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第二夜 錬金魔導師リー

美しいランプの精霊セラに案内されてオレは人混みをかき分け喧騒の止まないラピス市場のはずれにつくと、石畳みの細い小道に辿りついた。


「この小道を入ります」

さっきまでの人混みが嘘のように人通りの少ない白い石造りの建物が続く路地、迷宮に迷い込んだかのような錯覚に襲われそうだ。少し道を進んで気づいたが民家が多いのかパティオと言われる小さい中庭が至る所に見られて自然光に照らされた色とりどりの花や植物が赤、ピンク、ライラック、イエロー、グリーンとオレ達の目を楽しませてくれる。オレの肩に乗っている使い魔ミニドラゴンのルルもキョロキョロと花々を見てキューキュー鳴いている。

「このお花さんたち可愛いですキュ!」

「パティオ(中庭)はこのラピス市場のもう一つの観光名所です。定期的にパティオをお披露目するイベントが開催されるんですよ」


小さな花園の迷宮を抜けると、ランプのイラストが描かれた看板が目を引く、ここが例の老師の居場所らしい。ショーウィンドウには小洒落たデザインのランプやミニランタン、香水瓶などが数多く飾られている。入り口付近には鮮やかな色彩の絨毯が丸めて店外に並べられていた……魔法のじゅうたんはセール品のようで、じゅうたんに乗って空を飛ぶ人間のイラストが説明用に貼られている。見たところ、ごく普通の商店に見えるがやはり魔法の世界、商品の数多くは魔法の道具のようだ。

「リー老師はこのお店の店主もされているんですよ。もうお歳なのに立派です」

精霊セラはリー老師と面識があるようだ。この魔法の境界ランプの製作者……どんな人なんだろう?持ち主が次々と命を落とすいわくつきの魔法のランプ……だがオレはまだ命を落としていないし、願い事もキチンと叶えてもらっていない。

少し緊張しながら店に入ると、そこには既視感があった。何故ならこの魔法のランプ屋はオレのバイト先の骨董屋とソックリな商品のレイアウトだったからだ。一瞬夢が覚めてしまったのかと思った。だが既視感はそれだけではなかった。

コツコツと靴音をさせて店主らしき人影が店の奥からやって来た。


「やあ、よく来たね。響木千夜(ひびきせんや)君。私はこの店の店主で境界ランプの製作者錬金魔導師リーだ、よろしく」

思わず聴き惚れるような低音のよく通る声で形の良い唇からオレに向けて挨拶をする……長い黒髪を一つに結び、キレ長の獲物を狙うような目元、高い鼻筋、整った輪郭のいわゆる眉目秀麗な長身のこの男……大抵の女性なら見惚れてしまうのはオレのバイト先の店主で証明済みだ。そう、リー老師はオレのバイト先の骨董屋の店主にソックリだ。しかも、店長は老人ではない。せいぜい二十代後半から三十代といったところだろう。


「店長! なんでこんなところにいるんですか? それともあなた魔法のランプをオレに押し付けてこんな悪ふざけをしたかったんですか? せっかく願いごとが叶うと思ったのに!」

おやまあ、と店長はちょっとイジワルな表情で手を顎に添えて考えるポーズをとっている。

「あのお言葉ですが千夜様、リー老師は本当にお年を召されていらっしゃるんです。私は精霊なので魂を見ることができますがリー老師の魂はキチンと老齢されていますよ。外見年齢はその……不老不死の錬金術を成功したことで有名なお方なのでいつもこの状態ですが……」

「ナイスフォロー、セラ。さすが僕の遠縁だね。美しく成長してくれて自慢だよ。どうだい千夜君、僕の遠縁の精霊セラは? 僕にところどころ似ているだろう、良かったら君たちが結婚して店を継いで子供を作ってくれると僕も安心して余生が過ごせるんだけどな」

遠縁……オレが今まで見たことのないと感じた絶世の美少女セラは確かにところどころ、このふざけたイケメン店長によく似ておりオレはセラに恋をしてしまっている状態なのでなんだかフクザツな心境だった。

オレが困った表情をしていると店長は笑って

「からかうつもりはなかったんだよ千夜君、君なら境界ランプを使いこなし玉座に相応しいと感じたんでね。それにセラには君が玉座に座ってから君の妻になって欲しいと思うし……」

玉座……境界ランプ……錬金魔導師リーこと店長が魔法のランプについて語り始めた。



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