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黒い夢と白い夢Ⅲ ――攻撃の科学――  作者: 葉都菜・創作クラブ
第6章 街の闇 ――科学都市テクノシティ――
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第42話 テクノシティはもうダメだ

 【科学都市テクノシティ テクノミア=エデン メイン・ロビー】


 私とミュートは戦車を乗り捨て、テクノミア=エデンのメイン・ロビーへと入る。中ではすでに誰かが戦った後なのか、何十体ものグールやバトル=アルファが倒れていた。奥にはバトル=パラディンまで倒れている。


「パトラー、ミュート!」


 後ろから誰かが声をかけてくる。スロイディア将軍だった。彼女に続いて、トワイラル、クディラス将軍が飛び込んでくる。よかった、みんな無事だったんだ!

 ところが、ほっとしたのもつかの間、その後ろからは何体ものバトル=エアロとバトル=サンダーが入ってくる。


[攻撃セヨ!]


 メイン・ロビーに入ってきたバトル=エアロの1体が手を振る。その途端、激しい風魔法が室内で発生する。サイクロンだ!

 私たちは慌てて魔法シールドを張る。激しい風が巻き起こり、小さな竜巻状の突風が発生する。魔法シールドを張っていても、多少は風に流される。


「クッ!」


 私は風に流されつつも、サブマシンガンを取り出し、バトル=エアロやバトル=サンダーに向けて発砲する。狙いが定まらず、多くの銃弾が当たらない。2体のバトル=エアロを倒せただけだった。

 ミュートもアローを飛ばし、バトル=エアロを射る。でも、私と同じように、多くが外れる。正確に頭を打ち抜けたのは、2体だけ。


「バトル=サンダーか」


 クディラス将軍が走り出す。彼は勢いよく飛ぶと、空中を飛ぶバトル=サンダーに拳を繰り出す。バトル=サンダーを殴り飛ばし、それは他のバトル=サンダーにも当たり、赤いじゅうたんが敷かれた床に落ちる。


[攻撃セヨ!]


 生き残っているバトル=サンダーが手を振る。魔法シールドを張ったスロイディア将軍に電撃が落ちる。電撃を喰らった彼は多少、足元がふら付く。

 でも、彼はそのままジャンプすると、空中で剣を引き抜き、そのバトル=サンダーの胴体を斬り倒す。腹で横に真っ二つにされたバトル=サンダーは床に落ちる。


「…………! バトル=フィルドだ!」


 トワイラルが叫ぶ。私たちの入ってきたところから3体の赤い装甲服を着たクローン兵が肩に付けた小型ジェット機で室内へと入ってくる。

 彼女たちは折りたたまれていた両腕のツイン・ブラスターをこっちに向けてくると、レーザー光線を飛ばしてくる。


「う、うわっ!」


 レーザー光線は避けるだけで一苦労だ。それをバトル=フィルドは連射してくる。とんでもなく強い軍用兵器だ。まともに相手にしていられない。

 しかも、彼女たちの装甲服はそこそこ頑丈に出来ている。装甲服だけじゃない。身体も軍用に改造され、耐久力が高い。

 その時、捨てられたハンド・キャノンが視界に入る。大砲ならあの装甲を貫ける! これはラッキーだ! 私は素早くそのハンド・キャノンが転がっている場所に飛び込み、強力な武器を拾い上げる。


「ごめんっ……!」


 私はずっしりと重量感のあるハンド・キャノンの砲口をバトル=フィルドに向け、引き金を引く。放たれる鉄球――……鉄球?

 鉄球は勢いよく飛び、トワイラルたちにレーザー光線を飛ばすバトル=フィルドのお腹に直撃する。赤い装甲服を砕き、生身のお腹に当たる。そのバトル=フィルドは床に転がり、血を吐き、うめき声を上げながら気を失う。


「な、なにこれ?」


 てっきり起爆性の砲弾が飛ぶかと思っていたのに、飛んだのは鉄球だ。こんなおかしな武器、どこの誰が開発したんだろう……?


「走れ!」


 スロイディア将軍が叫ぶ。私は慌てて奥の部屋へ走り出す。残ったバトル=フィルドがすぐ近くまで接近していた。私のすぐ後ろにレーザー光線が着弾し、爆発する。

 私たちは廊下を進み、奥へ奥へと進んでいく。やがて、エレベーターが見えてきた。すでに私とスロイディア将軍以外はみんな乗っている。

 私とスロイディア将軍も飛び込むようにしてエレベーターに乗る。そして、トワイラルがハンド・グローブ型の魔法発生装置で強力かつ大きめのキャンセル・シールドを張り、エレベーターの外から撃たれるレーザー光線を防ぐ。やがて、エレベーターの扉は閉まり、かなり速いスピードで上昇する。


