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黒い夢と白い夢Ⅲ ――攻撃の科学――  作者: 葉都菜・創作クラブ
第6章 街の闇 ――科学都市テクノシティ――
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第39話 申し訳ございませんっ……!

「スロイディア将軍!」


 着水させた大型飛空艇から、スピーダー・バイクで陸上後方へと下がったわたしに、ディフィトス将軍が声をかけてくる。彼もまた着水させてあった大型飛空艇にいたハズだ。


 わたしは彼の背後に目をやる。海と海岸は火の山とかしていた。空には黒い飛空艇が浮かんでいた。連合軍の軍艦の艦隊だ。それぞれの軍艦の艦底から、2隻の上陸艦が切り離され、火の海へと着陸していく。

 連合軍の兵士は軍用兵器だ。多少の熱なら耐える事が出来るだろう。だが、わたしたち政府軍は大半が人間。炎や煙に勝てはしない。

 軍艦は全部で40隻。純粋に考えて、上陸艦は80隻だ。上陸艦はそれぞれに最大4000体の軍用兵器を積み込んでいる。最大兵力は32万だが、軍艦に積み込まれている軍用兵器もあるだろう。軍艦の最大兵員は2万。そこを考えると、まだ最大80万の兵員が控えていることになる。


「ヴェストン副総督やビザンティア将軍、プトレイ将軍は……?」


 わたしの問いにディフィトス将軍はゆっくりと首を横に振る。


「まさか……!?」

「いや、連絡が取れないだけで、死んだワケじゃ……」


 その時、炎の地獄から1機の黒い小型飛空艇が飛んでくる。連合軍の紋様が入った小型の機体だ。わたしの周りにいた部下たちが慌てて戦闘態勢に入る。

 その小型飛空艇はゆっくりとわたしたちの前に着陸する。機体後方の扉が開く。扉の下から上陸用のスロープが出される。


「…………ッ! そんな……!」


 飛空艇から出て来たのは、バトル=オーディンとアヴァナプタの2人。しかも、2体のバトル=パラディンに両脇を抱えられ、連れ出されたのはヴェストン副総督だった。


「ヴェストン副総督……!」

「クッ……ディフィトス、スロイディア……」


 頭から血を流すヴェストン副総督。彼は名指揮官として政府軍の名将だった。本人の身体能力も、四鬼将には及ばないが、高いものだった。そんな名将が、バトル=オーディンとアヴァナプタに……


[ふはははッ、今日は記念すべき日となった! 56万人の大軍を引き連れた政府軍が死にゆく日! 名将たちがことごとく死ぬ日! 連合政府の勝利の日だ!]

「貴様っ!」


 血の気の多いディフィトス将軍が刀を引き抜こうとする。わたしはそれを手で制する。下手なことをしたらヴェストン副総督が殺される!


「ヴェストン閣下を、離せ……!」


 ディフィトス将軍が今にも暴れ出しそうな声で言う。彼はヴェストン副総督が将軍だった頃の弟子だ。ヴェストン副総督を心から慕っている。……だから、オーディンはここに来たのか……


「ディフィトス……逃げよ。我は、ここまでだ。部下を連れて、逃げよッ!」

「ヴェストン閣下! 俺にはそんなこと出来ません!」

「ディフィトス! 行け! ここで死ぬな! 生きろ!!」

[ハハハッ、仲間割れか?]


 冷酷な機械の将軍は笑いながら片手で何かを合図する。その途端、アヴァナプタは僅かに首を縦に振り、鋭い刃を持つ青色の鉄扇を広げる。そして、ヴェストン副総督の首を――

 わたしとディフィトス将軍はほぼ同時に飛び出した。ディフィトス将軍は刀を、わたしは剣を握って、機械の将軍に飛びかかる。

 ディフィトス将軍の刀と、オーディンの剣が交じり合う。わたしの剣と、オーディンの剣が交じり合う。激しい火花が散る。

 火花が散った途端、名将の命もまた――


「貴様ァッ!」


 ディフィトス将軍がオーディンのすぐ横を素早く通り抜け、アヴァナプタに斬りかかる。笑い声を上げる機械の親玉。わたしは怒りと共にオーディンに斬りかかる。

 ディフィトス将軍とバトル・ラインの女将軍との激しい殺し合い。それは僅かな時間で決着が付いた。


「っぐ、ぁあぁッ!」


 ディフィトス将軍が両目を抑えて倒れ込む。目から血が出ていた。その姿を、冷たい目で見下ろすアヴァナプタ。よく見れば、ディフィトス将軍の目には銀色の細長い針が刺さっていた。アヴァナプタの鉄扇からは長針が飛び出す。それにやられたのだろう。目を失ったら、もう戦えない……


「冷静さ。それは戦いの中で最も失っちゃいけないものじゃない?」

「ぐぅッ……! 失ったらいけないのは、心だろ、バカ女! ……ヴェストン閣下、申し訳ございませんっ……!」


 血の涙を流しながら叫ぶと、彼は長年使って来た刀で自らの首を貫く。ヴェストン副総督の弟子は、その師に覆いかぶさるようにして息絶えた。


[ヴェストンに続き、ディフィトスも死んだな! まさに勝利の日!]

「…………ッ! ……引け! 撤退するのだ!」


 わたしは怒りを堪えて叫ぶ。バトル=オーディンから素早く離れると、素早くスピーダー・バイクに飛び乗る。一部の部下たちもわたしに続く。だが、多くが、わたしの声に気が付かなかった。怒りに身を任せ、バトル=オーディンに飛びかかっていた。機械の親玉の後ろからは、何百ものバトル=アルファが押し寄せつつあった。

 【キャスティクスの戦い】


◆政府軍

指揮官:ヴェストン副総督、ディフィトス将軍、プトレイ将軍、スロイディア将軍

飛空艇:20隻(大型)、60隻(中型)

総兵力:56万人


◆連合軍(援軍)

指揮官:バトル=オーディン将軍、アヴァナプタ将軍、プロパネ将軍

飛空艇:40隻(軍艦)、80隻(上陸艦)

総兵力:80万体(バトル=アルファ、バトル=ベータが中心)


◆連合軍(アレイシア支部隊)

指揮官:コマンダー・レス、コマンダー・ライカ

飛空艇:1隻(司令艦)、20隻(軍艦)

総兵力:2万人(クローン兵)

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