるのは服では無くお主の身体から滲み出る魔力の事じゃよ」


 このセリフには工藤が驚いた。王宮には何人もの魔術師と出ったけど、誰一人そんな事を言った者は居ない。勇者達に気を取られ工藤の事など誰も気に留めなかったのだろう。それでもこの老婆の言葉によって工藤は己でも知らない事に気付く切っ掛けと成った。


「それは、どう言った感じで違うのでしょうか?」

「さぁ~ワタシも初めて見るからね何とも言えんが……決して悪いもんじゃないと思うが、大きさが計れんのぉ……さて、用件は何じゃったかの?」

「えっと巻物の種類と価格。それと幾つか購入したいんです」

「おぉ~そうじゃった!そうじゃった!で!?何が知りたいんじゃ?」

「……取敢えず、医療関係の巻物の種類と価格。後は防御用のお薦めは?」

「医療は『神聖魔法・初級』のみじゃ価格は金貨1枚。防御は『土属性・初級』か『風属性・初級』じゃろうな。コッチは銀貨5枚じゃよ」

「初級と言う事は他に中級とか上級があるんですか?」

「魔法としては有るが巻物としては存在せんな」


 巻物とは解説書であり参考書なのだ。初級とは入門編である。つまり、中級や上級と言った専門的な事には専門用語を理解し理を知った者でなければ到底理解できるものでは無い。また文字で表すには膨大な量と成る上に別に辞書が必要で、ワザワザそんな事までして巻物を買う人物は存在しないのだ。


 高いと聞かされていた工藤では在ったが、最高でも1千$金貨一枚と聞かされた彼は、幾つかの巻物を購入する事にした。


「此処まで売れたのは初めてじゃわい。オマケにコレを付けてやろう」


 巻物屋の婆ちゃんにそう言われて工藤が貰ったのは『生活魔法・初級』だった。コレにより彼は僅かばかりの灯と飲み水と体を清める事と収納袋を得る事が出来た。


「うぉ~便利じゃんコレ!おばあさん有り難う御座います」

「何コッチこそ助かったよ。初級を覚えきったら、また顔を出しな」


 買った巻物は全部で5つ。早速収納袋が役に立った。


「魔法はコレで良いとして残りは防犯用に武器と防具でも買うか」


 巻物屋を出た工藤は更なる買い物の為、町を彷徨う事にした。求める物は軽めの防護服と護身用の武器だ。

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