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千夜の一夜な境界ランプ  作者: 星井ゆの花(星里有乃)


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第二十夜 偽りの国王

「ハザード王は若い娘を夜な夜な集めて何かの儀式をしているらしい」


境界国のハザード王にまつわる黒い噂のひとつである。


その夜も奴隷市場から連れてこられた若い娘が宮殿の地下室に連れて行かれた。帰ってくる事はないだろう。


奴隷の娘はハーレムか何かの一員になると聞かされているようで、緊張した表情で使用人達に連れられて宮殿の長い回廊をうつむき加減で歩いていた。


娘が地下室に到着すると重厚な扉の前には結界を作る呪符が貼られていた。

使用人は魔術の心得があるらしく何か異国の呪文を唱えて扉を開けた。


扉の向こうの部屋は案外シンプルで魔方陣が描かれた上質の絨毯が敷かれていてその向こうには天蓋付きの大きなベッドが置いてある。


サイドテーブルには上等な果実。


壁には絵画が掛けられているが決して主張の激しいものではなく、花や風景を描いたものばかり。


(なんだ……案外普通なのね)


娘は安心したような、もっとすごい秘密があると思っていたのかガッカリしたのか、少し拍子抜けしたような表情だった。


すると噂のハザード王がやってきた。

浅黒い肌に端正な顔立ち、威風堂々とした姿は国王に相応しい。


「お目にかかれて光栄です陛下」


娘は(ひざまず)き、頭を下げた。


「顔を上げて見せてごらん」


ハザード王が娘の顔を覗き込む。

やがて国王の瞳に何か人間とは違うものである事を感じ取ったが、気づいた時にはすでに遅く娘は意識を失った。


正確には身体は生きているものの魂が抜けてしまったのだ。


抜け殻となった娘の身体は使用人達が地下室にある別の秘密室に持って行き、抜き取られた魂は小瓶に詰められ蓋をされ閉じ込められた。


青白い炎が小瓶の中でユラユラ揺れている。


出して欲しいと懇願しているようだ。

ハザード王は小瓶をさらに奥にある儀式台の前に置いた。


「小瓶が増えたな……瓶の中の魂の炎が揺らめいて綺麗だ」


青い炎、赤い炎、緑色の炎……魂の色はその者の精神状態を表しているらしい。


儀式台の奥には1人の男が眠っていた。


その男は、数年眠りから覚めていない。


最初は死亡したと思われていたので影武者を用意する案や時期国王を用意する案が考えられた。その時、ランプの精がこういったのだ。


「私はランプの精。我々はジンと呼ばれる精霊の種類であり、どんな姿にでも変身する事が出来るのです。例えば……」


そう言って精霊が化けた姿は眠りから覚めなくなってしまったハザード王その者の姿だった。


「主人を守るのが我々ランプの精の務めです。主人ハザード王が眠りから覚めるまで私がハザード王の代わりを務めます。そしてハザード王を境界ランプのトップの証である魔導王の玉座に導けばハザード王は魔導王を継承した魔力で必ず目を覚ますことでしょう」


境界国の大臣の中にはランプの精のいいなりになることに反発した者もいたが、正統な王族の血を引くハザード王の不在は王政の乱れを招くとの意見もあり、数年はランプの精がハザード王の姿を借り代わりを務めることになった。


眠り続けるハザード王の生命を維持するためには条件があった。


それは人間の魂を魔術儀式のチカラで捧げ続ける事だった。


定期的に若い魂を儀式台に捧げ本物のハザード王は生命を維持し続けている。


「我々ランプの精は主人の繁栄を心から願っています。必ずハザード王を助けだします。それまであと少しの辛抱です。ハザード王の繁栄が再び訪れる事でしょう」


一部始終を見続けている使用人の魔導師は繰り返される儀式に不安を抱きながらも、境界ランプの精がいつかハザード王を眠りから覚めるようにしてくれると信じる事にした。



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