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千夜の一夜な境界ランプ  作者: 星井ゆの花(星里有乃)


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第五十夜 「そのランプは玉座に誘う」

「ハザード王が亡くなった?」


境界国にいるリー店長から伝えられた情報は、意外な情報だった。


精霊王ジンが影武者を務めていたハザード王が今日亡くなっていたというのだ。


亡くなった……と言ってもまるで魂を喰いつくされたかのごとく身体中の魔力が吸われ尽くされていたそうだ。


おそらく犯人は悪魔ゴエティア達だと考えられる。


場所は宮殿の広間。

使用人がハザード王に夕食の案内をしに向かったところ奇妙な亡くなり方をしていたのだという。


ハザード王はこの1週間ほど自らをソロモン王と名乗るようになり、様子がおかしかったらしい。


ソロモン王といえば悪魔ゴエティア達がしきりに復活を求めていた有名な古代の王である。


もし、万が一ハザード王にソロモン王の魂が宿っていたとして何故殺されてしまったのだろう?


さらに宮廷魔導師が数人悪魔ゴエティア達に襲われて亡くなっている。


この1週間ほど境界国で原因不明の病が流行していたが本物の病なのか呪いや悪魔の仕業なのか判断がつかなかった。


だが今回ははっきりと悪魔ゴエティア達が姿を現して狂ったように

「王の命令だ! 魔導師を殺せ」

と叫びながら襲ってくるそうだ。


王とは一体誰だろう?

ソロモン王だとしたら何故子孫のハザード王まで死んでいるんだ?


オレがいろいろと考えて黙り込んでいると、電話の向こうでリー店長がオレにこう語った。


「いいかい、千夜くん。これは僕個人の長年の魔導師経験から導き出した推論だから話半分に聞いて欲しいんだけど……」


リー店長から語られる内容はあまりにも単純かつ恐ろしいものだった。


悪魔というのは契約や命令には忠実なのだという。

そしてそれには善悪の基準は関係ないそうだ。


悪魔ゴエティア達が

「王の命令だ! 魔導師を殺せ」

と言っているのが仮に王様からの命令だとすると悪魔達はソロモン王に命じられて魔導師を殺していると考えられる。


そして何故ソロモン王だと自称するハザード王のことまで殺したかというとハザード王自身が魔導師だからである。


例えば、噂通りハザード王にソロモン王の魂が宿り、ハザード王の中身がソロモン王だとしても魔導師を殺すように命令された限りは例え命令した本人であっても悪魔は魂を奪うのだという。


『悪魔にとって契約者の命令は絶対』


例えそれが契約者本人の命を奪うものだとしてもためらうことなく殺すのだという。

よくても1度確認をするくらいだそうだ。


「優秀な魔導師でも久しぶりに悪魔と契約するとなるとミスをすることがあるからね……。もしかしたら古代の時代は魔導師を殺せと命令しても悪魔達はソロモン王のことは襲わなかったのかもしれない。仮にハザード王の肉体を使って生活していたらそれは悪魔から見てもすでにソロモン王ではなくハザード王なんだろうね。ハザード王は悪魔ゴエティア達から見るとただの魔導師に過ぎな……っと危ない!」


電話のむこうで何か起きているようだ。

そういえばリー店長も錬金魔導師という肩書きがあったような気がする。

リー店長の命も危ないのでは?


「リー店長、大丈夫ですか? オレ、ランプで迎えに行きます! すぐに……」


するとリー店長は


「それがねえ、無理そうなんだよ千夜君。もう悪魔ゴエティア達に囲まれていて身動きが取れないんだ。だから、キミにはそのまま魔導王の玉座に向かって欲しいんだ。僕の作った境界ランプは元々この世と魔導界の境界線にある玉座にワープするために作られたものだ。ミニドラゴンのルルを連れて行けばなんとかなる……かもね……」


そう言ってリー店長との会話は途中で切れてしまった。

電話が一切つながらない……。


「リー店長……どうしたら……」


ミニドラゴンのルルがオレの肩に乗ってこう呟いた。


「ボク……玉座の場所わかるような気がする……キュ……」


様子を見ていたカラス大尉がオレにいきさつを聞いてくる。


オレは境界国で次々と魔導師が悪魔達に殺されているということと、魔導王の玉座にランプで向かうように言われたことを話した。


「……境界ランプの移動魔法だけで魔導国に向かうのはとても魔力を消耗する……キミとルルだけでは帰ってこれなくなる可能性が……他の境界ランプの持ち主も一緒の方が……」


魔導王の首飾りを解放した影響で皆、意識が戻らない。


精霊セラ、シャルロット、ランディ、みんな人形になってしまったかのように眠っている。


化石を長時間持っていたカラス大尉とクーロン博士は意識を保っているが境界ランプの持ち主でもなければランプの精霊でもないため魔導王の玉座に向かうことができないそうだ。


「大丈夫です。ルルが一緒だから……ルル、この首飾り似合うでしょう? まるで魔導王になったみたいだ……」


「キュー! マスター千夜、どこまでもお供しますキュ!」


ミニドラゴンのルルも覚悟を決めたようだ。


「じゃあ……行ってきます」


オレは自分と関わってきたすべての人に独り言のようにつぶやいて境界ランプに命じた。


「境界ランプよ……その魔力を持って我と使い魔ドラゴンルルを魔導王の玉座に誘い給え!」


ランプが光り、オレとルルはこの世と魔導国の境目に存在するという魔導王の玉座にワープした。



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