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黒い夢と白い夢Ⅲ ――攻撃の科学――  作者: 葉都菜・創作クラブ
第6章 街の闇 ――科学都市テクノシティ――
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第43話 ウィルスをばら撒いたのは、君たちだろう?

 【テクノミア=エデン 最上階 テクノミア御座】


 私たちはエレベーターから出て、広い廊下を進み、大きな扉を開ける。その先に広がっていたのは、広大なドーム状のエリアだった。奥に大きな軍用兵器のような機械がある。

 壁はコンピューター画面の光のように、不気味な青色の光を発している。そこでは大きな文字・記号で複雑な数式や図のようなものが、表示されては消えていくを繰り返していた。


「あの機械は……?」


 ミュートが指差した時だった。その大きな機械は、さっきまでの不気味な沈黙を破り、音を立てて動き出す。

 四方に伸びるのは、大きな逆三角形の装甲板を有した鋼色の脚。蛍光色をした青色のライン。

 胴体の方は人間の姿にやや似ている。鋼色をした太い円柱状の胴体。胴体には、蛍光色をした緑色のライン。

 胴体から延びるのは、4本の細い腕。それぞれの腕の先端が鎌状になっている。鎌や腕には蛍光色をした紫色のライン。

 そして、頭部はバトル=アルファと似た形で逆台形状のモノ。ただ、人間で言えば、目に当たる部分に、大きなものが真ん中に1つあるだけだった。そこは蛍光色をした赤色に光っていた。


「人工知能テクノミア! ナノテクノミアを支配する世界最大の人工知能だ!」


 スロイディア将軍が剣を引き抜きながら叫ぶ。これが……人工知能テクノミア!? まるで戦闘マシーンだ(バトル=オーディンより強そうだ)。


「バトル=オーディンを開発したのも、戦前、財閥連合を支配していた人工知能オーロラを開発したのも、全てこの人工知能テクノミアの仕業!」

「…………!?」


 あのオーロラやバトル=オーディンもこの機械が!?


[戦闘開始。ターゲット5名。ロック・オン]


 テクノミアが機械の声で言葉を発する。まぁ、バトル=オーディンがあれだけ普通に話せるのだから、今更、驚く事もない。

 大型軍用兵器は、甲殻類の生き物が使ってそうな大きな4つの脚を滑らし、こっちに迫ってくる。う、うわっ、意外と速い……ケド、ビックリするほどのものでもない!

 私は横に大きく飛び、懐からハンドボムを取りだすと、それをテクノミアの胴体部分を目がけて投げる。


[攻撃セ――]


 爆発音が鳴り響く。テクノミアの身体が揺れる。胴体と右前脚の接続部分から火花と煙が上がっている(意外と耐久力ないんだな)。


[攻撃セヨ!]


 テクノミアが大きな鎌で私を斬り殺そうとする。……遅い! 私は横から振られる鎌にタイミングよく飛び乗り、更に別方向から振られる鎌に飛び乗る。そこから魔法発生装置を内蔵したハンド・グローブを振り、何発もの雷をテクノミアの頭部に落とす。

 トワイラルも私と同じようにハンド・グローブを使い、火炎弾や電撃弾をテクノミアの頭部に飛ばす。一方、ミュートはアローで射る。

 テクノミアの頭部が爆発する。炎を上げ、巨体は力を失い、床に倒れ込む。私は鎌の上から飛び降り、床に降り立つ。テクノミアは完全に機能を失い、電子音や身体各所で光っていたの蛍光ラインも消える。


「……終わり?」


 正直、呆気なさすぎる。もっと強いのかと思っていた。これじゃ、スーパー・フィルド=トルーパーやバトル=フィルドの方が強い。

 その時、エリア中央の床が開き、下から勢いよくさっき破壊したテクノミアと同じ軍用兵器が現れる。


「はぁ!?」


 いや、驚いているヒマはない。新たに表れたテクノミアはすぐに襲い掛かってきた。こっちに滑ってくる。

 今度はスロイディア将軍とクディラス将軍が走り出す。2人とも、テクノミアに向かって飛ぶと、最初にスロイディア将軍が剣で頭部のレッド・アイを斜めに大きく斬る。続いてその割れ目に向かってクディラス将軍が拳を繰り出す。

 強烈な鉄拳を喰らったテクノミアの首部分で何かが砕ける音がした。頭部のレッド・アイが砕け散り、2体目のテクノミアは1体目のテクノミアに突っ込んで爆発する。


「ちょ、ちょっと!」

「…………!?」


 また中央の床が開き、開いた穴から3体目のテクノミアが出てくる。まさか、無限に出て来るんじゃないのか……?


