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黒い夢と白い夢Ⅲ ――攻撃の科学――  作者: 葉都菜・創作クラブ
第2章 土の魔 ――傭兵都市サラマシティ――
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第6話 お前は弱すぎる

 それは突然のことだった。


「おい、俺の客人になにしてんだ?」


 私たちの後ろから1人の男性と1人の女性が現れる。2人共若い人間だ。服装は賞金稼ぎや私の服とは違ってかなり派手な服。肌の露出が多く、茶色の鋭いサングラスをしていた。


[お前たちは誰だ?]

「あ? 誰に口利いてんだポンコツ」

[身分証を見せろ]


 男は懐から手帳を取りだすと、それを隊長と思われる黄色いラインの入ったバトル=アルファの上位機種であるバトル=コマンダーに投げつける。


[財閥連合所属のラルボ評議員……これは失礼しました]

「気をつけろ、クズ。次何かしたら、バトル・ラインへの支援打ち切り案を出すぞ」

[ど、どうかお許しを]

「さっさと失せろ、ポンコツ」

[イエッサー]


 そう言うと、バトル=アルファの一隊は慌てて逃げ出す。バトル・ラインと財閥連合は共に連合政府加盟組織の1つだけど、完全な上下関係がある。バトル・ラインにバトル=アルファを提供するのは財閥連合だ。もし、財閥連合が軍の提供をストップさせたら、バトル・ラインは崩壊する。


「さて……」


 ラルボと名乗る男性は私たちに歩み寄る。この男、かなり筋肉質な男だ。威圧感を強く感じる。ただ者じゃない。まだ、危機は去っていない。

 それにラルボと一緒にいる女性の方からも強い覇気を感じる。この人も、普通の人間じゃない。


「ちょっと来て貰おうか」

「…………」


 その力強い言葉にはもはや何者も拒否させぬ強い力が籠っていた。ここでこの2人から逃げ出せば、周りの賞金稼ぎや傭兵が一気に襲い掛かってくる。だから、ここはひとまず従っておこう。……という考えは起こらなかった。にも、関わらず、私たちは彼らに従うしかなかった。彼らを倒す? それは無謀な挑戦だ。それを本能的に感じていた。


 私たちは2人に連れられて裏路地へとやって来た。薄暗い場所に溜まるじめっとした空気。捨てられた武器や装備品が無造作に投げ捨てられていた。


「さて……」


 ラルボはサングラスと帽子を取る。茶色の髪の毛に同じ色をした美しい瞳。アレ? この人、どっかで見たぞ?


「…………! クディラス将軍!?」

「えっ!?」


 お父さんの言葉でようやく一致した。そうだ、この人、国際政府特殊軍将軍のクディラス将軍だ! 国際政府の猛将の1人。賞金はきっとG級だろう。

 今の国際政府将軍には4人、化物のように強い将軍がいる。さっき賞金稼ぎたちが話していたバシメア将軍。その親友であるクリスト将軍。そして、このクディラス将軍。そして後1人は……


「オイジュス副議長、なぜこのような場所にいらっしゃるのですか?」


 サングラスを外す女性。赤色の髪の毛に青色の瞳をした若い女性。四将の1人クェリア将軍。そうか、さっき私が感じた覇気はなるほど、その通りだ。四将の強さは尋常じゃない。


「申し訳ない。この街を己の目で見て、その惨状を元老院議会で伝えられれば、元老院議会もこの問題にもっと真摯な態度になると思ったのだ」

「そうですか。でしたら、――」


 クェリア将軍が私の方を向く。その目は明らかに私を見下ししていた。そして、どこか敵意さえも感じた。


「こんな“小娘准将”だけをボディガードにするのは危険ですよ」


 えっ――?


「あ、あの私は、もう将軍です……」

「……お前が? 冗談はやめてくれ」


 クェリア将軍は僅かに笑みを浮かべながら言う。明らかに私を見下し、バカにしていた。


「ど、どういう意味ですか……?」

「お前のような弱い軍人、准将になっているだけでも変だろ?」

「…………!」


 クェリア将軍は冷たい瞳を私に向けながら言う。その言葉に私は怒りと悔しさを感じた。私だって一生懸命、今まで訓練し、戦ってきた。それを、弱いなんて……!


「もし、将軍になったのなら教えてくれ。元老院議会に賄賂でも渡したか?」

「…………ッ! わ、私は賄賂なんて渡していない。これまでの実績と、仲間たちの信頼で将軍の地位に立ったんだ!」


 封鎖区域テトラルの戦い、ビリオン・ポート本部の戦い…… 私はこの他にも戦いを経験した。その中で仲間を得て、将軍の地位になった。それを、私のこと知らないで、賄賂とか言うなんて……!


「クェリア、少し言い過ぎだぞ。一応、他の将軍たちは多少は認めている」

「あぁ、そういえばクォットやスロイディアらがお前を推薦したな」

「…………」

「――どうやって2人の弱みを握ったんだ? “バカラー将軍”」

「…………!!」


 私は我慢の限界だった。勢いよく剣を引き抜き、クェリアに斬りかかった。もう、後のことなんて考えていなかった。心には憎悪と悔しさしかなかった。

 勢いよく振り下ろされる白刃の剣。クェリアはその素早い斬り込みを涼しい顔で避ける。私は間髪入れずに今度は横に剣を振る。だが、それも軽々と避けられる。

 こうなってくると、いよいよ自制が効かない。がむしゃらに剣を振り回し、突っ込んでいく。でも、1回も彼女の身体に当たらなかった。


「これがこの女の実力、か。思っていたよりも弱いな」


 クェリアはいきなり私に近寄ってくる。その動きに私は一瞬、対応が遅れた。その一瞬が勝負を決した。

 彼女は剣を握った私の腕を脇に挟み込み、完全に動きを封じてしまう。そしてもう片方の手で私の首を掴み、背は壁に押し付けられる。


「私は武器を使っていない。お前は武器を使った。でも、私は勝ち、お前は負けた。ハッキリ言ってやる。――お前に将軍は務まらない。お前は弱すぎる」


 そう言うと、クェリアは私から離れる。私はガックリとその場に膝を着いて倒れ込む。そんな私の頭には、彼女の言葉だけが、何度も響いていた。

「力」でパトラーはクェリアには勝てないです。クェリアは「力」が将軍という地位に対して絶対的なんだと考えています。でも、本当に「力」だけでいいんでしょうかね?

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