深い色はお好き?~EYE SHADOW~
二話目はアイシャドーのお話です。
毎回主人公は変わりますので、ご理解よろしくお願いいたします!
大学に入ってそれなりに化粧するようになったのはいいのだけれども。
「杏菜のメイクってバリエーション少なくない?」
そう言われて少なくないショックを受けたのはつい一ヶ月前だ。
言われてみれば確かにそうかもしれない。
アイシャドーなんてピンクのふんわりした色合いのものしか持ってないし。それでも服装によってメイクを変えるなんてそんな面倒なこと、したくないじゃん。これって決まってる方が楽だしなあ。
とは思ったものの。
一ヶ月前以上の衝撃を受けたのはつい先日だ。
こんな私でも一応彼氏はいる。ちゃんと好きだよ?
彼とデートして、トイレに入り、全身鏡を見た瞬間、何か違和感が私の胸を襲ったのだ。不思議に思うとなんとまあセクシーをコンセプトにしてきた服装とメイクが見事に調和していなかったのだ。
大人らしくちょびっとセクシーにと思ったはずが、顔は思い切りフェミニン感満載だったのだ。これは同じセクシーでもオフショルのワンピースの方が良かったか?なんて悶々と考えながらトイレを出たのだ。
そして。
彼氏とのデートを前にして、私はかの一色アイシャドーから抜け出そうとしている。大胆にということでブラウンカラーだ。他にもゴールドやらレッドやらパープルやらもあったのだが、王道でいくことにした。
メイクを終えて鏡を見たとき、仰天した。
いつもの自分とはまったく異なる誰?とでも言いたくなるような姿がそこにあった。
なんか大人っぽい!セクシーだよ杏菜!!
髪はメイク効果で重くならないように上げることにした。服は胸元が開いたインナーにジャケット、スキニーを履くことに決めた。
着替え終わって再び鏡の前に立つと、いつもとは雰囲気の違う自分がいた。確かにこれでふんわりメイクはあんまり合わないかもなあ…と友達のつっこみを深く受け止める。
翔太はどんな反応をしてくれるだろうか。
気づかれなかったらけっこうショックだなあ。
「杏菜!」
待ち合わせ場所で待っていると、翔太が走ってきた。
「別に走らなくてもよかったのに」
「だって早く会いたいじゃん」
こういうことをさらっと言うとこ、好きなんだよね。
行こうか、と促して彼の腕に手を回そうとすると、案の定翔太が自分を見ている。
気づいたかな、なんてドキドキしながら彼の顔を窺う。
「どしたの?」
「いや…。なんか、大人っぽくなった?」
「一応もう成人なんだけど」
「そういう意味じゃなくてなぁ…」
かりかりと気まずそうに頭をかいている。
でも気づいてくれたみたい、良かったと歩き出そうとしたら彼が足を止める。
「今日の杏菜、すげー可愛い」
ぼそっ、と耳にそう呟いて彼は私の手を取って歩いた。心なしか彼の耳が赤い。
よ、よかった!アイシャドーの魔法、効いたみたい。
ブラウンとか、したことない…。
私は今のところオンリーピンクユーザーです汗