魔王 2
どんどんヒトガタについて解明していきます!!
「な、なんでここに出てきてんすかぁ?魔王様ぁ、いくら最果ての地でも万が一ってことがあるんですよ?」
「おいおい、ベルクよぉ、その万が一ってのは俺に至ってはあり得ねぇってのはぁ、知ってんだろ?」
「はぁ、お嬢様の方からも言ってやってくださいよぉ」
ベルクの視線の先には、父親譲りの真っ赤な紙と凛々しい顔立ちの、少女が立っている。
「私は、お父様が大丈夫といえば大丈夫だと思っているわ、だから、大丈夫よ」
「はぁ、すまねぇなぁ、俺らの魔王様はいつもこんな感じでなぁ」
「ああ、そう見てぇだな」
はぁー、と嘆息を漏らすベルクの姿はウォーカーの今まで見てきた姿とはずいぶん違う姿に見えた。
この、男忠には厚いのだが中々の苦労人である。
「さてさて、ベルクそいつが俺に合わせてぇってやつなんだろ?」
「あぁ、そうですよ!魔王様、紹介がまだでした。こいつ「いい、ベルク、自己紹介くらいは自分でするもんだ」そうか、それもそうだな」
「悪いな、魔王さんよ、そういうことだ。
俺の名前はウォーカー、下にも上にも続く文字はねぇんだ。」
「うむ、こっちも名乗らせてもらおう。
俺の名前はゼロムス・アーカディア。
そんで、こっちの可愛らし我がスウィートハニーが、娘のメア・アーカディア。」
「お父様、私このひと嫌い。
ずっとにらんでるんだもの」
ぷいっと可愛らしい擬音が出そうな、しぐさで顔を背けると、それっきりメアはだんまりしてしまった。
「すまねぇなぁ、ウォーカー、この通り君が気に入らないらしい。
許してやってくれ」
「いや、構わねぇよ、目つきが悪いのはこっちのせいだ」
「そういってもらえると助かる。
まぁ、ここで立ち話もなんだしなとりあえず、お前の能力も確かめておきてぇし、訓練場に行くか」
ゼロムスの誘いにウォーカーは断る理由もなく、そのまま、城の中へと入っていくのだった。
~訓練場にて
訓練場に着いたゼロムスたちはそれぞれ、戦闘の準備をしていた。
「なぁ、魔王さんよぉ、負けの条件は?」
「ん?そうだなぁ、、、そうだ、娘とベルクに審判をやってもらうんで、どうだ?」
「ああ、いいぜ」
「決まりだな、お~い、二人ともぉ、ちょっくら、審判してくれ、お前たち判断でいいからよぉ」
二人は、渋々といった形で両者の間左右にたつと目線で準備の確認を両者に送る。
「さぁ、いっちょやろうぜぇ、ウォーカー」
「任せな、傷は目立たねぇところにしてやる」
「「はじめ!!」」
最初に動いたのはウォーカー。
初手で一気にゼロムスの胸元に飛び込もうと動いた。
「なるほどぉ、やるじゃぁねぇかウォーカー。
だけど、まだまだ単純すぎるぜ」
余裕の表情で、ゼロムスはウォーカーの軌道からよけると、蹴りを放った。
バゴンッッ!!!
「グッ!?生身でこの威力だと!?」
「ふふふ、驚くのはまだ早いんじゃねぇのかい?ウォーカー?」
「なっ!!」
ヒトガタのガードすら超えて、ダメージを蓄積させるゼロムスの蹴りが続けざまに二発ウォーカーに打ち込まれる。
「グォゥ!!こた、確かにこいつは驚かせてくれるぜ」
「そうだろそうだろ、なら、今度はこっちで驚かせるぜ?」
ゼロムスの拳がひるんでいるウォーカーの顔面をとらえた!!
バッゴン!!!!
ウォーカーは訓練場の壁に激しく打ち付けられた。
その、衝撃は衝突した壁の日々がものがたっている。
「ふぅ、結局この程度なのね。戦いにすらなっていないじゃない」
「そいつは、どうかな、お嬢様?」
「えっ?」
審判として終了させようとしたメアをベルクは静かに止めた。
「あいつの、ウォーカーの本領こっからだぜ」
「まさか!」
ベルクとメアの視線の先には鼻血を垂らしながらも、立ち上がり闘志の消えないウォーカーの姿があった!!!!!
「ほぅ、やるねぇ、お前うちの四天王以上かもな?
まだまだ、やれるんだろ?」
「ふぅぅ、ここまで純粋に効いた攻撃は初めてだぜ、もちろん、一発返さなきゃぁな」
「いいねぇ、こいよ、もしかしたら、俺のヒトガタ見れるかもな?」
「それは、楽しみだぜッ!!!」
瞬間!
ウォーカーのを中心に光が爆ぜた!
まばゆすぎる光は数秒だが、ゼロムスの隙を生んだ!!!
「卑怯とは言わせねぇぜ?
ウォォラ!!!!」
ウォーカーの放った一撃はゼロムスを訓練場の壁にたたきつけた!!!!
「なっ!まさか、お父様が!?」
「なっ?言ったでしょうお嬢様?
あいつの本領はここからだって?」
驚愕のメアと、どや顔のベルクである。
「グ、グフォッ!
久しぶりだぜぇ?こんなに効いたのは、魔王になってからは少なくとも初めてだ」
「そうかい、それなら、もう一発刻んでやるぜぇッ!!!」
「いや、お前は敗北する」
「あん?」
ウォーカーの拳が今一度叩き込まれようとする、その瞬間!!
「≪{ヴィーナス タイム}
美しき時間は固定される≫」
世界は停止した。
「ふふふ、ウォーカー、お前すげぇな、お前は俺にヒトガタの能力使わせたんだぜ?
まぁ、この勝負、俺の圧倒的勝利だがな」
何もかも停止した世界で、ヒトガタの拳を振りかざしたまま動かないウォーカーに、ゼロムスは決着の拳を叩き込んだ。
バッッゴゴゴゴゴゴゴゴゴンッッッ!!!!!
能力の解除と共に壁に打ち付けられたウォーカーは意識が手放される感覚の中、ゼロムスにかすかな尊敬と初めての敗北の味をかみしめていた。
そして、間もなく寄ってきたベルクに肩を貸されながら、完全に意識を手放した。
「お父様?」
「あん?どうしたんだいメア?
俺今、ちょ~っとだけ、動きたくねぇんだけど?」
「あのひと、すごいね」
「!!!ッ、へぇ~、なにぃ?もしかして惚れちゃったのぉ?」
娘の態度の急変に驚きといたずら心の隠せないゼロムスと
「そ、そんなわけ!
いくらお父様でも許さないわよ!?」
ツンデレが始まりそうなメアであった。