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第六夜 13人の会合

オレ達、境界ランプの持ち主は、精霊や使い魔と離れて別室の着座形式の部屋に招かれた。

長いテーブルに燭台が置かれ人数分のコップやフォークナイフのセットが置かれている。テーブルの中央には果物の盛り合わせ、銀の食器、食事が運ばれていく。


「ここから先は、境界ランプの持ち主だけが入ることが許されます。精霊や使い魔、お付きのみなさんは立食形式の方にお戻りください」

ムキムキのマッチョな男は実は精霊だったようで肩に乗っていた猫の方が特別室に入ってきた。さらには、老人が被っていた魔法の帽子だけが宙に浮いて特別室に入ってきたり、境界ランプの持ち主……というのは人外が多いということだろうか?


人数(?)は全員で12人、精霊王ガイアスを含めると13人だ。

イエスキリストの最後の晩餐を思い出させる人数構成だ。この13人という不吉な人数でわざわざ晩餐会をやらなくても……とオレは思ったが、もしかしたらキリストの最後の晩餐のように裏切り者が1人いるとでも言いたいのだろうか?


この境界ランプの持ち主達は魔導の玉座を目指すライバルなわけだから裏切りも何も…と思ったがオレが今日の夕方見た夢ではランプの持ち主達の中に1人裏切り者がいたような気がする。


オレが決められた席に着席すると、シャルロットが精霊王ガイアスに質問した。

「あの、私達は精霊王ジンの晩餐会に呼ばれたハズですのに、ジン王はどうされたのですか?」

「……それはこれからお話しします」

そういえばそうだ……精霊王の名前はジン……この精霊王の名前はガイアス……名前が違うな、何故?


「私がお話しする前に変身魔術を解いていただきたい。一度は皆本当の姿を見せるのが礼儀だと思わないかね?」


精霊王ガイアスがランプの持ち主達メンバーを見て言った。猫や帽子の姿がランプの持ち主なハズないし、やはり変身魔術か……

猫や帽子、老人などの姿から皆、変身魔術を解いていく……


現れたのはオレと同世代からちょっと上くらいの若者達だった……さらに驚いたことに帽子に化けていたのは10歳くらいの少年だった。シャルロットが最年少というわけではなさそうだ。


「では、メンバーの本当の姿が分かったところで自己紹介を始めよう。まずは私から……。私の名はガイアス、精霊王ジンの息子で今日から新しい精霊王を任された。父は精霊界を取り締まる裏方に専念したいと言ってな。今回の魔導王の玉座を巡る競争から私が取り仕切る。よろしく」


そういうことか、新しい魔導王を決める前に精霊王が代替わりしたというわけだ。今回の魔導王の競争は魔法界の次世代王を決めるものというわけなようだ。


「では1人目から……初代境界ランプの持ち主……響木千夜(ひびきせんや)君」

いきなり1番か……いや1番の方が気が楽なのかもしれないな……。


響木千夜(ひびきせんや)です。日本から来ました。職業は高校生で考古学者を目指しています。骨董品を扱う店でバイトしていたところ錬金魔導師のリー老師からこの魔法の境界ランプを譲り受けました。ランプの精には世界を見てみたいと願い事を告げて、この競争に加わることになりました。よろしくお願いします」

まばらながらパチパチと拍手をしてくれた。魔導師とは程遠い自己紹介だったな。大丈夫だったのか?


「へ〜、千夜君って骨董品に詳しいんだ? 新しい境界ランプの作り手になる可能性も秘めているね。そういう子をエントリーさせるの分かってたらもっと魔導アイテムについて勉強しておくべきだったわ」


胸の大きく開いた赤いパーティードレスを着た女性がオレに話しかけてきた。確か猫に変身していた人だ。銀髪の髪を巻き髪にし、メイクもバッチリで色っぽい。特に小さなホクロのある口元がセクシーである。

「君、私語は慎みなさい! 自己紹介を先にしないとダメだよ」

精霊王に叱られるも全く気にする様子がない。猫のような人だ。


「ふふ……自己紹介ね。2番目の境界ランプの持ち主……つまり私の番よね。私の名前はダリア……魔導名は秘密。イギリス出身、アメリカ育ち。こう見えても普段は言語学の大学院生よ。ご先祖様は有名な魔法使いだったらしくてウチにたくさんあった魔導書の魔導文字を研究しているうちに魔法使いになっちゃったの。先祖返りってヤツ? ランプは家に代々伝わるものだけど誰も使いこなせなくて私が受け継いだわ。私の夢は世界中の本を読んでみること……これってすごい夢よね。玉座にはあんまり興味ないけど研究の役に立てばいいな、と思ってる。よろしくね!」


パチパチとまたまばらに拍手が起こる……玉座に興味のなさそうな人が2人続いた……みんなやる気はあるのだろうか? という空気である。


次は例の帽子に化けていた少年が立ち上がった。茶色い髪をサラサラさせて利発そうではある。


「次は3番目のランプの持ち主……ボクの番だね。名前はユミル、10歳、北欧出身。本名は分からないし魔導名もない。神話の神さまから拝借した名前をハンドルネームにしてるんだ。インターネットで魔法使いのサイト運営者の弟子になって魔法は覚えたんだ。僕みたいなのをネット魔導師っていうんだって! ランプはサイト運営者が1番成績の良かったボクにくれたんだよ。夢は世界のネット王になること! よろしく!」


パチパチまばらにみんな拍手するも1人立ち上がって意見し始めた。

「インターネット? お前何か悪い魔導師に騙されたんじゃないのか? ! 」

インテリっぽいメガネの金髪男性が興奮気味に言った。周りの人が金髪メガネを抑えて少年を庇っている。

魔法使いになるのにインターネット教育か……時代は進んでいるな。


「まあまあ、これからは私たち魔導師もITやらインターネットやらそういうものに強くならないといかんのだよ。私も今日からブログや動画配信を始めようと思ってね……“新精霊王ガイアスのまったり魔法生活”どうだろう?」

「ランキングサイトに登録するといいらしいよ」

「うむ、検討しよう」

さっそくユミル少年にアドバイスをもらうガイアス王……


「まったく……本当に玉座に座る気のヤツはいるのか? まあオレからするとライバル不在みたいで楽だけどな」

バンドマン風の外見の魔導師が率直な感想を述べた。

場の空気が凍りつく……

確かにここまでの3人は魔導王とは程遠い雰囲気だ。


「私語は慎みなさい!」

あんたが言うなよ……そう言いたい気持ちをみんなガイアス王に持ったと思うが自己紹介は続くのだった。


裏切り者が出ないといいけど……



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