竜
今日は二本目です!
「おい、ミシャ、こいつを受けてぇんだが」
「はいはい、待ってください!ウォーカーさん!
依頼の内容と詳細を確認しますから!
それより、ウォーカーさん!なんだか最近大分言葉がスラスラ話せるようになったじゃないですか!」
「ん?そうか?まぁ、依頼の受けない時間はすべて言語の勉強してたからな」
「むぅぅ、なんだかウォーカーさんの成長が早すぎて、初めて会ったのが何年前だ!って気分ですよぉ」
「んまぁ、そんなこと話してるよりよ、さっさと仕事した方がいんじゃぁないか?また、ほかの受付嬢にどやされるぞ?」
「そ、そうですね!どやされるのは怖いですからね!依頼内容確認させていただきます!」
そこにはいつもの光景が広がっていた。
ギルドの開く時間ちょうどあたりにギルドに出てきて、依頼を午前中だけで相当量こなすウォーカーの姿と、ウォーカーと喋っていたいミシャのいつも道理の光景が。
しかし、そんないつも道理を壊したのはミシャ本人だった。
「えええええええええええ!!!ウ、ウォーカーさん!これホントに受けるんですか!?」
「ん?あぁ、受けるよ」
「こ、これ!ここ!ちゃんと見ましたか!?竜ですよ!これ竜の素材目当ての依頼ですよ!?」
「やかましいぞ、ミシャ。落ち着けよ、俺はちゃんと依頼書を読んだし、その内容に納得してる。
それにだぜ?ギルドは依頼を受ける受けない云々は基本無介入のはずだぜ?」
「んんんんんん、それでもぉ~。
あっ!そうだ明日には約束があるとかでベルクさんが会いに来るじゃないですか!こんな依頼受けたら会えませんよ?」
「大丈夫だ、そのためにもこんな早くにギルドに来てんだろうが、それにあいつなら一日くらいは待ってくれるさ」
「むぅ、分かりましたよぉ、私じゃ何の権限もないですからね。
仕方ありません。
私、ウォーカーさんが傷ついて帰ってきたり、万が一命を落としたりしたら、泣いて恨んでやりますからね」
ミシャは本当に、本当に渋々といった形で半ば泣きべそをかきながら、承認書を渡した。
「?お前が泣いて恨む理由がわからねぇが安心しろよ、最低でも逃げるだけの算段は付いてるから」
「はいぃぃ、もう何言っても無駄そうなんで、頑張ってきてくださいね!」
そんな、やり取りを交わした後ウォーカーは必要な物をギルドストアで買いそろえギルドを後にした。
ミシャはというと、そんなウォーカーに心の中でエールを送ると、またいつもの元気娘に戻り仕事を再開した。
ギルドをでたのちウォーカーは依頼書の裏に記載されている、依頼内容の詳細と簡易な目的地までの地図を道を歩きながら眺めていた。
ちなみに現在ウォーカーの歩いているのは魔大陸の港町の一つ{ネプン}の西、南、東にそれぞれ伸びる大道理の西どうである。
依頼書裏
・港町{ネプン}のパン屋です。場所は西の大門付近に店を構えております。依頼の詳細は、私たち夫婦の一人娘の病に効くという薬の材料に竜の頭角が必要とのことだったので、依頼させてもらいました。
どうか!どうか!お願いです!娘を助けてください!
そんな、必死に書き綴ったと思われる文字を見ているうちにウォーカーは依頼者の家の前に到着した。
ウォーカーの身なりを見て気が付いたのかパン屋の中から一人の男が出てきた。
「あんた、この依頼の人だろ?」
その問いかけに男は涙がでんとばかりにうれしそうな顔になり、ウォーカーに握手をしてきた。
「はい!はいッ!そうです、私が依頼を出したパン屋のマルです!あぁ!あなたが依頼を受けてくださるのですね!
あ、そうだ、立ち話は何ですからどうぞ店の中へ」
「いや、いい、俺は依頼の確認に来ただけなんだ、すぐ終わる話だ」
「そ、そうですか。
それで、依頼の確認とは?」
「あぁ、竜が場所を移動していないかの確認と、できれば竜の種類が知りたいんだ」
ウォーカーの問いに男は申し訳なさそうな顔をすると返事を返した。
「すみません、竜の種類は分かりません。
しかし、竜は一度気に入った場所らは中々移動しないと聞いておりますので、そこは平気だと思います」
「そうか、あい分かった。んじゃぁ行ってくるぜマルさん。
きっと明日には娘さんはよくなるよ」
「うぅうううううぅ、あ、ありがとうございます!」
マルは娘の依頼の難易度の高さから誰も受けてくれず、日に日に弱る娘がやっと助かる可能性が出たことに涙を流した。
そして、冒険者の名を聞くのを忘れていたことにきずき、慌てて、歩いていく冒険者の背中に問いかけた。
「お、お名前は!あなたの!お名前は!」
ウォーカーは顔だけ振り返り、答えた。
「俺はウォーカーだ。意味は歩くものだ。」
そうして、ウォーカーは西の大門をくぐり地図の導きに従い歩を進めた。
ちなみに、これはまだ十一時頃のことである。




