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015 始動


 ひょんな事から知り合った孤児の子供達。工藤とマギーは彼等を更生させようと動き出す。当然工藤に慈善活動の考えは無い。コレは持ちつ持たれつの関係だ。

ロミ達に教育を学ばせる教師役も確保できた。後はアイツらに綺麗で安全な寝床を用意する事だが、家の裏に小屋と言うか寮が建つには、まだ時間が掛かる。其の為、工藤は次の協力先を探す事にした。


「大部屋って有ります?」

「人数は?」

「子供五人。序に大き目のテーブルと椅子が六つあると良いんだけど」

「子供の大きさ次第だけど、ウチの娘『アイリーン』と同じ位なら十分使えるのが二部屋有りますよ」


 アイリーンとは、宿屋ミンシュクで給仕を手伝う愛娘である。工藤達も何度も会って居る娘だ。ロミと背格好や年齢も近いだろうと工藤は思う。


「あぁ~うん。そんな子供が男三人と女二人だ」

「それなら1部屋で問題ないですね。後は椅子とテーブルは何に使うんです?」

「子供達に計算と文字を教える予定なんだ」

「旦那って金持ちだとは思ってたけど、道楽ですね。一体何考えてんだか」

「金持ちでも無いし道楽でも無いがな」

「う~ん……どうだろう。その勉強にアイリーンもタダで加えてくれるなら、昼の休憩時間に食堂を使うってのはどうです?場所代チャラで良いですよ」


 アイリーンは仕事を手伝っているお蔭で計算と文字は理解はしているが、その分同年代の友達が少ないのだ。女将による親心だろう。


「習うのは孤児達だぞ良いのか?」

「その孤児を更生させる為ですよね?其れなら問題ないですよ」

「判った。但し、時間がどうなるか教える先生役に確認してからだ」

「あいよ」

「旦那達が出て行って淋しかったけど逆に賑やかに成りますね」


 人探しは中断させ、代わりにロミ達の世話を頼んだ。条件として泊まりに来る前に身体を綺麗にして来る事、みすぼらしい服は着せない事。余り騒がしいくしない事を突き付けられ、代わりに三食飯付きで全部で5千$金貨五枚で女将は引き受けると確約してくれた。


「と言う事なんだけど、エヴァの方は昼過ぎに時間は取れるかな?」

「その時間帯はギルドも暇な時ですが毎日は厳しく成りますね」


 工藤は女将の許可を取り付けた後、冒険者ギルドで先生役を引き受けるエヴァと話し合って居た。ネックとなる時間帯について二人はどうしたものかと悩んで居ると一人の男が彼等の元へ近づいて来た。


「何の相談だ?」

「ギルド長!」


 体格の良い三十代の男を指してエヴァは姿勢を正す。工藤も頭を下げると長である男は彼等の話に加わり出した。


「君が近頃評判の『殲滅』君か。それでうちの職員を使って今度は無いを企んで居るんだ?」


 殲滅と二つ名が在る事に驚くもエヴァの許可を取って工藤は自分達の計画を話す事にした。


「ほぉ~孤児達をね……で、その裏には何が隠されてるんだ?」

「隠すも何もないよ。勉強を学んだら商売をさせる。初めは俺の下で働かせるが自立できる様に成れば、独立させるつもりだ。まぁ~事業は色々と増やす予定だから何時までも囲う訳には行かないって事だ」

「……雇用拡大。孤児の減少・奴隷売買の衰退か良い事尽くしの様に見えるな」

「子供に明るい未来が無いと国は亡ぶからな。幼児虐待など俺には考えられない」

「本当にそう思って行動するなら協力しよう。但し時々視察はさせて貰うぞ」

「ギルド長!」

「エヴァを貸し出してくれるなら構わない。俺に後ろめたさは無いからね」


 他の職員の手前エヴァ任せとは逝かず、他に数人の職員を交代で派遣する事に成った。ギルド公認の職員のバイトが認められた瞬間だ。工藤の計画が成功すれば、ロミ達ばかりか多くの孤児が救える可能性が出て来る。工藤が思っていた以上に大きくて長期的な活動に成るかは、ロミ達の働き次第だ


 ミンシュクの女将とギルドの話が付いてから二日後、ロミ達を綺麗に身支度を整えさせ、宿へ連れて行く。


「コッチが宿の娘のアイリーンだ。それで勉強を教えてくれる人達だ。ホラ、お前達も挨拶しな」

「チョッと!勉強って何だよ!?」

「勉強は勉強だ。お前達の家が完成するまでこの宿に泊まりこみ。昼間はこの食堂で算数と文字を学ぶんだ」

「何だよ。俺達も一緒に狩りに行くんじゃないのか!?」

「バ~カ!そんな危険な真似を子供のお前等にさせられるか。お前達には俺が考えてる商売を手伝ってもらう。成功したら独り立ちも考えてる。だから大人しく勉強しろ」

「そんな!……」

「良いかよく聞け!大人に成っても悪い奴に騙される奴は居る。特に物の売り買いでお釣りや値段を誤魔化せられたり稼いだ金を取られる事も有るんだ。最低でも四則計算と文字さえ知って居れば、その危険は大きく下がるんだ。どうしても商売が向かないって奴は狩りの手解きも教えても良いが、先ずは勉強だ」

「判ったよ……人並みの暮らしのマネをさせて貰ってる身だエイジさんの言う事には従うよ」

「あぁ~そうしろ。学んで身に付けて独り立ち出来そうになったら俺に歯向え。それが子供の義務であり責任だ。其れまで俺が面倒を見るソレが俺の責任と義務だ」


 教師役はエヴァの他に『キリエ』『シーダ』と言う名の女性職員が参加する。二人ともエヴァの先輩格に当たる職員らしい。アイリーンが急遽生徒に加わる事も承諾して貰い、ロミ達も渋々ながら従うと約束した。今日は顔見せ、勉強は明日からと言う事にして、控えでだが宴をする事にした。


「何故?エイジ様はロミ達と一緒に住もうとはしないのですか?」

「ん?ロミ達は従業員だ。独り立ちさせるが仲間であって家族じゃないからな」

「厳しいのですね」

「偽物の家族愛の方が酷だと思うけどな」


 ロミ達に必要以上の感情を持たない。工藤はそう決めていた。所詮、自分の行いが偽善だと彼は思って居るからだ。貴志達に戦いを押し付けた片方でホームドラマを演じるなど烏滸がましい。それでも彼等がこの世界を救う為に頑張るなら、自分は違う方法でこの世界を変えよう。それが工藤の考えだ。





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