「ふぅ、危なかった」


 私たちはエレベーターの中でようやく一息つく。その間にも、エレベーターはほぼ無音で上昇する(どうでもいいけど、この速度で下降するとちょっと怖いかも)。


「そういえばクラスタとピューリタンはどこ行ったんだろう?」


 エレベーターの床に座り込んでいたミュートが言う。彼女たちが一番最初にこのテクノミア=エデンに乗り込んだのは間違いないのだけど……


「分からない。先に行ったのかも知れない……」


 もし先に行ったのなら、最上階で合流できるハズ。今はどうしようもない……


「……それと、“あの人”は?」


 トワイラルが言う。あの人……クェリアか。そういえば、いないな。四鬼将なんだから無事なんだろうけど。

 彼の問いに誰も答えず、エレベーター内にイヤな沈黙の空気が流れる。――まぁ、大丈夫でしょ。



◆◇◆



 【科学都市テクノシティ 西部市内】


 私は震える手でハンドガンに握り、群がってくる魔物どもを撃ち殺していく。私の弾は正確に白い額を撃ち抜いてゆく。

 だが、やがて弾が切れる。私は下唇を噛み締め、ハンドガンを投げ捨てると、その場から走り去る。グールどもに噛み付かれたせいで身体のあちこちに激痛が走る。


「ふふ、私が負けだと?」


 私は狭い路地に飛び込み、身を潜める。身を潜めながら、そっと小型通信機を取りだす。通信を入れると、すぐに私の部下が出た。


[こちらランディ中将、クェリア将軍ですか?]

「そう……私だ。テクノシティはもうダメだ。ウィルス汚染で完全にやられてしまっている」


 私はそっと大通りの方に繋がる路地を見る。まだ大勢の人々の悲鳴が聞こえる。そして、銃撃音と爆音も。連合政府市民の声。連合軍の戦闘音。グールの雄叫び。全て、私たち国際政府の敵。なんら変わりはない――


「元老院議会・極秘会で、第12兵団に実行権限を頂いた“テクノシティ除去計画”を実行せよ。カーコリア中将にも伝えろ」

[……イエッサー]


 通信はそこで切れる。私は意味もなく笑みを浮かべる。みんな死んでしまえ。ピューリタンも、クラスタも、クディラスも、スロイディアも、ミュートも、トワイラルも、――パトラーとフィルドも、みんな死んでしまえ……


「ふふ、あはは、はははッ!」


 テクノシティは死ぬ。連合政府の街が消される。科学都市は殺される。――そう、敵の街が消える。最初から、そうすればよかったじゃないか。


 クラスタ、知ってるか? お前の故郷を空爆し、破壊の限りを尽くしたあの事件。お前は怒り狂い、その怒りで連合政府に加担し、将軍として奴隷人形のごとく働いた。ピューリタンにひどく当たったそうだな。

 でも、お前の街を空爆したのは、この私だ。私と私の兵団でお前の街を灰にした。あの軍事作戦案を元老院議会・極秘会に出し、強行採決したのも、この私だ。


 敵はいなくなればいい。みんな死んでしまえば、それでいい。それが、戦争を早く終わらせるための方法さ。

 さぁ、敵を消そう。国際政府を脅かす、闇の街を滅ぼそうじゃないか――

 【これまでの流れ】

◆SC 2010年

 ・12月:財閥連合 崩壊(フィルド、連合軍に捕まる)


◆SC 2011年

 ・2月11日:連合軍、ティトシティ占拠 <<ラグナロク大戦勃発>>

 ・2月13日:国際政府、ティトシティ空爆

 ・8月上旬:ピューリタン、連合軍・七将軍のデスピアを殺害

 ・8月下旬:ラグナロク大戦 本格化


◆SC 2012年

 ・5月:第一次ファンタジアシティの戦い(ピューリタンVSクラスタ。ピューリタン、捕まる)

 ・8月:第二次ファンタジアシティの戦い(ピューリタン、助け出される。クラスタは失脚)

 ・10月:パスリュー本部の惨劇(フィルド、大勢の所員を殺害し、脱出)

 ・12月:パトラー、ラグナロク大戦に参戦  <<「夢Ⅰ」>>


◆SC 2013年

 ・1月:第三次ファンタジアシティの戦い

 ・2月:クラスタ、首都最下層でパトラーとスロイディアに発見される

 ・3月:封鎖区域テトラルの戦い <<製薬会社「テトラル」 滅亡>>

 ・4月:パトラーとキャプテン・フィルドが出会う

 ・5月:キャプテン・フィルドらがマンドラゴラ峡谷でマンドラゴラと戦う

 ・6月上旬:パトラー、情報拠点コア・シップを破壊

 ・6月下旬:ビリオン・ポート本部の戦い(コメット、死亡) <<ロボット製造会社「ビリオン」 滅亡>>

 ・7月上旬:キャプテン・フィルドらクローン軍がシリオード帝国を攻撃する

 ・7月下旬:キャスティクスの戦い

 ・8月:サキュバス虐殺事件

 ・9月:連合政府リーダーのパラックルが殺害される <<金融連盟「ギルティニア」 滅亡>> / ティトシティ・ヴォルド宮占拠事件(フィルドがキャプテン・フィルドらに捕まる)

 ・10月上旬:フランツーシティの戦い(クロノスが殺害される)

 ・10月下旬:サラマシティ・奴隷事件(ケイレイトが捕まる)

 ・11月上旬:アレイシアの惨劇(フィルド、再び脱出)

 ・11月下旬:シンシア支部の騒乱(セネイシアらの台頭)

 ・12月上旬:首都最下層にてピューリタンが発見される

 ・12月下旬:テクノシティの動乱(現在)

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