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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

誰よりも大切な命

守る命~ずっと一緒~

作者: 苑城 佑紀

「…そうでしたか」

『すみません……輝、絶対怒ってる』

「そうかもしれませんね、先生が来ない、って」

『ですね…来月は必ず行くので』

「無理しないでください、輝はわかってますよ」

『…ありがとうございます、では……』


電話を切った加賀宮に、輝の母親は切ない顔をして受話器を置いた。


「なんだって」

「先生、忙しいのと体の調子が悪いみたいで」

「そうか……先生も年だしな」




「加賀宮、黙って寝てろって」


巽も加賀宮もいい年だ。

五年前に巽は結婚し、今は息子が一人居る。

加賀宮は輝との約束通り…未だに一人。

それに加えてもうこの年じゃ、と。

病院の個室。

元、輝が入院していた時に居た個室。

そこに今、加賀宮が運命か偶然か心臓の病気で入院している。

電話切ったあと、病院の電話ボックスでうずくまっていた加賀宮を見つけた巽。


「あのなぁ……お前そんなに輝のとこに逝きたいのか」


そう言われ車椅子に強制に座らせ只今病室に戻ってきた。

心外長になった加賀宮は、心臓が弱ってると言われてから巽にその位置を譲った。


「一言、連絡しとかないと」

「それはわかるけどよ…自分の体心配しろよ」


ベッドに横になり落ち着いてきたのか加賀宮は巽を見た。


「悪いけど…俺、加賀宮を輝んとこに逝かせねぇからな」

「…勝手にしろ」


輝の母親に入院してるなんて言えずあぁ言ったが…


今になって輝の気持ちが丸々わかってきた。

苦しいと加賀宮を呼ぶ。

怖いと…

死にたくない、長生きしたい。

ずっとずっと……



加賀宮と一緒に居たい



そんな輝の言葉。

輝が居なくなってもう何十年もたってるのに。


「……バカだ」

「だな」


両手顔にして泣く加賀宮に巽は加賀宮を優しく抱きしめた。



───加賀宮


寝てる加賀宮に遠く声が聞こえる。

忘れもしない…輝の声。


──加賀宮、俺…加賀宮が居ないから寂しい


「…あ、きら」


目を閉じたまま口を動かす加賀宮。


──早く…来て


「無理、だ…」


──なんで?


「やる、事がまだ…」


──なら、それ終わったら来る?


「……逝く」


まるで、本当に二人で何気ない話してるように。

病室から聞こえてくる声に見回りのナースが入ってきた。


「沙原先生、大丈夫ですか?」


とたん輝の声も切れ加賀宮はうっすら目を開ける。


「良かった…」

「なにが…」

「え?今沙原先生誰かと」

「……いや」


自分で気がつかない。

余りにも輝に会いたい気持ちが大きすぎて。

病気になってから余計。


夕べの事に、巽は……病室の一角を見た。

多少、霊感ある巽。

本当は加賀宮と医者になるのは勘弁だった。

だが、親友の彼女に言われ。


『たっちゃん、加賀宮の事よろしくね』


別に同じ医者じゃなくてもと思ったが嫌な予感して彼女に言われた通り医者で同じ心臓外科に。


「輝…」

「巽、何言ってんだ」

「お前は黙ってろ」


一角を睨み見ながら巽は言う。


「加賀宮は逝かせない」

「巽!」

「お前もお前だ!普通長生きしたいと思うだろ!」


黙ってしまう加賀宮に舌打ちした。


「とにかく…夜、加賀宮に近寄るな………知らねぇと思ってるだろうが、バレバレなんだよ…波長がおかしい」

「巽、そんな事ない」

「あるんだよ!なんなら持ってきて見せようか!」


怒りに任せて出て行くとカルテを持ってきた。

加賀宮はわからないが、ちょうど輝が発してる時に心臓は停止している。

それから復活するのは輝の仕業と巽は思った。


「お前、ただ寝てるだけだから気がつかないだろうがよ…ナース言った時間考えるとそうしかない」

「気のせいだ」

「あのな、加賀宮…俺をナメんな…輝よりずっと側に居た、なんでもお前の事は知ってる、じゃなかったら、お前をここに閉じ込めねぇよ」


お願いだから…と、巽は加賀宮の手を握る。


「アイツも居なくなってお前まで居なくなったら…俺どうすんだよ…アイツにお前をよろしくってまで言われてんだ」


頭下げる巽に加賀宮は何も言えなくなる。


「…とりあえず、やる事ある」





その日…

天気が良い日だった。

彼女の墓参りに巽と行って、その次の日輝の実家に行った。

黙って帰ろうとしたが、父親にありがとうとたった一言言われ。

それからマンションを引き上げ自分の医書や私物を巽にあげた。


「止めろって…」


そう言っていた巽は段々諦めか呆れてるのか何も言わなくなった。

巽に最後のお願いをした。


「巽、もし俺が死んだら…骨は」


輝の実家の近くの海に細かくして捨てて欲しい。






「……ほらよ、約束通り」


加賀宮に言われた通り輝の実家に行き、加賀宮が亡くなった事を話…海に来て火葬した骨を知り合いに頼み細かくして海に捨てた。


「ったく……最後の最後まで輝、輝……」



もう、勝手にしろ。


「バカ野郎が…輝に会えなかったら許さないからな」


そう呟き、唇噛みしめると余計涙が止まらない。





─加賀宮っ!

─輝…

─これからずっとずっと一緒だよね


─あぁ…




「加賀宮、大好き」

「輝、俺もだ」



いや……




愛してる───




キラリと光った二つのリング。

巽はリングを一緒に強く結びつけ思いっきり投げ捨てた。

ゆっくりと海の奥底に段々と沈み、それは永遠に離れず誰にも見つからずに……


円条佑紀です。

とうとう加賀宮も亡くなりました。

長生きしたいと、してほしいと思っても人間死ぬ時はいつかくるんです。

別に加賀宮を亡くしたいと思って書いた訳じゃないんですよ。

いや、本当に。

輝の側に行かせたいと思ったら………って結局そうじゃん。

このシリーズのお話はこれで終わりです。

番外編でブログにたまに載せるかもしれません。

読んでくれた方ありがとうございました。



天国でも、二人が幸せでありますように……

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― 新着の感想 ―
[一言]  こんばんは  二人を一緒にしてくださってありがとうございます。ドキドキしながら拝読いたしましたが、ついにハッピーエンドで嬉し涙です。  いつも素敵なお話をありがとうございます。
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