[あなたたちの姿は市内からずっと見ていました]

「へぇ、そうですか」


 市内から? 監視カメラを経由して見ていたのか。なら、私たちの姿を見てウィルスを大量に放出させ、あの動乱を引き起こしたのかッ!


「この……殺戮マシーンが!」


 私は剣を引き抜き、それを思いっきり投げる。剣は回転しながら勢いよく飛び、テクノミアのレッド・アイに深々と突き刺さる。続いてミュートが電撃を纏わせたアローを何発も飛ばす。テクノミアの頭部は爆発し、倒れる。剣も床に転がる。


「……また、来るか」


 トワイラルがポツリと言う。彼の言葉通り、中央の床が開き、4体目のテクノミアが姿を現す。今までのテクノミアと同じ姿だった。そのテクノミアは近くに転がっていた3体目のテクノミアを脚でエリアの隅に蹴り飛ばす。


[いいえ、ウィルスは私が放出したものではありません]

「なにを今更! テクノシティの人たちを殺した元凶がッ!」


 私とトワイラルとミュートは再び攻撃を始める。分かっていた。これを壊してもまた次が現れる事ぐらい。

 4体目のテクノミアが壊れ、倒れると同時に床が開き、5体目のテクノミアが姿を現す。全く同じ姿をした戦闘用人工知能。でも、その時だった。


「ウィルスをばら撒いたのは、君たちだろう?」

「…………!? メディデント!?」

[…………]


 いつの間にか、エリアの隅にはメディデントが腕を組んで立っていた。間違いない、サラマシティで見たあの男だ。ナノテクノミアの総帥にして連合政府リーダーの男……


「お前たちは、わたしの街にウィルスをばら撒き、わたしとナノテクノミアを滅ぼそうとしている!」

「…………?」


 メディデントは何を言っているんだ? ウィルスをばら撒いたのはお前たち連合政府・ナノテクノミアじゃないか。私たちを殺すためだけにウィルスを……


「国際政府とて、なんら変わりはない! この殺戮集団が!」

「…………」


 メディデントは本気か? でも、私たちがウィルスをばら撒くなんてあり得ない。私たちがこの街に来た途端、あの事件だ。


「ふん、シラを切るつもりか。なら、証拠を見せよう」


 呆然とする私たちに対して、メディデントは手を振る。その途端、壁に大きな映像が映し出される。それはどこかの街だった。燃え盛るどこかの街。緑色のラインが入った白色の中型飛空艇が、街に向かって爆撃している。……まさか、テクノシティの映像か?


「スロイディア、あの飛空艦隊は、クェリアの12兵団じゃ……」

「……間違いないな」

「…………!?」


 クェリアの飛空艦隊……!? 私は頭が見えない何かで殴られたかのような感覚を覚える。あの女、なにしているんだ? テクノシティを、空爆……?


「これもまだシラを切るか! テクノシティ市民を今、殺戮しているのは、お前ら国際政府の軍隊だ! ……それとも、あれは違うとでもいうのか?」


 メディデントの怒りに満ちた声。彼の手に握られていたハンドガンがゆっくりと私に向けられる。


「さぁ、答えを言え。あれはどこの国の軍隊だ?」

「そ、それは…… でもっ、……」


 今、テクノシティを空爆しているのは、紛れもなく私たち国際政府の軍隊だ。クェリアの第12兵団とは言っても、政府軍であることに違いはない。

 その時だった。乾いた音が鳴り響いた。誰かが、何かに向かって発砲した。――さっきまでハンドガンを持っていたのはメディデント。銃口は……私の方を向いていた――

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