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黒い夢と白い夢Ⅲ ――攻撃の科学――  作者: 葉都菜・創作クラブ
第2章 土の魔 ――傭兵都市サラマシティ――
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第7話 連合政府万歳!!

 【サラマシティ 市街地】


 私たちはクェリアとクディラス将軍と一緒に行動することになった。大勢の賞金稼ぎや傭兵などでに賑わうサラマの市街地を歩いて行く。

 元々、サラマシティの治安はそんなに褒められたものではない。傭兵や賞金稼ぎ、犯罪者の巣窟であり、日に何度も暴行事件が起こる。

 戦争が始まると、賞金稼ぎ・傭兵の急増も関係して、ますます治安は悪くなった。何しろ、連合政府が人間や魔物に賞金をかけているのだから、そりゃ増えるのは必然だ。


「この街はバトル・ライン総帥ホフェットの支配する街の1つだ」


 歩きながらクディラス将軍がサラマシティについて話してくれた。ホフェットは連合政府リーダーの1人。連合政府加盟組織バトル・ラインのトップだ。

 バトル・ラインは迷彩色のバトル=アルファを使用することで知られる異郷大陸アポカリプス北方を支配する独裁国家。連合軍七将軍にアヴァナプタとプロパネの2人を選出させる軍事国家としての一面もある。


「ホフェットは力至上主義者だ。強者が弱者を支配するのは当たり前と考えている」

「じゃ、ホフェットは強いんですか?」

「いや、本人の実力は大したことない。ただの貪欲で凶暴な弱者だ」

「じゃ、支配する側じゃなくて、される側じゃないですか」

「それがヤツの言う力は“経済力”や“運”も含まれている。何も、身体能力だけじゃない」


 ……ホフェットは元はアポカリプス大陸の小国を統べる王の1人だった。それが、大陸内での奴隷産業を復活させ、財閥連合と手を組んで軍事力・経済力を拡大。周辺諸国を次々と制圧。あっという間にアポカリプス北部を支配してしまった。


「ヤツは、財閥連合の力を借りて大陸を支配した。そして、奴隷産業をこのコスーム大陸にも持ち込もうとしている」


 アポカリプスはコスーム大陸の南に位置する大陸だ。アポカリプス大陸は人口も少なく、大陸中部は砂漠に覆われ、灼熱の大地。人は住めない。南部は広大な熱帯のジャングルが広がっている。人がいるのは実質、北部だけだ。その北部は疲弊した地。終わらない暴力と犯罪が蔓延し、治安も悪いらしい。


「ほら、見えてきた。闘技場だ」


 クディラス将軍が指を指す方向には赤茶色のレンガで造られた円形の大きな建物が見えてきた。サラマの闘技場。あそこで人身売買や奴隷同士の殺し合いが……


「我々の任務はホフェットと、同じ連合政府リーダーのメディデントとコマンドの逮捕だ」

「えっ? ここに連合政府リーダーが3人もいるんですか?」


 お父さんが驚いたように言う。私も同じ気持ちだった。フランツー北部に逃げたバトル=オーディンにばかり目が行ってて全然気がつかなった。


「3人じゃない。7人だ」

「7人!?」

「ホフェットの護衛で七将軍アヴァナプタ、プロパネ。コマンドとメディデントの護衛で七将軍のケイレイトとメタルメカがいる」

「そ、そんな、7人、も……! …………!」


 この時になってようやく気がついた。国際政府四鬼将と呼ばれる猛将がなぜ2人もここにいるのか? ――連合政府リーダーを捕まえる為なんだ。


「でも、3人ってことは残りの4人はどうするんですか? 七将軍の4人」

「余力があったら捕まえる。だが、まずは連合政府内で大きな影響力を持つ3人が先だ」


 そう言いながら、闘技場へと入って行く。門衛のバトル=アルファに受付を済ませ(身分証は偽造。犯罪だけど、まぁいいよね)、中へと入って行く。

 7人の連合政府リーダーが集まっているなんて…… 一体、この闘技場で何が行われるのだろうか? 期待。そして、不安が私の心に広がっていた。





 【サラマシティ 闘技場 客席】


 闘技場に入った私たちは賞金稼ぎや傭兵に紛れ、一般の客席に座る。中央の闘技場を囲むように造られた客席は満席だった。大勢の人々が開始を今か今かと待っていた。


「……パトラー、先に言っておく」

「なんですか?」


 私の右隣に座ったクェリアが真ん中の広いレンガ造りのステージを見つめたまま言う。


「何があっても動くな」

「イエッサー」


 イエッサーって言ったケド、私はクェリアと同じ将軍だ。

 そんなことを思っていると、周りから一斉に歓声が挙がる。丁度正面に位置するVIP席の上、司会席を見ると、1人の男が出て来たところだった。茶髪に黒色のサングラスを付け、茶色の顎ヒゲを生やした若い男。バトル・ラインの総帥ホフェットだ。

 ホフェットと共に左右斜め後ろから2人の男女が歩いてくる。七将軍のアヴァナプタとプロパネだ! 青い装甲服にスカーフを纏った女がアヴァナプタ。紫色のスカーフと装甲服を着た男がプロパネだ。


「ホフェット総帥万歳!!」

「連合政府万歳!!」


 大勢の傭兵や賞金稼ぎが歓声を挙げ、連合政府を讃える。もし、国際政府の人間だとバレたら八つ裂きにされそうだ。


[あー、みんな、よく来てくれた。今日は連合政府の主催する一大イベントだ。だが、始まる前に我が友を紹介しよう。まずは財閥連合総督のコマンド閣下と副総督のコモット閣下だ]


 そう言うと、VIP席の出入り口から黒いスーツを着た男性が2人現れる。先頭にいる男は財閥連合のリーダー、コマンド! そして、後ろからは同じように黒いスーツを着た財閥連合副総督コモット。2人の後ろから更に2人の男女。七将軍のケイレイトとメタルメカだ!


「財閥連合のコマンド閣下だ!!」

「すげぇ! 初めて見たぞ!」

「財閥連合万歳!!」

「風使いのケイレイトちゃんだ! 可愛い顔しているぞ!」


 ケイレイトは黒のレーザースーツを来た女。風魔法を使うらしい。メタルメカは紫色のラインが入った黒の装甲服に全身を覆った男だ。本名が別にあるらしい。


[お次はナノテクノミアのリーダーにして連合政府リーダーの1人、メディデントだ!]


 ホフェットのアナウンスと共にVIP席の出入り口から1人の男が入ってくる。白に細い青いラインが入った服を着た男。ナノテクノミアのリーダー、メディデント。黄色の髪に赤い瞳。鋭いその瞳はどこか見る者に恐怖感を与える。


 いよいよ始まる。連合政府リーダー7人が集まったこの催し物。クェリアの言った言葉が気になる。――何があっても動くな。悪い予感しかしないケド、今更帰るワケにはいかない……!

さて、本章のメイン・テーマでもあります「弱肉強食」の考え方と「奴隷」ですね。

強い人が弱い人を無理やり従える。もっといえば、強い人が弱い人の人生や生命を好き勝手強制するんですね。

「お前は今日から俺の所有物だ。住む場所も、その日やることも、死ぬ日も、死に方も、全部俺の命令に従え。拒否権はない」なんて言われたら息苦しいですよね。

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